■2021年、ロータスは本気だ
いやはや、ロータスを侮っていた。
スーパーカー少年はみんな憧れた! ロータス「ヨーロッパ」の大いなる誤解とは
2021年4月27日の夜8時。彼らの最後の内燃エンジン搭載車となるタイプ・ナンバー131こと「エミーラ」と、新たなプラットフォーム戦略などを紹介するビデオ・カンファレンスを見て、あっけにとられた。いや、これまでをよく知っていたからこそ、見誤ったのかもしれない。
ビデオ・カンファレンスの3か月前、ロータスは現行モデルの生産をすべて終えると発表。同時に黄色い「エヴァイヤ」と並ぶ3台のクルマの画像と、「タイプ131」という名称を公開した。
僕はこの時、まだ緑色のヴェールを被っている3台すべてがタイプ131のバリエーションだと思い込んでしまった。「エリーゼ」と「エキシージ」、そして「エヴォーラ」の関係のように、小型軽量の内燃エンジンを載せたオープン・スポーツカーと、その高出力版のサーキット特化型のクーペと、ハイブリッドの2+2クーペ……のようなバリエーションを、ひとつのプラットフォームからつくると思ったのだ。少ないリソースを有効活用する。それがこれまでのロータスだったからだ。
なにせ過去を振り返ってみれば、ロータスがこれほど複数のモデルを一気に公開し、生産までこぎ着けたことはない。フル電動のハイパーカー、エヴァイヤは別格として、内燃エンジン車に限ってみれば、完全にプラットフォームまで新しいモデルなんて、エミーラの前は13年前のエヴォーラまで遡らなければならないし、さらにその前はなんと26年前のエリーゼなのである。その間に登場したエキシージも「ヨーロッパS」も、「340R」も「2イレブン」も「3イレブン」も、極端なことをいえば、エリーゼの派生でしかない。
1度だけ、ロータスが6台ものニューモデルを一気に公開したことはある。もはや彼らにとっては黒歴史となっているであろう、フェラーリからやってきたダニー・バハールとドナート・ココのコンビが登壇した2010年のパリ・サロンである。
そういえば、あの時もモニターにかぶりついてネット中継されるカンファレンスを見ていた。まったく新しいエリーゼ、「エラン」、「エリート」、「エスプリ」。そして「エテルナ」と「シティ・カー」……次々と発表されるどのモデルも、どこかフェラーリにもランボルギーニにも似ていてピンとこない。あぁ、ロータスは何処へいくのだろうと、心がすーっと冷めていったことを、今もはっきり憶えている。
だから、まさか写真の3台がそれぞれ異なるプラットフォームのニューモデルだなんて思ってもみなかった。いやはやロータスがそこまで時間とお金を費やし、用意周到に準備を進めていたとは……。
●ロータスの新たなプラットフォームは4つ
冷静になって振り返ってみれば、ロータスの歴代ロードカーのタイプ・ナンバーは、複数のモデルをまとめてひとつとしてきたことなど、ない。むしろ、エンジンの変更やマイナーチェンジくらいでも、細かくタイプ・ナンバーを刻んできたくらいだ。エヴァイヤに続くエミーラという名前も、伝統は受け継ぐが、これまでのように単純に名前を継承して過去を振り返ったりはしない、という彼らの決意表明なのだろう。
エヴァイヤを含めると計4つとなるロータスの新しいプラットフォームは、以下のとおりだ。
1:ハイパーカー・アーキテクチャー(タイプ130/エヴァイヤ・EV)
2:スポーツカー・アーキテクチャー(タイプ131/エミーラ・内燃エンジン車)
3:エレクトリック・スポーツカー・アーキテクチャー(タイプ名未定/アルピーヌ共同開発・EV)
4:エレクトリック・プレミアム・アーキテクチャー(タイプ名未定/ライススタイルカー・EV)
■これからのロータスで注目すべき3つのポイントとは?
今回の発表は、ロータスの今後のロードマップや、将来のデジタル・ストアについて時間が費やされ、具体的な車両の詳細についての情報は、非常に少なかった。ただ、注目すべき点は3つあると思う。
●エミーラに搭載するエンジンは?
