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ポルシェ・カイエン S を深掘り(2) 快適さは上級サルーン並み 最後に「誤解」は解けるのか?

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ポルシェ・カイエン S を深掘り(2) 快適さは上級サルーン並み 最後に「誤解」は解けるのか?

思いのほか扱いやすい1983mmの全幅

アスファルトを覆っていた雨水は、蒸発したらしい。日差しが徐々に強まり、上着がいらないような気温になってくる。

【画像】末永く所有したい ポルシェ・カイエン S 競合サイズのSUVと比較 全174枚

グレートブリテン島北部、キールダーの森まで、農村を貫く一般道を走る。1983mmの全幅へ気を使うのではと憂慮していたが、ポルシェ・カイエン Sは思いのほか扱いやすい。運転席からの視界は広く、高めの目線で対向車とのすれ違いは難しくない。

村人に睨まれ、スポーツエグゾーストのバルブが開いたままだったことに気付く。ボディカラーは落ち着いたアルガルヴェ・ブルーでも、主張の強い大型SUVであることは間違いない。奇人だと思われないよう、マナー良く運転する必要がある。

山奥へ進むと、スマートフォンは圏外に。フォトグラファーと筆者はトランシーバーで連絡を取り、フォトジェニックなポイントを探す。広大な自然に、アップダウンのある道が這っている。太陽の光も悪くない。

カイエン Sは安定感が高い。想像よりスピードが出ていて、牛の群れへ出くわした時、目一杯ブレーキペダルを蹴飛ばす羽目になった。ABSが小さな音を立てて介入し、グリップは担保された。

11:00/キールダーの森 繊細に届くフィードバック

キールダーの森では、小規模なモータースポーツ・イベントが開かれていた。以前はRAC(ロイヤル・オートモービル・クラブ)主催のラリーの一部だったが、現在は独立している。

1996年には、トヨタ・セリカ GT-FOURを駆ったアーミン・シュワルツ氏が優勝している。1995年は、ターボリストラクターのレギュレーションへ違反した罰として、出場が叶わなかった。

そのラリーカーは、350psを発生したとか。冷静に考えると、カイエン Sより120ps以上低い。シュワルツが運転するセリカ GT-FOURの方が間違いなく速かったはずだが、車重が2160kgあっても、このSUVもかなり速い。しかも運転しやすい。

ステアリングホイールは軽く回せ、路面からのフィードバックが繊細に届く。スポーツ+モードを選び、トラクション・コントロールの介入を弱めれば、さらに思い切り振り回せる。

カーブを鋭く旋回し、頂点を通過した辺りでアクセルオン。瞬間的にテールが沈み、後輪駆動のようにリアタイヤが蹴り出す。テールがむずがり、スキール音が小さく鳴ると、電子制御が介入してなだめられる。強烈な加速を維持しながら。

13:00/ランチタイム 目的地まで最短時間のクルマ

お腹を満たす。ついついスマートフォンを手にし、ニュース・アプリを見てしまう。

英国編集部では定期的に、どのクルマがA地点からB地点まで最短時間に移動できるか、という話題になる。フェラーリSF90は桁外れにスピードが出るものの、路面には舗装の剥がれた穴があり、木陰では警察官が監視していたりする。

恐らく、ホットハッチの方が勝つと思う。カイエン Sも、間違いなく優勢だろう。

路面から高めのキャビンは、外界とほぼ完全に隔離されている。1番シリアスなドライブモードでも、ボディは僅かにロールするが、乗り心地は硬すぎない。一般道でも長時間快適で、結果として積極的に運転できる。

474psは、一般道では充分以上。追い越しも安全・短時間にこなせる。

15:00/スコットランド国境 平均燃費は4.7km/L

気付いたら、グレートブリテン島の北、スコットランドとの国境に辿り着いていた。景色が僅かに異なり、言葉のアクセントも違う。空き家でも、壁にスプレーで落書きされた場所は殆どない。時代が違うようだ。

ガソリンスタンドへ立ち寄る。屋根のかかった立派な場所とは異なり、古いポンプが地面から突き出ているだけ。それでも、しっかり非接触決済には対応していた。

カイエン Sが積む、V8ツインターボ・エンジンと重なるように思った。前時代のパワートレインかもしれないが、現代のカーライフにもしっかり対応している。味わい深い個性がある。

満タンになったところで、メーター用モニターの燃費計をリセットする。ここまでの平均は4.7km/L。現在の環境意識には、対応していないかも。

18:00/ロンドンへ南下 上級サルーンのように快適

カイエン Sで南下を始める。明日は大切なミーティングがあるから、今日のうちに自宅へ帰りたいところだ。今までそれを忘れていた。

道すがら、フォトグラファーと今回の自動車旅行を振り返る。ドライブモードをノーマルへ戻し、サスペンションをしなやかにする。上級サルーンのように、快適になる。

23:50/ロンドン 過度に誤解されてきた実力

クタクタで、スマートフォンを見る気にはならない。でも、不思議と頭は冴えている。

カイエン Sは素晴らしいSUVだ。速く快適で実用的。エキサイティングな旅も楽しめる。これまで、過度に誤解されてきたのかも。AUTOCARではポルシェに限らず、パワフルなSUVが素晴らしい走りを披露するという事実へ、何度も触れてきたけれど。

現実としては、カイエン Sは大型SUVとして、子どもの送迎やゴルフ場への移動手段に活躍するはず。多くの富裕層はこのモデルの魅力を知っていて、多くの契約が結ばれてきた。しかし、運転を楽しむために選ばれるモデルとはいえない。

718ケイマン GT4を提供するため、ポルシェが作っているという考え方には一理ある。
ブランド・マニアからの見られ方が、アップデート後に変わるとは考えにくい。

内燃エンジンを積んだカイエンが最後を迎えても、熱心なカーマニアが欲しがることはないかもしれない。それでも、永遠の別れの日は刻々と迫っている。

ポルシェ・カイエン S(英国仕様)のスペック

英国価格:8万4400ポンド(約1595万円)
全長:4930mm
全幅:1983mm
全高:1698mm
最高速度:273km/h
0-100km/h加速:5.0秒
燃費:8.0km/L
CO2排出量:282g/km
車両重量:2160kg
パワートレイン:V型8気筒3996cc ツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:474ps/6000rpm
最大トルク:61.1kg-m/2000-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック(四輪駆動)

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