現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 【ロータス・エミーラ同乗試乗】後編 80セットほどから厳選したタイヤ 驚くほどしなやかな乗り心地

ここから本文です

【ロータス・エミーラ同乗試乗】後編 80セットほどから厳選したタイヤ 驚くほどしなやかな乗り心地

掲載 2
【ロータス・エミーラ同乗試乗】後編 80セットほどから厳選したタイヤ 驚くほどしなやかな乗り心地

困難を極めた理想のタイヤ探し

その日は雨降りで、サーキットはすべりやすい路面コンディション。助手席に収まる身としては、むしろ神業ドライビングが見られるのではないかと期待した。その点でカーショウは有名だからだが、彼はそれをこともなげにさらっとやってのけるのだ。

【画像】写真で見るロータス・エミーラ 全25枚

テストコースのエプロンをのんびりと横切り、クラブハウスと書かれたプレハブの前を通り過ぎ、われわれを通すためにあげられた遮断ゲートを潜る。キャビンの背後に横置きされたトヨタ由来の3.5L V6スーパーチャージャーは、ここまで滑らかな低音の轟きを聴かせるばかりで、そのポテンシャルをはっきりと示していない。

このテスト車はAT仕様で、ツアーシャシーと呼ばれる仕様。このほかにより辛口なスポーツシャシーも用意される。タイヤは20インチのグッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツ。ハイグリップのミシュラン・カップ2も選べるが、カーショウはそのオプションがよほど特殊なケースでなければ不要だということを、まずは口頭で、続いて実演で、はっきりさせてくれた。

ツアー仕様でもスポーツ仕様でも標準装備されるのはグッドイヤーだが、それはもちろん、このタイヤが十分すぎる性能を発揮してくれるから。「タイヤテストこそがすべてを決めます」とカーショウは言うが、これは「CAEでのシャシーのモデリングは、大部分のタイヤデータに依存して行われるからです」ということらしい。「スクリーン上でいいクルマにするのも悪いクルマにするのも、すべてはタイヤの挙動次第です。おそらく70~80セットをテストして、採用した銘柄を選び出しました。タイヤ担当者は半狂乱になって試乗を繰り返しましたが、彼らはきっちり仕事を理解して、我慢強くやってくれました」。

なにも、量的に大変だっただけではない。満足感と安全性の両面でキーとなるグリップのクオリティも見極めなくてはならなかったのだという点を、カーショウは力説する。究極的な理想は、彼が「スライディンググリップ」と呼ぶ性質だった。これは、もしタイヤがグリップ限界を超えて流れても、常にリカバーしようとする性質を意味するらしい。

コーナリング挙動を知るために必要なロール量

長い間、おそらくカーショウは、サーキット志向に仕立てた自分の作品のうち、かなりの割合がタイヤスモークを巻き上げたことすらなしに走っていることを残念に思ってきたはずだ。ロータスでGTレースでの成功を収めてきた経験や、エミーラを熟知していることを考えれば、彼だってそうすることは可能だったはずだ。

しかし今日は、飛ばすことに決めたようだ。まずは軽くクルマのご機嫌うかがいをしようと、4500rpmあたりでマニュアル変速していく。V6ユニットのレッドラインまでは、まだ2500rpmの余裕がある。市販車に着く予定のパドルは備えていない試作車だったので、変速はスッキリしたループ形状のレバーを横にずらしてから動かして行う。

スピードが乗ってきた。コーナリングもハードになりはじめ、どんどんハードさを増していく。ツーリングシートは身体をしっかり支えてくれているが、クルマは限界スレスレ、いつブレークしてもおかしくない。ところが、ひたすら真っ直ぐ、前へ前へと進んでいくのだ。しかも、ステアリング操作に四苦八苦している風もない。

標準装着のグッドイヤーは、驚くべきグリップを発揮する。カーショウは穏やかにレーシングラインをなぞっていくが、7000rpmまでパワーもトルクも途切れないV6スーパーチャージャーを、そろそろ本格的に回しだしている。

「レッドラインまできっちり回したときの感じは最高ですね」という彼は、このエンジンに最高回転域でのハスキーな叫びを上げさせた。「まったく邪魔なところがないようにしています。そうするために、さんざん手を尽くしましたから」。

このサザンループには、適切なストレートがないとはいえ、それでもセナ・カーブを抜けてチャップマンへ向かうとき、185km/hにゆうゆう到達した。そこから急減速して、右、左、さらに右の急カーブ。ここはグラハム・ヒルからアンドレッティ・ヘアピンだ。クルマはじつにすばらしい。路面をしっかり捉え、俊敏に駆け抜ける。普通、そのふたつは相反するものだが、このクルマに関してはどちらも備えている。

