現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > マツダロータリーの灯は消えず!! FD型RX-7オーナー、渡辺敏史がロータリー工房を訪問!

ここから本文です

マツダロータリーの灯は消えず!! FD型RX-7オーナー、渡辺敏史がロータリー工房を訪問!

掲載 更新 13
マツダロータリーの灯は消えず!! FD型RX-7オーナー、渡辺敏史がロータリー工房を訪問!

 マツダが今、「CLASSIC MAZDA」として初代ロードスターのレストアとFC型&FD型RX-7の復刻パーツを供給する取り組みを行っている。そこで、実際にFDオーナーとしてその取り組みに対する思い、そして実際にロータリー再生工場の現場を見学してどう思ったか、さらに今後マツダからロータリーの復活は果たしてあるのかどうか、についてFD型RX-7を今なお所有する自動車ライター、渡辺敏史が思いの丈を吐露する。

文/渡辺敏史、写真/ベストカー編集部、マツダ、渡辺敏史

だ…大丈夫…なの…か…?? マツダいきなり新型SUV5車種投入計画発表!! 開発資源全投入!!?

【画像ギャラリー】ロータリーの灯は絶対に消さない!マツダの意地と熱き想いを知る!!

■現在もマツダから「ロータリー」の火は消えていなかった!

 マツダが1991年に日本メーカーとして初のル・マン総合優勝を勝ち取ってから、今年でちょうど30年。目を瞑れば、787Bが搭載するロータリーユニット、R26Bから放たれる生き物がかったあのハイトーンサウンドが蘇る……という方もいらっしゃることだろう。

 その年、91年に発売されたFD3S型RX−7は02年に販売終了。そして03年、その後を受け継ぐように発売されたSE3P型RX−8は12年に販売終了……と、それ以降、マツダのラインナップにロータリーユニットを搭載するクルマはない。

ロータリーエンジンの市販車が途絶えておよそ10年となる。市場には現役のロータリーエンジン車が相当数存在しており、その交換用ベアエンジンを製造するのが「クラシックマツダ」部門だ

 が、その間も、というか今この時も、マツダではロータリーの火は消えていない。そんな話がマツダのWebサイトにあがったのはこの6月の話だ。NA型ロードスターやFC&FD型RX−7の部品復刻、そしてNA6C初代ユーノスロードスターのレストアサービスなどを手がけるクラシックマツダ部門が作ったそのページには、今も生産を続けるロータリーエンジンの部品、そしてベアエンジンの組み上げの様子が記されていた。

■「クラシックマツダ部門」はマツダ本社工場の一角にあった

 その現場を取材すべく段取りを組み、マツダの広島本社を訪れると、受付を通り抜けてその奥に広がる本社工場の一角に招かれた。感覚的には9階建ての本社ビルと目と鼻の先にある発動機A号棟は1934年から操業を開始、戦中~戦後を通してマツダの悲喜こもごもを見つめてきたここは、広島にとっても特別な場所であるだろう。

マツダクラシック部門取材のため、今回FD型RX-7のオーナーでもあるライターの渡辺氏がマツダ本社を訪問。マツダのロータリーへの想いを、とことん見て聞いて体感した!!

 かつてのロータリーエンジン生産拠点だった宇品工場から移ってきたこの場所に収まる工機類は、生産最盛期の73年前後に導入されたものだ。察しのいい方であれば、その直後にオイルショックや環境性能強化などの大波が自動車業界に襲いかかったのはおわかりだろう。小型軽量にして高性能を引き出せるロータリーへのシフトを狙っての拡大投資が、その後のマツダの経営に大きな足枷となったのもご存じのとおりだ。

ロータリーユニットを小規模ながら生産継続するということは、特殊な工機類のこまめなメンテナンスにもつながり、ロータリーエンジン継承の意味でも非常に重要な意味を持つ

 年季の入ったこの工機類を今もこまめにメンテナンスしながら補修用部品を生産し続ける、その最大の理由は、工機メーカーにとってもマツダにとっても、唯一無二であるロータリーに対しての投資は負荷が大きすぎるということだろう。

