次世代Gクラスに同乗体験
メルセデス・ベンツがEQGプロトタイプの実力を少しでも不安視していたのなら、われわれ報道陣に見せることはなかっただろう。
【画像】あの「ゲレンデ」がEVに!【次期メルセデス・ベンツEQGと現行Gクラスを写真で比較】 全85枚
エンジニアによる説明の後、助手席に座った取材班は、初期開発テストの真っ只中に放り込まれた。
自動車メーカーがこれほど早く新型車に触れることを許してくれるケースは、めったにない。コンセプトカーとして公開されてから1年余り、2024年に発売されるEQGがどのようなものかを、早くも直接目にすることができた。
開けた砂利道を軽快に走り抜けると、テストコースはやがて赤茶けた土や大きな岩が露出したトレイルへと変わっていく。メルセデス・ベンツが「クリーパーモード」と呼ぶ走行モードでは、4基の電気モーターがローレンジ付き2速トランスミッションを経由して各車輪にスムーズに駆動を伝える。
その際、電気的な鳴動はない。トラクションコントロール・システムによる電気的なノイズもない。ただ、タイヤが踏む岩やホイールハウスの内側に当たる小石の音が、周囲の自然を感じさせる。
ドライブトレインの洗練度は、オフロード車というより高級セダンに近く、EQGの内面からラグジュアリーな空気が伝わってくる。
今回のテストコースでは、多くの区間で忍耐が要求された。あるところでは、3つの車輪でバランスをとりながら、シーソーするように走る。またあるところでは、急な岩場を蜘蛛のように這って進む。
このような危険な状況にもかかわらず、EQGが圧倒的なトラクションを発揮し続けるのは、開発がすでに十分に進んでいるためで、ディーゼルやガソリンエンジン搭載のGクラスと同等の能力を持っているように思われた。
自社開発の電子システムにより、Gクラスの3ロック式ディファレンシャルを電気モーターで再現し、最もトラクションのかかる車輪に集中的にパワーを送ることができる。
メルセデスが新たに立ち上げたサブブランド「Gクラス」の責任者、エメリッヒ・シラーが自らEQGを繊細に導き、岩場を越える場面もあった。その落差は手ごわい。しかし、アクスルのアーティキュレーションとスプリングの可動域の広さによって、止まらずに走り続けることができるのだ。
大柄だが小回りの効くボディ
しかし、安全な道に出る直前、大きな岩がアンダーボディにぶつかり、全身が震えるような衝撃を受けた。「こんな時に備えて、バッテリーケーシングの外装材を新たに開発したのです。もし、スチールのケーシングだけだったら、今頃は不安になっていたかもしれませんね」とシラーは言う。
EQGのオフロードでの俊敏性は、従来のGクラスよりも小さな旋回半径によって、非常に顕著なものとなっている。また、1979年の初代モデル誕生以来の特徴である、高い着座位置、直立したフロントガラス、切り立ったサイドガラスは、悪路でも優れた視認性を発揮する。
その後、砂に覆われた広いワインディングロードを走り、130km/hを超えるスピードに到達する。ここでは、EQGの洗練されたエアサスペンションが素晴らしい働きを見せ、段差や起伏を素早く吸収し、ロール角の最小化に貢献している。
試乗の終盤、シラーはEQGプロトタイプを砂利道に停め、ダッシュボード上のボタンを押し、左側のステアリングホイールのパドルを引っ張った。「これがGターンと呼ばれるものです」と言って彼がアクセルを踏み込むと、わたし達はその場で360度回転させられてしまうのだ。このGターンは、左右のモーターをそれぞれ逆回転させることで、戦車のような超信地旋回を可能にしたものだ。
「Gターンは、当初は『あったらいいな』という程度の機能で、まったく必要ないものだと思っていました。しかし、テストしてみると、オフロードの狭い状況下で実用的なメリットがあることがわかり、市販モデルに搭載することにしました。でも、サプライズはこれだけではありませんよ」
歴代のGクラスがそうであったように、この新型EQGも伝説的なオーストリアのシェークル山を制覇すべく開発が進められている。生産拠点に近い全長5.5kmの厳しいトレイルにおいて、生産開始前に300回のテスト走行が予定されている。
発売まで約2年、EQGにはまだ多くの謎がある。しかし、現時点でも、これほどまでに悪路走破性に優れた電動オフローダーは他にないと言っていいだろう。困難な地形や急斜面を乗り越え、岩だらけのトレイルを下りるその姿は、まさに驚くべきものだ。電動で重量は3トンを超えるかもしれないが、舗装路を離れたときの能力と俊敏性は、まさにGクラスそのものであり、素晴らしいと言わざるを得ない。
性能面では妥協を許さず
メルセデス・ベンツはこのように、新型EQGの耐久性テストを本格的に始めている。4年間の開発プログラムの折り返し地点にあたり、複数のプロトタイプがテストに投入されている。今回取材班が体験したのも、その1台だ。
昨年初めて公開されたEQGは、メルセデスの象徴的な存在であるGクラスのEV版で、2024年に発売される予定だ。Gクラスブランドの責任者エメリッヒ・シラーは、「EVのGクラスは最初から、オンロードでもオフロードでも内燃機関車と同等以上の性能を持つべきだと決められていました。性能面で妥協はしたくなかったのです」と語る。
EQGは、最新世代のGクラスをベースとし、スチール製のラダーフレーム・シャシーをEV向けに改良。メルセデスの長年のパートナー企業であるマグナ・シュタイヤーが生産する予定である。