それこそ、グリップ性能のなせる技だ。その限界へ楽に持ち込める場所は、このコースには3カ所しかなかった。急激な右コーナーではオーバーステア。カーショウはこれを楽しみ、ドリフトアングルを自由自在に操ってみせた。グラハム・ヒルの右コーナーへの進入では、意図的にアンダーステアを出す。ここは高速コーナーからの状況変化が難しいポイントだ。

ボディのロールはわずかに感じられた。無駄のまったくない程度に。そのチューニングについても尋ねてみた。「ちょっとだけロールするほうがいいですね。おおむね、そのほうがドライバーにとって利便性があります。出来のいいクルマは初動があって、それによってドライバーはいつ、どこからコーナリングが始まり、どう進んでいくのか直感的に知ることができるのです。完全にフラットなコーナリングをすると、わからなければいけない小さな変化に気づけません」。

これについて、カーショウはあの偉大なレーシングドライバーのエピソードを引き合いに出した。「アイルトン・セナがいつも言っていました。彼が乗った中で、もっとも運転が難しいフォーミュラ1マシンはアクティブサスペンションを装備したものだった、とね。限界がどこにあるのが、予想するしかないからです。ナーバスなフィールで、そのナーバスさは、ロータスの新型車にとってはもっとも不要なものなのですよ」。

路面と喧嘩しないのが理想のドライビング

このコースの路面は非常にスムースだが、それでも想像できなかったくらいしなやかな乗り心地を感じられた。カーショウによればそれも織り込み済みで、ツアーシャシーではそれが際立っているが、スポーツシャシーでも乗り心地に優れているという。どちらも常に、ロータスの流儀に沿った走りをみせる。それは、ロータスの購買層が圧倒的に好むものだ。

電動アシストのパワーステアリングが主流となった時代にあって、エミーラがフィーリングに勝る油圧アシストを採用した点についてはどうか。カーショウ曰く、そこはクルマとの一体感を重視したらしい。アキュラシーとは別の価値観で、明確にするのは難しいが、エミーラを運転すれば間違いなくわかるという。早くそれを体験してほしい、というのが彼の偽らざる心境といったところだ。

楽しい時間も、残念ながら終わりが近づいてきた。電装系のエンジニアたちが、そろそろテスト車両を返してほしそうにしている。この小さなサーキットを、われわれは20周以上走っただろうか。カーショウはわたしが走らせるよりずっとハイペースでラップを重ね、意図的にバランスを崩してみせた場面もあったが、全般的にはエミーラが持って生まれたスタビリティと、それを回復する速さを実感させるテストドライブとなった。

カーショウのなめらかで、迷いも慌ただしさもないドライビングを、すっかり堪能させてもらった。このクルマのレスポンスが、彼の走らせ方に合わせて作られているのは間違いないところだ。

遮断ゲートをくぐってクルマを戻しにいく道すがら、カーショウはなぜスムースさが重要な意味を持つか説明してくれた。「レースではいつもそういう走らせ方を心がけていました。というのも、ロータスのマシンは決してムキになって走らせる必要がないからです。そういう作り方をしています」。

そして、彼はこう続けた。「ロータスでは、ドライビング中に起こることはすべて、車体の四隅にあるラバーの小さな接地面に依存していると考えています。そこと喧嘩するようなドライビングをしなくてもいいのではないでしょうか」。