 でも結果的に、手練れの工員が毎朝ごとに微細に点検、調律しながら動かすこの工機が生み出す部品の質が、最新の工機がプログラムに準じて生み出すそれよりもむしろ優れているのではないだろうか。そう見えてしまうのは個人的にかれこれ20年以上ロータリーを所有するがゆえの贔屓目かもしれない。

■現在は年間200基前後のエンジンを3人のエキスパートによって組み上げている

 が、これら部品生産の工機が並ぶ傍らにあるベアエンジンのブースを見て、その想いはいっそう強くなってしまった。目測で30~40m四方という感じだろうか、コンパクトにまとめられた組み立て工程では現在3人のエキスパートが、年間にして200基前後のベアエンジンを組み上げている。

 基本は世界のディーラーでのエンジン換装のニーズに応えるもので、型式は2ローターの13B、つまり車体の現存数が多いRX−7やRX−8などのニーズに対応している。

現在3人のエキスパートにより手組みで生産されるベアエンジン。一人で1台のエンジン組み立て精度を保証するため、エキスパートになるためにはRE組立訓練場で約1年間の研修が必要となる

 このブースで組み立てに携わるためには、たとえレシプロエンジンの経験が豊富だったとしても、RE組立訓練場と称する約1年のプログラムで、座学から現場補佐までをみっちりとこなさなければならないという。

 工程を流れ作業ではなく、ひとりで完結させるセル生産を採るその様子は、AMGの言葉を借りるなら徹頭徹尾のワンマン・ワンエンジン。ローターやハウジングに組み込まれるシール類の嵌め込みのテンションや、ロータリーならではの部品であるエキセントリックシャフト、ハウジングの組み込みなどをすべてひとりでこなす、その工程にはタクトのような時程管理も存在しない。

 代わりにあるのは絶対に既定値は外さないという工員の力加減や指感覚だ。もちろん要所の検査には測定機器のチェックが入り、全数がそれを通して品質管理されている。とはいえ、プロがプロの仕事を淡々と果たすことによっておのずと目標が満たされる、匠の阿吽こそがタクトだということが見るからに伝わってくる。

■唯一のロータリーエンジン継承のためユニット生産を継続するマツダの意地

 マツダの調べによると、現在のロータリーユニット搭載車の国内登録台数は約5万3000台。うち、RX−8は52%、FD型RX−7は28.2%、と8割以上を占めている。かぎられたリソースのなかで新車開発生産に影響を与えず事業を継続させる、すなわち赤字化させないという大前提がクラシックマツダの事業では求められるなか、まずできることとして、FC型も含めた13B搭載のRX−7を文化継承の糧にしたいという思惑も窺える。

世界中にあるロータリーエンジンの交換ニーズに唯一のロータリーエンジン製造メーカーであるマツダが真摯に取り組んでいく。マツダの意地がそこにある

 これは私見だが、クルマ作りは商売として捉えると、まぁ心底大風呂敷すぎて面倒くさいものだと思う。開発工数や部品点数はおびただしく、作るものが大きいがゆえ比例して占める地べたも大きく、関わる人数も多く、挙句の果てに利益率は10%も出れば上々……と、今どきまるでスマートではないものだから、傍から見ればBEVシフトをきっかけに産業構造が変わってボロ儲けできるんじゃないかと測られるフシもある。

 そういう方向から物事を判断する面々には、製造責任も果たした旧いエンジニアの部品をなぜ供給し続けなければならないかはわからないだろう。でも、クルマと人との間には、動いてもらわなければ生活が滞るという実務的な関係もあれば、一生乗り続けたいという恋愛的な関係もある。

正直な話、企業は収益を上げ続けなければ存続しない。収益を生まなければメーカー側の都合で打ち切られてもユーザーは文句は言えない。しかし、マツダはロータリーの火を絶対に灯し続けると宣言!!

