商品のバリエーションが少なすぎるという課題
text:Toshifumi Watanabe(渡辺敏史)
21世紀入りと相前後しての経済のグローバリゼーションの高まりに乗じて、いち早くビジネススタイルを大きく変えることとなったのがドイツの自動車メーカーです。
自ら生き残りをためには商圏の拡大が必至……という苦悩を抱えていた90年代、東西統一からの低賃金労働力流入、時同じ頃のユーロ圏構想や通貨統一といった、世界を向こうに回す環境が整い始めたという追い風もあって、彼らは合従連衡の波を作り、規模拡大にいそしみました。
その象徴的な一例は98年に誕生したダイムラー・クライスラーということになるでしょう。
一方で、世界市場を相手に規模拡大を図るに、ドイツの自動車メーカーは商品のバリエーションが少なすぎるという課題がありました。
最もわかりやすいBMWでいえば90年代後半の品揃えは3/5/7シリーズにZ3、そこにX5が加わって……と、そんなものでしょう。
プロダクトポートフォリオの側からみれば仕向地ニーズに応じてきめ細かく商品を設定するという、たとえば日本メーカーが当然のごとくやっていたようなことも彼らにとっては慣れない仕事だったわけです。
ちなみにBMW Z3やX5といった当時の新商品群が狙っていた市場といえば米国。そこでマツダやトヨタが拓いたカテゴリーのトレースを目論んだといえば言いすぎでしょうか。
そして不退転で台数/規模拡大戦略に舵を切った彼らにとって、猛烈な追い風となったのが中国の台頭です。
最終的には40-45%を整理 展開に大なた
中国の台頭に乗じた21世紀以降の自動車市場の伸長は爆発的なものがあり、古くから中国に進出していたVWを足がかりに政策的にも繋がりが深かったドイツの自動車産業は多くの恩恵を受けます。
秋波を送られるもカントリーリスクもあってか二の足を踏むことが多かった日本の自動車産業も2000年代半ば以降、彼の地での攻勢に本腰を入れますが、時既に遅し。
世界最大規模を誇るVWグループでいえば全数の約4割が中国市場の販売が占めるという、共に切っては切れない関係を築いています。
と、先日「アウディがモデルラインナップの30%を削減へ」というニュースが流れました。
誰であろう英国のAUTOCAR編集部がアウディのブラム・ショットCEOから得たコメントが根拠になっています。
いわく、アウディは既に18年度の時点で各銘柄のグレードやトリムなどを27%整理したそうです。
その流れを維持しつつ最終的には40-45%を整理、そしてモデルラインナップ自体にも大なたを振るう覚悟であると。
ショットCEOはモデルラインナップ削減について「通常のモデルに加えてスポーツバックを併売する必要があるのか、特定のモデルについて議論を重ねている」と仰せです。
一方で直近でもQ4ではないQ3スポーツバックなどが出てくる辺りに?マークが並ぶわけですが、ショットCEOも就任1年目ですし、恐らくここまでの意気込みをもって臨んでいるなら、日本での商品群においても少なからぬ影響があるかもしれません。
すき間を埋めるラインナップ やめるワケ
ドイツ勢は規模拡大を世界市場に求める過程で可能性あるところにマーケットイン型のモデルを相次いで投入。
これにSUVブームが油を注ぐかたちとなり、結果的に余りにも手数を広げすぎたのではないでしょうか。
件のアウディでみれば00年時点ではAの括りで3/4/6/8そしてTTで、4と6にはアバントやらオールロードやらと、ざっくりこんな程度のラインナップだったはずでした。
しかし現在は、Aは1~8までほぼフルコンプのみならずQも残すは4と6くらい、そこにTTとR8も加わりの、アバントに留まらずスポーツバックやらボディバリエーションもわんさか用意されています。
実はこの状況、メルセデス・ベンツもBMWもまったく同じ。
つまりドイツのプレミアム御三家は、年間販売200万台規模の成長の背景に、これほどの開発や製造の負荷が伴っていたわけです。正直、よくもやったりの感すらあります。
いち早くアウディが減量を表明した背景は、まず主要商圏における景気の減速が挙げられるでしょう。
中国市場はもちろんのこと、足元の欧州市場でも英国のブレクジット動向やドイツ銀行の債務危機など、不確定要因が飛び交っています。
ドイツ国内の話をすれば、従来サラリーマンの報酬の一部として重用されていた車両貸与制度が崩れつつあるという実情も影響のひとつかもしれません。
要は会社主導で与えられるクルマなんかいらんから、相当額を現金で寄越しなさいということでして、クルマ離れはなにも日本に限った話ではないことを思い知らされます。
さらに考えられる理由があります。
ラインナップ削減 さらにもう1つの理由
次いで考えられる理由は自らの手数がどうにも足りないからということ。
現在自動車メーカーはCASEだMaaSだのと、IT絡みで生まれた新しいビジネススキームの気配と必死で格闘しています。
ことのほか自前主義の意識が強く、石橋を叩き壊してしまうほど慎重なトヨタでさえ、協調領域と判断するや躊躇なく出資や技提を結ぶほどです。
こんな時代にアウディは技術による前進なんて社是を掲げているものですから、電動化も自動運転もコネクティビティも最先端でなければグループの技術総代としての立場も揺らぎかねません。
電動化にまつわるeトロンというサブブランドの定着も進めるためには、既存の自動車開発のリソースを大胆に分割、そして再分配する必要にも迫られます。
それらこれらの苦悩を背景に、既存のラインナップを減らすという一見後退的、でも現実的な判断は、恐らく先進性を支持するステークホルダーにはウケもいいはずです。
アウディがそこまで考えているかは別にして、リセッションに不安を感じる出資者にどう対処するかという課題の最もシンプルな解答は、従来型のビジネスを縮小し今後のビジネスに割り当てるというスタンスなのだと思います。
自動車メーカーにとってCASEやMaaSという言葉は相当厄介ではありますが、今この時点では経営計画を大きく動かすに都合のいいキーワードであるのかもしれません。
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