約9年ぶりにフルモデルチェンジした新しい日産「エクストレイル」に小川フミオが試乗した。
e-4ORCEなど注目技術満載
日産の新しいエクストレイルは、ひとことで言って走りが素晴らしかった。
新型エクストレイルは、シリーズハイブリッド・システム「e-POWER」を搭載したのが大きな特徴だ。駆動はモーターで、発電用に1.5リッター直列3気筒ガソリンターボ・エンジンを使う。前輪駆動と、後輪駆動用にモーターを追加した4WDの2種類が用意される。
まず発売されるのが4WDで、遅れて前輪駆動が登場する。前輪用モーターは、150kWの出力に330Nmの最大トルク(ノート比で1.2倍)。後輪用モーターは100kWと195Nm。こちらはノート比で1.9倍のパワーという。このパワートレインは全モデル共通だ。
特筆したいのは、最初に触れたとおり、走りだ。「e-4ORCE(イーフォース)」と呼ぶ、日産独自の4WDシステムは、期待していただけあって、このクルマがSUVであることを忘れてしまうほどスポーティなハンドリングを実現している。
モーターとブレーキで4輪の駆動力を調整するのがe-4ORCEだ。悪路での走破性、コーナリング能力、それに安定性の向上を謳う。アクセルペダルをパッと閉じるとタイヤの回転のせいで、乗員の頭が振られるのは一般的であるが、e-4ORCEでは、前後輪の駆動力制御でフラットな姿勢が維持出来るとしている。
さらに新型エクストレイルでは、独特の構造をもつピストンによる可変圧縮比エンジン(「VCターボ」と呼称される)を搭載した。走行に応じて圧縮比を変える(出力を変える)ため、1.5リッターから最大2.8リッターの排気量に相当するパワーと、燃費効率のよさを同時に追求出来るとされる。バッテリーへの電力供給のためのエンジンにとって、重要な性能なのだ。
幅広いニーズに対応
実際運転すると、力強い加速力を発揮するうえに、レーン・チェンジ時の素早さと安定感の高さは、目をみはるばかりだ。瞬時に大きなトルクを発生するモーターの特性を活かしているとともに、正確なステアリングと、しっかりしたサスペンションシステムをきれいにまとめあげているという感じである。
3列シート仕様もあって、幅広いニーズへの対応が目指されているのは仕方がないことだけれど、悪路も走れるピープルムーバーに終わっていないところがたいへん良い。
静粛性を高めることも、新型エクストレイルの大事な目標だったという通り、たしかに速度がかなり上がっても、意外なほど室内は静かだ。タンというベージュ系の内装色で雰囲気を出した仕様や、「エクストリーマーX」なる、アウトドアテイストを打ち出した仕様などは、クルマに乗ることを楽しみたいひとに向いている。
個人的に評価したい機能もいろいろあった。ひとつは「3ゾーン・エアコン」。運転席と助手席と後席で個別に温度調節が可能になっている。もうひとつは、後席用のドアシェイド。ウインドウ用の日除けで、フランスのSUVには装着車が多い。これも便利なもの。
日常で使っていて、意外なところの気配りに気がつくクルマかもしれない。「テイラーフィット」と名づけられた人工皮革シートも、動物福祉の観点から同様の人工皮革にこだわるテスラ車並みに肌触りが良い。
AUTECHも同時発売
ボディサイズは、従来型と較べて、2705mmのホイールベースは同一で、全長が30mm短くなって4660mmに、全高は20mm低くなって1720mmになった。後席の前後スライド量は20mm増えて260mmもある。
プラットフォームを共用する三菱「アウトランダーPHEV」とは、ホイールベースは同一。全長は三菱車が50mm長く、全高も25mm高い。いずれにしても両車の窮屈さは皆無だ。
e-4FORCE搭載車の価格はベースグレード「S e-4FORCE」(2列シート)の347万9300円から。「X e-4ORCE エクストリーマーX」(412万9400円)もあり、最上級モデルは「G e-4ORCE」(449万9000円)。同時に「AUTECH e-4ORCE」(446万7100円~)の設定もある。繰り返しになるが、こののち前輪駆動も発売される。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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