キドニー・グリルはよりダイナミックな印象!
BMWといえばFR(フロントエンジン後輪駆動)のスポーツセダンというイメージが強いだろう。だが近年はFF(フロントエンジン前輪駆動)もラインアップに増えている。
きっかけとなったのはBMWのMINIの存在だ。BMWが手がける初めてのFF車として2001年の初登場時には大きな話題となった。だが、その初代BMW/MINIの完成度が非常に高く、とくにハンドリングの秀逸さは初めてFF車を手がけたとは思えぬレベルで、世界をあっといわせたものだ。そんなBMW製MINIも今では第3世代にまで進化している。そのプラットフォームを利用してBMW2シリーズのアクティブツアラーが誕生し、昨年には1シリーズもFFとして進化させられている。
2シリーズに関して言えばアクティブツアラーはミニバン風のファミリーカーとして位置付けられ、2シリーズのスポーツモデルとしては、前1シリーズベースのFR2ドアクーペが主要ポジションにあった。とくにM2コンペティションなどはBMW車全ラインアップのなかでも最速クラスの速さに仕上げられていて人気がある。
そして今回紹介するのが新しく2シリーズのラインアップに加わった「グランクーペ」だ。グランクーペはこれまでも4シリーズや6シリーズ、そして8シリーズにも設定されている4ドアクーペというスポーツコンセプトの新カテゴリーだ。4つのドアウインドウにサッシがなく、低いルーフでスタイリッシュな外観を備えているのが共通した特徴。寸法的には2世代ほど昔の3シリーズとほぼ同寸になり、大きくなりすぎた現行3シリーズのポジションを引き継がせるのも狙いだ。
エクステリアは一見して格好良く仕上げられ、3次元の個性的なラジエターグリルはBMWの証であるキドニー・グリルをよりダイナミックに見せている。またフロントバンパーのデザインはスポーティで迫力満点だ。複雑なエアインテークの造形はイミテーションではなく、オイルクーラーやブレーキ冷却ダクトへのエアフローを突き詰めて作り込まれていて、フロントタイヤまわりの整流効果を高めるエアインレットもある。
エンジンフードを開けると、2リッター直4ツインターボエンジンが横置きに積み込まれ「ああFFベースなんだな」と現実を直視させられるが、走りが良ければ問題ない。
試乗車は最上級グレードのM235i、4WDのxDrive仕様。直4の2リッターターボ4WDというパッケージングは三菱ランサーエボリューションシリーズやスバル・インプレッサWRXシリーズ(現スバルWRX)を彷彿とさせ、メルセデス・AMGでいえばA 45 AMG/CLA 45 AMGと競合することになる。
パワースペックは306馬力の最大出力を5000回転で発生し、最大トルクは450N・mを1750~4500回転という幅広い回転域で引き出せる。馬力的にはメルセデスAMGのA 35 AMGとバッティングするところだ。トランスミッションには8速のトルコン式ATを搭載。ただしマニュアル操作可能なステップトロニック機能付きでレーシングスタートを可能とするローンチコントロールも装備している。
ライントレース性とトラクションにはさらなる熟成を望みたい
室内に乗り込むとルーフライナーまでブラックに統一されたインテリアカラーがスポーティで、液晶のメーターや皮巻きでグリップの太いステアリングホイールもBMWのMスポーツモデルとして統一されている。エンジンを始動すると回転が瞬間的に吹き上がり触媒を活性化させつつエモーショナルなサウンドが運転心をかき立てる。
では走りだそう。ドライブモードはエコ、コンフォート、スポーツから選択可能。スポーツモードを選ぶとサスペンションのダンパーがハードに固められ、ステアリングがクイックになり、シフトスケジュールも変更される。加えて排気音もより迫力のある音色に切り替わる。
ちなみにローンチコントロールを作動させるには50km以上を走行した後にDSCをオフにし、シフトセレクターを左に押してSポジションにしなければならない。今回は試せなかったが、ゼロ発進加速計測では威力を発揮するだろう。AT仕様でローンチコントロールを備えるのは珍しいのだ。
一方、エコモードでエコ・PROを設定すると惰性走行(コースティング)も可能になる。25~160km/hでパドル操作とアクセルワークでコースティングでき高速燃費に大きく貢献するだろう。
コーナー部分をスポーツモードで攻めるとステアリングレスポンスがクイック過ぎてライントレース性に落ち着きがない。さらにパワーをかけるとトランスファーとトルセンデフのマッチングがよくないのかスムースにトラクションがかからない。このあたりはランエボやAMGに一歩及ばない。
FFベースの4WDスポーツとして新しい領域に踏み入れたBMW M235i xDriveはFRのBMWを愛するユーザーにはしばらくの間敬遠されるかもしれない。だが全天候型でスポーツ性を高く維持するには今後4WD化は避けて通れない。ハンドリングがさらに洗練され優れたドライバビリティが備わって走り好きなBMWユーザーを惹き付けることができるかどうかが成功への鍵となる。
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あっ、もう乗っています。