テスト中のプロトタイプは、現行のGクラスと同じスクエアなボディを保持しており、ひと目でそれと分かるフォルムとなっている。フロントバンパーやグリルなどは、EV独自のデザインが採用されている。
シラーによると、「内燃機関モデルと同様に、ボディは8点でラダーフレームに接続されている」という。
メルセデス・ベンツの他のEQモデルと同様、フロントのラゲッジルーム(フランク)は存在しない。充電ケーブルは、従来のスペアタイヤがあった場所に設置されたロック付きボックスに収納できる。
パワーユニットは4基の電気モーターで、それぞれ独立して車輪を駆動する。これは、メルセデスAMGが2013年に限定生産したSLS E-Cellを参考にしており、現在のEQモデルの中では唯一のセットアップである。
このような4モーターレイアウトは、米国のEVスタートアップ、リビアンも「R1」で採用している。シラーは、「オフロード性能とオンロードの快適性を兼ね備えた無敵のクルマ」を作り上げるべく、EQGに採用したと話す。
「4モーターレイアウトをめぐって、集中的に議論が行われました。非常に複雑かつ高価なシステムです。しかし、2モーターではディファレンシャルロックが必要になり、電子システムと機械システムの統合が求められます。3モーター(フロントに1基、リアに2基)だと、オフロードで性能をフルに発揮できません」
4モーターならではの可能性
フロントモーターは、アクスル内の低い位置に取り付けられる。リアモーターは、EQGのために特別に開発されたド・ディオン式リアアクスルの内側に搭載され、「優れたトラクションと柔軟性の高いサスペンション」を実現するという。
各モーターは、高速・低速域に対応する2速トランスミッションを介して、各車輪に個別に駆動力を伝えることができる。
走行モードとして、従来の「エコ」、「コンフォート」、「スポーツ」に加え、オフロード向けに「トレイル」、「ロック」、「サンド」が用意される。
さらに、オフロード走行を容易にするため、Gクラスのロックディファレンシャル(前後アクスルに2つ、トランスファーケースに1つの計3つ)の働きを再現することも可能だ。不安定な路面でトラクションを維持するために、駆動力を1つの車輪に集中させることができる。
シラーは、4モーターレイアウトの最大の利点として、スロットル操作の正確性を挙げている。
「信じられないほど正確なのです。各車輪の駆動を個別にコントロールすることで、まったく新しいレベルの能力を得られ、オフロードでの可能性がさらに広がりました。1か月ごとに最新のプロトタイプを走らせるのは、本当に楽しいものです。最高の電動オフローダーだと思います」
ダッシュボードに設置されたあるボタンを押すと、「Gターン」と呼ばれる旋回が行われる。左右の車輪を逆回転させることで、戦車のようにその場で360度ターンができるのだ。ステアリングホイールのシフトパドルで、左旋回か右旋回かを選択することができる。
また、フロントモーターのパッケージングをコンパクトにすることで、前輪の回転角を大きくし、既存のGクラスよりも「優れた」回転半径を実現している。
オフロード性能はGクラス以上?
こうした新しいパワーユニットに電力を供給するバッテリーは、リアシート下のフロア内に搭載されている。メルセデス・ベンツによると、容量は「約100kWh」のリチウムイオンバッテリーで、そのセル技術はEQXXコンセプトで採用されたものと同じだという。新しいシリコンアノードを使用することで、新型EQE SUVやEQS SUVよりもエネルギー密度と効率を高め、同時に重量とサイズを軽減できるとされている。
航続距離について、シラーは開発の初期段階であるとして明確な回答を避けながらも、4モーターレイアウトにより、オンロードとオフロードの両方で大幅なエネルギー回生が可能であると述べている。
「オフロードでは、航続距離というより、走行時間が重要です。テストでは信じられないような数字が出ています」
バッテリーはオフロード走行に対応するため、スチール製の頑丈な密閉型ケースに収められる。硬い岩石の衝突や衝撃から保護するために、炭素繊維強化ポリマーの層も追加されている。
「外側の層は非常に弾力性のある素材でできており、常にバッテリーを保護するように設計されています」とシラーは言う。
バッテリーをフロア内に搭載することのメリットとして、重心がGクラスよりもかなり低くなることが挙げられる。しかし、その代償として重量の増加は避けられない。
Gクラスブランドの責任者であるシラーは、「どのEVでもそうですが、重量は課題です」としつつ、「まだ最終的な数字は出ていませんが、3500kgを下回るでしょう」と述べた。
足回りとしては、フロントにダブルウィッシュボーン式サスペンション、リアにトレーリングアーム式サスペンションを採用し、Gクラスと同様のリンケージポイントを用いている。
メルセデス・ベンツは、EQGの地上高やアプローチアングルなど、スペックについてはまだ多くを語らない構えだが、シラーはオフロード走行において、ディーゼルおよびガソリンエンジン搭載のGクラスに匹敵するだけでなく、特定の状況下では上回ることもあるとしている。
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みんなのコメント
車重が3.5tですか…まさに公道を走る戦車ですな。
値段ももの凄いだろうけど、世界中のセレブリティにはウケるでしょう。
市販モデルの登場が楽しみ。