現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > いまだに見かける!「米国製ミニバン」大ヒットしたのお忘れか? 日本で売れる “アメ車の法則” とは

ここから本文です

いまだに見かける!「米国製ミニバン」大ヒットしたのお忘れか? 日本で売れる “アメ車の法則” とは

掲載 94
いまだに見かける!「米国製ミニバン」大ヒットしたのお忘れか? 日本で売れる “アメ車の法則” とは

クライスラー製ミニバンへの対抗馬として誕生

 ドナルド・トランプ米大統領は、日本でアメリカ車が売れていないことを問題視し、日本の法制度や規制、商習慣を「非関税障壁」として批判。2025年7月上旬から日本車に25%の追加関税措置を発動するとともに、近い将来、さらなる税率引き上げを示唆しています。

【写真】これがシボレー「アストロ」誕生のキッカケとなったライバル車です

 このニュースが報じられてから、ネット上では「サイズがデカすぎる」「排気量がムダに大きい」「燃費が悪すぎる」といったステロタイプのイメージで、アメリカ車が売れない理由を列挙し、トランプ大統領の態度を批判する声が散見されます。

 しかし、アメリカ車のすべてが排気量5リッター超のV8エンジンを積むわけでも、全長6mを超えるフルサイズのSUVやピックアップトラックというわけではありません。中には排気量の小さなエンジンを搭載し、全長5mを切る日本車とほとんど変わらないサイズのクルマも存在します。

 そうした使いやすいサイズのアメリカ車の中には過去、日本で商業的にヒットしたモデルもありました。その一例が、1990年代に若者を中心に大ブームとなったシボレー「アストロ」です。

「アストロ」は、世界初のミニバンとしてアメリカで人気を博していたクライスラー社のダッジ「キャラバン」/プリマス「ボイジャー」に対抗するため、1985年に登場したGM(ゼネラル・モーターズ)製のワンボックス車です。

所ジョージの愛車になったら露出増えてブームに

 ダッジ「キャラバン」やプリマス「ボイジャー」といったクライスラー製ミニバンが、モノコックボディのFFレイアウトを採用していたのに対し、商業利用も考慮したシボレー「アストロ」はフレームボディ構造で、駆動方式にはコンベンショナルなFRレイアウト(4WDの選択も可能)を採用していました

 全長はショートボディが4.5m、ロングボディは4.8mとライバル車とほぼ同サイズながら、積載性を重視して20cm以上も高く、車幅は2mをわずかに切るサイズのミニバンとして誕生しています。

 搭載エンジンは2.5リッター直列4気筒OHVもしくは、4.3リッターV型6気筒OHVのいずれかを選択することができましたが、のちに日本へ輸入された車両はV6搭載モデルがほとんどでした。

 日本で「アストロ」がブームとなったのは1990年代前半のことで、アメ車好きとして知られるタレントの所ジョージ氏が、並行輸入車を購入し、愛用したことがきっかけです。売れっ子の彼が愛用したことで、その認知度は芸能界を中心に急速に広まっていきました。そして、彼が出演するTV番組や雑誌などでたびたび紹介されたことにより、流行に敏感な若者の間で人気に火がつき、当時の円高ドル安を背景に姉妹車のGMC「サファリ」とともに「アストロ」の購入者が急増。並行輸入が盛んに行われるようになりました。

 GMの正規インポーターであったヤナセは、当初このブームを静観していましたが、最盛期には年間1万台が並行輸入されるようになるとようやく重い腰を上げ、1995年に「アストロ」が2代目へとモデルチェンジしたタイミングで正規輸入を開始します。

 ただし、正規輸入車は上級グレードでありながら、角形2灯ヘッドランプを持つ廉価グレードの「トラックマスク」となったことから、並行輸入車は依然として高い人気を保ちました(1999年から北米仕様と同じフロントマスクに変更)。なお、モデル末期の2004年からはスズキでも販売をスタートしています。