ひとつは、エミーラの搭載するパワートレインだ。
具体的な供給元は語られなかったが、現在ロータスを率いるマット・ウインドルは「エミーラはハイリッドではありません。新しいパートナーシップとなる、新しいパワートレインを開発しています」と明言した。
つまりこれまでのトヨタ製V6ユニットや直列4気筒ユニットは採用されない、ということだ。ロータスはすでに2020年代の後半には完全な電気自動車ブランドとなることも発表しているから、わざわざ新たに内燃エンジンを開発する可能性はほぼない。
そうなるとやはり同じジーリー・グループ内のボルボの1.5リッター3気筒ないしは2リッター4気筒ユニットをターボやスーパーチャージャーで過給し、パワーを引き上げるのが手っ取り早い。
ルノーとの協業もスタートしているから現行アルピーヌ「A110」の1.8リッター4気筒ターボを譲り受ける手もあるが、ルノーもまた電動化を推し進めているから、延命させる可能性は低いだろう。
そのほかに考えられるのは、これまで何度も噂になっては消えているBMWくらいだろうか。最近もモーガンに「Z4」の2リッター直列4気筒ターボ&3リッター直列6気筒ターボを提供しているから、可能性はなくはない。
マット・ウインドルはエンジニアとしてのキャリアも長く、ケータハムやゼノスといったパワートレインを自社で開発していない小型軽量スポーツカー・ブランドでも経験を積んできた現場の人だ。エミーラにどんなパワートレインが載ることになっても、それがロータスにとってベストなものになるに違いない。
●アルピーヌと共同開発の電動スポーツカーの中身は?
ふたつめは、アルピーヌと共同開発となる電動スポーツカーだ。
現時点で公開されているのは、バッテリーを床下に配置するのではなく、ドライバーの後方にレイアウトするということ。エグゼクティブ・ディレクターのウダイ・セナパティによれば、これは彼らの挑戦だそうである。カスタマーが求めるロータスならではのハンドリングやドライビング・プレジャーを得るには、このレイアウトでこそ可能になるという。
さらにマット・ウインドルは開発チームに、この電動スポーツカーがエミーラと同等の軽さを実現するようにオーダーしたという。
今のところエミーラがクーペなのかオープンなのか、2人乗りなのか2+2の4人乗りなのか、まったく明かされてはいないが、エミーラも電動スポーツカーも、エリーゼやエキシージのように1トンから1.1トン程度とはいかなくとも、エヴォーラと同じ1.4トン前後にはとどまって欲しいところ。
とはいえ、そこはハイパーカーのエヴァイヤですら70kWhものバッテリーを載せながら1680kgに納めてきたロータスのことだ。重量増がいったいどこまで抑えられるのか、お手並み拝見である。
●将来、ロータスが協業する自動車メーカーは?
3つめは、この電動スポーツカーのアーキテクチャーが、ロータスとアルピーヌ以外にも採用される可能性があること。
ロータスとアルピーヌの電動スポーツカーは、BMW Z4と「GRスープラ」、アバルト「124スパイダー」とマツダ「ロードスター」のような関係になるだろうが、それだけにとどまらない。ウダイ・セナパティは「誰とでもパートナーになることができる」と語っている。
ルノーとグループを同じくする日産や三菱はもちろんのこと、世界中の自動車ブランドがロータスと手を組んで、新たな電動スポーツカーを開発することができる。
どの自動車ブランドもイメージリーダーとしては是非ともスポーツカーは欲しいが、コストを掛けるのは難しい。これは多くの自動車ブランドにとって、渡りに船となるかもしれない。
* * *
2017年にロータスがジーリー傘下となって以来、エヴァイヤの発表や、多額の投資に関するニュースはあったものの、彼らはこれまで将来のブランドの方向性やニューモデルについては一切口をつぐみ、虎視眈々と計画を進めてきた。
それはすべて、今回の発表のためだったのだ。ロータスは、本気なのである。
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みんなのコメント
特に日産はそういうことはむしろ嫌がる。
何故なら昔、二代目パルサーにアルファのメカニズムを
取り入れたアルナでズッコケた経緯もあるし、
VWサンタナだって結果はご覧の通りなんだからさ。