■間接的ながらクルマの動力としてロータリーが復活する可能性を今は待とう!

 命を預けるものだからこその安心安全、だからこそ芽生える特別な愛着、どちらの想いも重いことをクルマ作りに携わる人々はよく知っているから、そこに商売では割り切れない最大限の配慮を払おうとするわけだ。と、そこに加わるのが、ロータリーの火は絶対に灯し続けるというマツダの意地である。

手組みによるロータリーエンジン供給事業という地道な活動が、近い将来違う形ながら復活が予想されるロータリーエンジンへの技術継承にも一役かって欲しいと切に願う。がんばれ、マツダ!!

 世の趨勢からからみれば、ロータリーを直接駆動力とするクルマの登場は難しい方向へと向かっていることは間違いない。が、その特性を活かしたハイブリッドやレンジエクステンダーの開発は進められていると聞く。形は違えど、それを動力源とするクルマが活き続けることを、クルマ好きとしては慮りたい。

【画像ギャラリー】ロータリーの灯は絶対に消さない!マツダの意地と熱き想いを知る!!

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

アストンマーティン・ヴァルキリーのデビュー戦とふたりのドライバーが決定。IMSAはデイトナを欠場へ
アストンマーティン・ヴァルキリーのデビュー戦とふたりのドライバーが決定。IMSAはデイトナを欠場へ
AUTOSPORT web
モリゾウがトヨタを激励。豊田スタジアム新コースでの“人力パワー”に観客から拍手/WRC写真日記
モリゾウがトヨタを激励。豊田スタジアム新コースでの“人力パワー”に観客から拍手/WRC写真日記
AUTOSPORT web
「エニカ(Anyca)」サービス終了…カーシェアはどこへ向かうのか?
「エニカ(Anyca)」サービス終了…カーシェアはどこへ向かうのか?
ベストカーWeb
オジエが豊田スタジアムステージの苦手意識を明かす「僕たちはいつも遅い」/ラリージャパン デイ1コメント
オジエが豊田スタジアムステージの苦手意識を明かす「僕たちはいつも遅い」/ラリージャパン デイ1コメント
AUTOSPORT web
オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
ベストカーWeb
ラリージャパン2024が開幕。勝田貴元が新レイアウトのスタジアムステージで3番手発進/WRC日本
ラリージャパン2024が開幕。勝田貴元が新レイアウトのスタジアムステージで3番手発進/WRC日本
AUTOSPORT web
N-VANより安い200万円以下!? スズキ新型[エブリイ]は配達業を助ける!! 航続距離200kmのBEVに生まれ変わる
N-VANより安い200万円以下!? スズキ新型[エブリイ]は配達業を助ける!! 航続距離200kmのBEVに生まれ変わる
ベストカーWeb
実録・BYDの新型EV「シール」で1000キロ走破チャレンジ…RWDの走行距離はカタログ値の87.9%という好成績を達成しました!
実録・BYDの新型EV「シール」で1000キロ走破チャレンジ…RWDの走行距離はカタログ値の87.9%という好成績を達成しました!
Auto Messe Web
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
AUTOCAR JAPAN
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
AUTOSPORT web
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
乗りものニュース
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
AUTOSPORT web
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
AUTOSPORT web
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
くるまのニュース
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
AUTOCAR JAPAN
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
AUTOCAR JAPAN
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
AUTOSPORT web
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
Auto Messe Web

みんなのコメント

13件
  • 写真のRX-7を見るだけで、うっとりする。
    国産車としては最高のデザインだと思う。
  • 渡辺さんの記事は、ベストカーの他のライターとは別格の安定感がありますね。
    だから紙面でも清水草一さんの手綱を任せられている。
    日本カーオブザイヤー選定委員に入っているライターなんかより、よほど好感が持てます。
    皆さん、選定委員、検索してみて。
    マジかよ!って顔ぶれですから~。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

294.8399.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

355.91520.0万円

中古車を検索
RX-7の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

294.8399.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

355.91520.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村