身近なアメ車として日本人が愛した「アストロ」

 アメリカでの「アストロ」は日本の軽バンのようなポジションのクルマで、車体の小ささから電気工事や内装業、小口配送などといった業務でも使用されるクルマでした。

 そのため、並行輸入業者のなかには数十万kmを走り、ボロボロになるまで酷使されたポンコツ車の内外装に手を入れ、見栄えだけを良くした中古車を販売する者まで現れます。そうした並行輸入の中古車は故障も多く、経年劣化で性能や機能面で難のあることが多く、結果的に「アストロ」の評判を落とすことになりました。

 しかし、本来の「アストロ」はタフで丈夫な設計のクルマであり、燃費性能も街乗りで5~6km/L程度、高速で7~10km/L程度と、2tを超える車重と排気量を考えればそう悪いものではありません。ちなみに1997年に登場した初代日産「エルグランド」の実燃費は「アストロ」の半分程度でした。

 本国では「便利な商用車」としての価値しか見いだされなかった「アストロ」ですが、その個性と魅力に気がつき、このクルマを愛し、遊び尽くしたのはむしろ日本人だったと言えるでしょう。こうして熱烈なファンが付くようになった「アストロ」は、生産終了から20年が経過した現在でも、MOONEYES主催のカーショーなどで、個性豊かにカスタムされた車体を多数見ることができます。

 なお、現在では再び「アストロ」の人気が高まっているようで、ここ数年で中古車相場は上昇し、コンディションの良い個体は300万円を超える高値で取引されるようになっています。

 日本で一大ブームを起こした「アストロ」からもわかるように、アメリカ車だから売れないのではありません。アメリカ車らしい個性を持ちながらも、日本国内でも使いやすいサイズで、なおリーズナブルな価格設定の新車があれば売れるのです。そうした、日本車や欧州車にはない個性を持つ使い勝手の良いモデルを輸入する、そうした目利きが必要だと言えるでしょう。(山崎 龍(乗り物系ライター))

