自社開発1.5LエンジンのPHEV
2026年までに計6台のEVを発売することを目標として掲げているランドローバー。
【画像】ランドローバー・ディスカバリー・スポーツRダイナミックHSE P300e【走りの様子と上質インテリア】 全83枚
現行モデルの電動化も着実に進んでいて、7モデルのうちの3モデルにPHEVを用意しているほか、全モデルにマイルドハイブリッドを設定するなど、積極的な姿勢を示している。
中でも、いち早くPHEVをラインナップしたのがレンジローバー・イヴォークとディスカバリー・スポーツの2台。
そのパワートレインは基本的に共通で、ジャガー・ランドローバー・グループが自社開発した3気筒1.5L(!)のインジニウム・ガソリンエンジンで前輪を駆動し、後輪はモーターで駆動するというもの。
最高出力はエンジンが200psでモーターが109ps。システム全体としては309psと55.1kg-mと十分なパフォーマンスを発揮する。
ちなみに、現在ディスカバリー・スポーツに設定されているパワートレインは2Lガソリン(P200とP250の2種)、2Lディーゼル+MHEV(D200)、そしてPHEV(P300e)の3タイプだが、0-100km/h加速はガソリン(P250)の7.8秒、ディーゼルの8.6秒に対して、PHEVは6.6秒と圧倒的に速い。
最高速度はPHEVとディーゼルの209km/hをP250が225km/hで上まわるものの、少なくとも日本の公道ではその差を感じられることはないだろう(いずれも5シーターで比較)。
ちなみに高電圧バッテリーの容量は15kWhと余裕があり、EV航続距離は最長で66.1km(WLTC)を誇る。
モーター特有 走り出し滑らか
試乗したのはディスカバリー・スポーツRダイナミックHSE P300e。
ちなみにP300eが設定されるのはRダイナミックというスポーティなグレードのみで、トリムレベルはS、SE、HSEの3タイプから選べる。
その運転席に乗り込んでシステムを立ち上げても、当然のごとくエンジンは始動しない。
そこで、まずはハイブリッドモードのままDレンジを選んで走り出してみる。
クルマが動き出す瞬間の所作は、いかにもモーターで駆動されているクルマらしい「ヌルッ」という感触を伝えるもの。
内燃機関と歯車を組み合わせたクルマ特有の「カキン!」というトルクの伝わり方とはどこか異なっている。
加速度の立ち上がり方を100分の1秒単位で解析すると、なにか違いがでてくるのだろうか。
いずれにせよ、わたしはモーター特有の滑らかな走り出し方が好きだ。
市街地を普通に走っている限り、エンジンがカットインしてくることはなく、モーターの力だけですべてこと足りる。
レスポンスが良好で、トルキーなその走りには多くのドライバーが満足するはず。
ちなみに、この日は一般道と高速道路を織り交ぜながら44kmを走行したところでバッテリーを使い果たし、3気筒1.5Lガソリン・エンジンが始動した。
3気筒1.5Lは意外とおとなしい?
実は、1.5Lの排気量が大きな3気筒エンジンが動き出したら、安っぽいノイズとバイブレーションがはっきりと伝わってくるのだろうと覚悟していたのだが、意外や意外、これが驚くほど静かで滑らかだった。
少なくとも、同じディスカバリー・スポーツに積まれる4気筒ディーゼルエンジンと同等か、それよりもおとなしいと思わせるほど洗練されていたのだ。
たとえば、50-60km/hで走っている範囲では風切り音やロードノイズにかき消されてエンジン音は聞こえない。
だからといってキャビンがいつでもうるさいかといえばそんなことはなく、全長4.6mのSUVとしてはむしろ静かな部類に入る。
いっぽうのエンジン・バイブレーションは、注意して観察すれば3気筒特有のゴロゴロした感触がステアリングを通じて伝わってくるものの、これも感覚を研ぎ澄ませていなければ気づかない範囲。
いずれにせよ、エンジンのオン/オフに伴う振動と騒音の変化幅は小さいので、エンジンがかかるたびにがっかりさせられることは車速を問わずないはず。この辺の完成度は極めて高いと評価できる。
ちなみに、今回の試乗で唯一「ややうるさい」と感じたのは、粒立ちが荒いアスファルトを走ったときのロードノイズのみ。それ以外は実に静かで、心地いい時間を過ごすことができた。
秀逸 インテリアもポイント
乗り心地は、路面への当たりがソフトなことがまず印象に残った。
ただし、Rダイナミックというスポーティなグレードのためか、ランドローバーらしいゆったりとしたホイールストロークを感じさせる場面はほとんどなく、ボディをしっかりとフラットな姿勢に保つタイプだった。
それでも、限られたストロークのなかで路面からのショックを効率的に吸収している印象が強く、全般的には快適。
ちなみに、タイヤは235/50R20サイズのピレリPゼロ(オールシーズン)が装着されていた。
フルモデルチェンジを果たしたディカバリースポーツは足まわりのコンプライアンスが劇的に減少し、極めて正確なステアリングを得ているのが特徴の1つだが、このキャラクターは試乗車でもまったく変わらず、たとえば首都高速道路を走るようなシーンでもストレスを覚えなかった。
この快適性とハンドリングのバランスは、同クラスのSUVとしてトップクラスに位置していると思う。
それとともにあらためて指摘しておきたいのが、インテリアのクオリティとデザイン性だ。
これらの点もフルモデルチェンジで劇的に進化したが、とりわけシンプルでありながら質感の高いインテリアデザインは秀逸。
ブランド的にはランドローバーではなくレンジローバーと呼びたくなるほどの仕上がりだ。
また、レンジローバーやディフェンダーよりも一段とコンパクトなボディサイズは日本の都市部でも実に使いやすい。
しかも、1日あたりの走行距離が短いユーザーであれば、バッテリーを有効活用することでランニングコストを低く抑えることも可能なはず。
おまけに快適性や質感で安っぽさを感じさせないのだから、ディスカバリー・スポーツPHEVは日本市場にぴったりのプレミアムSUVといえるだろう。
ランドローバー・ディスカバリー・スポーツRダイナミックHSE P300eのスペック
価格:785万円
全長:4610mm
全幅:1905mm
全高:1725mm
ホイールベース:2741mm
車両重量:2093kg
パワートレイン:直列3気筒1498ccターボチャージャー+ISG+電気モーター
最高出力(システム総合):309ps/5500rpm
最大トルク(システム総合):55.1kg/2000-2500rpm
ギアボックス:電子制御9速オートマティック
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