なぜホンダはビートのような旧車にも力を入れていくのか?
1991年5月に誕生し、1996年12月まで販売されたホンダビート。言わずと知れた、いまのS660につながる軽ミッドシップ2シーターオープンカーだ。生産終了から約20年が経過した2017年6月、生みの親のホンダが一部にはなるが純正部品の再販をスタート。再開決定当初の対応パーツはわずか5ヵ所7点程度に限られたが、2020年5月現在、予定も含めて109ヵ所までに範囲が広げられている。
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ビートオーナーにとって純正パーツ再販についてはよくご存知の話題だと思うが、あらためてここで情報を整理していこう。
ファンの想いがホンダを動かした
「ビートをより長く楽しんでいただきたい」
ホンダ ビートと言えば純粋な一般オーナーのみならず、ホンダ関係者をはじめ、誰もが知るレーシングドライバーなどの著名人にも多数のマニアなファンがいるクルマ。生産終了してから余裕で20年以上が経ち、後継車と呼ばれるS660が登場して以降もなお、逆に熱冷めやらぬ……といった状況が続いている。
日々、数字は変動しているので正確とは言えないが、数年前のデータでも総生産台数の約6割となる約2万台が現存しているという「極めて異例な車種」なのだそうだ。
これらの状況をホンダ内部の人間もよくよく理解。「ビートはホントに多くの皆さんに愛されていて、普段乗り用に一台、保存用に一台、部品取り用に一台など、お一人で2台や3台と所有されている方も多くいらっしゃいます」。ビートの純正パーツ再販は、まさにオーナーたちのリアルな声が届いた結果だ。
ホンダにとって純正パーツ再販の事例は過去にもないわけではなかったが、いままでは特定の部品のみという対応。ビートのようにひとつの車種でここまで広範囲に及ぶ再販(再生産)は、初の試みだという。
あらためてホンダビートとは?
NAエンジンながら独立3連スロットルで自主規制の64馬力をマークするE07Aエンジンを搭載するMR(ミッドシップリア駆動)のビート。その吸気システムは「MTREC(エムトレック)」と呼ばれ、当時のホンダが誇ったF1由来のテクノロジーを投入。ときにはターボエンジンをも上回り、いまでも最速&最強のNAエンジンとしてもてはやされている。
サスペンションを見ても前後ストラット式を採用、ブレーキも4輪ディスク、ボディフォルムやスタイリングは海外からも高い評価受けるなど、随所にハイスペックな技術が与えられながらも、ホンダはこれを“スポーツカー”とは表現していないところがとても面白い。
当時は、どのジャンルにもあてはまらない「見て」「乗って」「走って」楽しい、新しいコンセプトのクルマであるとし、あくまでもシティコミューターの位置づけとされていた。
ゆえに一時は、ビートをスポーツカーやレーシングカー然とした内外装や足まわりを仕立てるべく、やや過激にチューニングするユーザーたちよってもアフターパーツマーケットの多くの割合を賑わせていた。しかし、ここ5年ぐらいはこの先も長く乗り続けるため「いかにコンディションを保つか?」という切実な方向に流れ出したようだ。
純正パーツ再販に対する感謝の声とさらに膨らむ期待
2020年6月現在、予定も含めて109ヵ所までに範囲が広げられたビートの純正部品の再生産。当初から「徐々に対応を増やしていく」ということば通り、まさに有言実行。どのパーツが追加されたかは、ホンダの公式サイトのなかにある『BEAT parts』という専用ページで確認することが可能だ。
ちなみに、補修部品そのものについては、(純正ではない)各アフターパーツメーカーやビート専門ショップなどから一部はリリースされているものもある。物によっては、社外品でまかなうこともできなくはない。ただ、社外品となると、イチから金型をつくって生産&販売するような場合はコストが合わず、カバーできる範囲やパーツが限定されることは想像に難くない。
実際のビートオーナーからは、「壊れた(傷んだ)部品を補修する際には、やはり、アフター品ではなく純正部品に拘りたい人も多いと思います。ホンダさんによる純正パーツの再生産は大変うれしく思っています」という安心や感謝の声がたくさん挙がっている。
最後にビートオリジナルパーツショップ「RSマッハ」の清松代表にビートオーナーの近況や純正部品再販について話を聞いてみた。
「オーナーさんからの要望ですが、チューニング系は徐々に少なくなってきているような気がします。内装やユーティリティ系はコンスタントに人気があるように思います。純正部品再販については我々ショップにとってもありがたいことです。しかしオーナーさんたちにとって、本当にどこにも売ってなくて困っているパーツはまだまだあるようです。この先、車検の際に最低限必要な消耗パーツ類が追加されることに期待しています」。
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