文:乗りものニュース 山崎 龍(乗り物系ライター)
【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

「すごい石…」 NEXCOが“異例のイベント”を開催! めちゃ「ご利益ある」“縁起のいい石”を配布! 受験生の“心強い味方”になる「不落石」の正体とは?
「すごい石…」 NEXCOが“異例のイベント”を開催! めちゃ「ご利益ある」“縁起のいい石”を配布! 受験生の“心強い味方”になる「不落石」の正体とは?
くるまのニュース
ランドクルーザー・ハイエース向けカスタムパーツ、200点以上をオンライン販売開始…FLEX
ランドクルーザー・ハイエース向けカスタムパーツ、200点以上をオンライン販売開始…FLEX
レスポンス
JAL公式X、なぜ「転売は絶対やめて!」と投稿?→同社の回答は …「常識」レベルの“当前のルール”をあえて周知したワケ
JAL公式X、なぜ「転売は絶対やめて!」と投稿?→同社の回答は …「常識」レベルの“当前のルール”をあえて周知したワケ
乗りものニュース
バイク乗りなら一度は行きたい! 「キャンプツーリング」って実際どうやるの? 準備から設営まで“リアルな流れ”とは
バイク乗りなら一度は行きたい! 「キャンプツーリング」って実際どうやるの? 準備から設営まで“リアルな流れ”とは
VAGUE
トヨタ最新「“5人乗り”ワゴン」が凄い! 「シエンタ」サイズのボディに“めちゃ広ッ車内”&「大開口スライドドア」採用! 最上級より「20万円以上オトク」なジャパンタクシー最安モデルとは?
トヨタ最新「“5人乗り”ワゴン」が凄い! 「シエンタ」サイズのボディに“めちゃ広ッ車内”&「大開口スライドドア」採用! 最上級より「20万円以上オトク」なジャパンタクシー最安モデルとは?
くるまのニュース
リンドブラッドがアラムコ・ベスト・パフォーマンス賞受賞。F2最年少優勝記録を讃えて
リンドブラッドがアラムコ・ベスト・パフォーマンス賞受賞。F2最年少優勝記録を讃えて
AUTOSPORT web
ジェイテクトサーモシステム、新型半導体熱処理装置を発売…AI・5G市場を支援
ジェイテクトサーモシステム、新型半導体熱処理装置を発売…AI・5G市場を支援
レスポンス
【第656回】12/13(土) THE MOTOR WEEKLY放送予告!
【第656回】12/13(土) THE MOTOR WEEKLY放送予告!
Auto Prove
中国CATL、リチウムイオン電池の道路輸送免除資格を国内初取得…安全輸送で新基準
中国CATL、リチウムイオン電池の道路輸送免除資格を国内初取得…安全輸送で新基準
レスポンス
新車270万円から! マツダ「“新”小さな高級車」発表! 全長4.2mサイズに豪華「白&ブラウンレザー」設定! 快速ディーゼルターボもある「CX-3」ラインナップ整理で1グレード化
新車270万円から! マツダ「“新”小さな高級車」発表! 全長4.2mサイズに豪華「白&ブラウンレザー」設定! 快速ディーゼルターボもある「CX-3」ラインナップ整理で1グレード化
くるまのニュース
JAFが災害支援車などを展示、ロードサービス体験イベントも…ジャパンモビリティショー福岡2025
JAFが災害支援車などを展示、ロードサービス体験イベントも…ジャパンモビリティショー福岡2025
レスポンス
新車618万円! スバル新型「ワゴンSUV」まもなく発売! 史上最大“横長”モニター&広びろ荷室採用! パワフルユニット搭載で加速がスゴい新型「トレイルシーカー」米国仕様とは!
新車618万円! スバル新型「ワゴンSUV」まもなく発売! 史上最大“横長”モニター&広びろ荷室採用! パワフルユニット搭載で加速がスゴい新型「トレイルシーカー」米国仕様とは!
くるまのニュース
スーパーFJ日本一決定戦や「Yaris Cup」特別戦など、富士で2日間9レース開催…12月20日・21日
スーパーFJ日本一決定戦や「Yaris Cup」特別戦など、富士で2日間9レース開催…12月20日・21日
レスポンス
【トライアンフ】「DAYTONA 660」が 第8回 日本バイクオブザイヤー2025 外国車部門にて金賞を受賞
【トライアンフ】「DAYTONA 660」が 第8回 日本バイクオブザイヤー2025 外国車部門にて金賞を受賞
バイクブロス
ホンダ新型「カクカクSUV」公開され反響多数! 285馬力「V6」×10速AT搭載! 米国で登場した“上質内装”の「3列モデル」パイロットに「欲しい」「V6エンジン快適そう」の声も
ホンダ新型「カクカクSUV」公開され反響多数! 285馬力「V6」×10速AT搭載! 米国で登場した“上質内装”の「3列モデル」パイロットに「欲しい」「V6エンジン快適そう」の声も
くるまのニュース
鳥取~島根をぐるり!「中海・宍道湖8の字ルート」計画が進行中。境港も出雲大社も便利に。複数箇所で事業中【いま気になる道路計画】
鳥取~島根をぐるり!「中海・宍道湖8の字ルート」計画が進行中。境港も出雲大社も便利に。複数箇所で事業中【いま気になる道路計画】
くるくら
アルコールインターロック装着車を展示、東海電子が「しみずGuardian EXPO 2025」参加…12月14日
アルコールインターロック装着車を展示、東海電子が「しみずGuardian EXPO 2025」参加…12月14日
レスポンス
体調不良でSFテスト“早退”のロバンペラがめまいの症状を説明「明日走る可能性はほんの少しあるけど……」
体調不良でSFテスト“早退”のロバンペラがめまいの症状を説明「明日走る可能性はほんの少しあるけど……」
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

94件
  • reg*******
    アストロが日本でヒットしたのはデザインのみならず、当時はガソリンが安かったことと、8ナンバー登録がいまより容易だったことが影響していると思う。
  • cor********
    アストロは全幅1970mm アル・ヴェルは最新型でも1850mm、その前はさらに小さい
    排気量はアストロ4.3リッターに対して2.5/3.5リッター
     
    どこが小さいんだ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

329 . 7万円 425 . 3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

60 . 0万円 328 . 0万円

中古車を検索
シボレー アストロの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

329 . 7万円 425 . 3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

60 . 0万円 328 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村