こんな記事も読まれています

打倒ホンダEクラッチ&DCTへ! BMWが「自動シフトアシスト=ASA」を発表、AT限定免許で運転可能か
打倒ホンダEクラッチ&DCTへ! BMWが「自動シフトアシスト=ASA」を発表、AT限定免許で運転可能か
WEBヤングマシン
ホンダ新型「高級ミニバン」登場! めちゃ「豪華リアシート」×専用“黒すぎ顔”採用! 516万円の「新型オデッセイ 最上級仕様」はどんなモデル?
ホンダ新型「高級ミニバン」登場! めちゃ「豪華リアシート」×専用“黒すぎ顔”採用! 516万円の「新型オデッセイ 最上級仕様」はどんなモデル?
くるまのニュース
ホンダのロードスポーツ「CBR650R」が精悍でモダンなスタイルへと変身! 「シフトペダル操作だけで変速できる」斬新メカも新設定
ホンダのロードスポーツ「CBR650R」が精悍でモダンなスタイルへと変身! 「シフトペダル操作だけで変速できる」斬新メカも新設定
VAGUE
トヨタが日本初の5兆円超え!? 営業利益が過去最高に! 約2兆円を“未来”の投資に!? 佐藤社長が語る未来とは
トヨタが日本初の5兆円超え!? 営業利益が過去最高に! 約2兆円を“未来”の投資に!? 佐藤社長が語る未来とは
くるまのニュース
カワサキ「W800」【1分で読める 国内メーカーのバイク紹介 2024年現行モデル】
カワサキ「W800」【1分で読める 国内メーカーのバイク紹介 2024年現行モデル】
webオートバイ
マツダ社長を現地で直撃!!! マツダはまだ中国市場を諦めてない!! [EZ-6]登場の北京で現地メディアインタビューからわかったこととは?【北京ショー】
マツダ社長を現地で直撃!!! マツダはまだ中国市場を諦めてない!! [EZ-6]登場の北京で現地メディアインタビューからわかったこととは?【北京ショー】
ベストカーWeb
ガソリン車依存が招く「地方消滅」 給油所はもはやピークの半分以下、EVアンチはポジショントークをしている場合ではない!
ガソリン車依存が招く「地方消滅」 給油所はもはやピークの半分以下、EVアンチはポジショントークをしている場合ではない!
Merkmal
落ち着きあるシックなインテリアが魅力! 日産NV200バネットがベースのキャンパー
落ち着きあるシックなインテリアが魅力! 日産NV200バネットがベースのキャンパー
月刊自家用車WEB
生産終了の[CX-8]ってやっぱ偉大!! 我らが[レクサスRX]だってマネしたんだぜ!! SUVの常識破ったってマジ!?
生産終了の[CX-8]ってやっぱ偉大!! 我らが[レクサスRX]だってマネしたんだぜ!! SUVの常識破ったってマジ!?
ベストカーWeb
井戸田潤ウキウキ!最新シビック タイプR試乗も……予想不可能のトラブルに困惑!?
井戸田潤ウキウキ!最新シビック タイプR試乗も……予想不可能のトラブルに困惑!?
グーネット
マツダの儚きクーペ「エチュード」を知ってるか? たった3年で消えていった理由はなんだったのか?
マツダの儚きクーペ「エチュード」を知ってるか? たった3年で消えていった理由はなんだったのか?
ベストカーWeb
高さ約50m!上信越道にそびえる巨大岩撤去の“現場”を公開! NEXCO東日本
高さ約50m!上信越道にそびえる巨大岩撤去の“現場”を公開! NEXCO東日本
グーネット
アウディ「A1スポーツバック」シックで都会的なルックスの限定モデル登場!
アウディ「A1スポーツバック」シックで都会的なルックスの限定モデル登場!
グーネット
電気自動車を買って試す本音レポート リアルEVライフ[電費を計測する]の巻
電気自動車を買って試す本音レポート リアルEVライフ[電費を計測する]の巻
グーネット
レクサス「LM」6座仕様車を追加 3列目もラグジュアリーな空間に
レクサス「LM」6座仕様車を追加 3列目もラグジュアリーな空間に
グーネット
2車線の片側が突如右折レーンに! 富士見川越バイパスの終点はなんであんなに残酷なのか?
2車線の片側が突如右折レーンに! 富士見川越バイパスの終点はなんであんなに残酷なのか?
ベストカーWeb
なんちゃってセレブが「核融合科学研究所」へ大人の社会科見学!「核融合」は原子力発電の「核分裂」とは違うのよ~
なんちゃってセレブが「核融合科学研究所」へ大人の社会科見学!「核融合」は原子力発電の「核分裂」とは違うのよ~
Auto Messe Web
【24’ 5/7最新】レギュラーガソリン全国平均価格は174.7円 2週ぶり値下がり止まる
【24’ 5/7最新】レギュラーガソリン全国平均価格は174.7円 2週ぶり値下がり止まる
グーネット

みんなのコメント

2件
  • 驚くほどしなやかな乗り心地
    ロータスのインプレの決め台詞ですね
  • たしかにタイヤで車両のフィーリングは大きく変わる。ずっとミシュラン派だったが最近のピレリに触れてみて進化に驚いた。最近のピレリ良いぞ。(P1とドラゴン除く)
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

598.5651.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

44.02018.0万円

中古車を検索
チャージャーの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

598.5651.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

44.02018.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村