武骨さが身上!? スバルデザインの流れが新型レヴォーグで大きく転換した?
2020年10月、スバルは通算2代目となる新型レヴォーグを発表。アイサイトXや新開発の1.8Lターボエンジンなどを搭載し、その評価も上々だ。
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しかし、実は注目なのがそのデザイン。スバルのデザインはこれまで洗練されたフォルムを持つコンセプトカーをショーで出展しながら、市販モデルではいわばコンサバなデザインに“変貌”してしまうという傾向があった。
そうした背景を払拭するかのように、コンセプトカーの雰囲気を色濃く残したデザインを採用してきたのが今回の新型レヴォーグ。果たしてスバルのデザインは変わったのか。
文/清水草一 写真/編集部、SUBARU
【画像ギャラリー】全然違う!? 本稿登場全スバル車とコンセプトカーデザイン比較
■武骨さがスバルのデザインらしさ?
清水氏がスバルデザインの秀作としてあげる4代目レガシィツーリングワゴン
かつてスバルと言えば、群馬の田舎メーカー。メカに命は賭けるがデザインはサッパリの左門豊作……な部分があった。
スバル360は別格ながら、初代レオーネに代表される無骨なカッコ悪さは、ある意味「男は黙ってサッポロビール」とも言えたが、世界市場で戦う以上、いつまでも高倉健でいるわけにも行かない。
そこでスバルも、スバルなりにデザイン革命を目指し、しばしば秀作を世に送り出した。初代や4代目レガシィツーリングワゴンは、その代表例だ。
一方では、2代目インプレッサのフロントマスクの迷走ぶりや、5代目レガシィのデザインの低迷を見ると、スバルはデザインに関して、確たる信念は持っていない……とも思わされた。
日本の熱狂的スバリストたちも、メカ命でデザインは二の次どころか眼中にナシ! な高倉健揃い。「それがスバルのいいところ」で許されてきた。
スバルのデザイン革命が軌道に乗ってきたのかも、と思えるようになったのは、2013年あたりからだ。
■洗練されたWRX&レガシィコンセプトも市販車はコンサバに
11月に発売した「レガシィコンセプト」。どちらもワイド&ローの、スポーティで洗練されたフォルムを持っている
この年スバルは、3月に「WRXコンセプト」、11月に「レガシィコンセプト」を発表。どちらもワイド&ローの、スポーティで洗練されたフォルムを持っていた。
この2台のコンセプトモデルに共通するのは、ウエストラインより下側の部分の逞しさと、それと好対照を成すグリーンハウス(ウエストラインより上側の部分)の絞り込みだ。
こうすると、人間で言えば小さい頭に逆三角形の肉体を持つ、スーパーマン的なイメージになる。NHK『みんなで筋肉体操』の谷本准教授ですね。
ところが市販モデルは、筋肉体操になっていなかった。
2014年に発表されたWRXシリーズは、4代目インプレッサG4をベースに、「エアロ等で武装しただけ」に見えなくもない。どちらかというと凡庸な、いかにもスバル的に無骨なデザインだ。
デザインにこだわりのないスバリストの胸にはスッと落ちたが、WRXコンセプトを見て期待していた非スバリストにすれば「なーんだ」だった。
WRXは日本でも人気があるため、サイズの制約により、WRXコンセプトのワイド&ローなマッチョ体形にできなかったのだ。それで一気に見た目が凡庸になってしまった。
同じく2014年に発表された6代目レガシィは、ほぼ北米市場に特化したサイズに拡大されたため、マッチョ体形のカッコよさを維持していたが、全幅を拡大してタイヤを大径化すれば、クルマをカッコよく見せるのは比較的簡単。日本市場ではサイズが大きすぎて選択の対象外となった。
■期待高かったフォレスター&インプレッサもコンセプトカーの面影は希薄
2015年10月、東京モーターショーで公開されたのが「VIZIVフューチャーコンセプト」。非常に現実的でありながら、きっちりと筋肉体操感のあるカッコいいデザインだ
スバルのデザイン革命に対する期待がしぼみかけた2015年10月、東京モーターショーで公開されたのが「VIZIVフューチャーコンセプト」だ。これが次期フォレスターになると聞いて、我々は再び「おおっ!」となった。
それは、非常に現実的でありながら、きっちりと筋肉体操感のあるカッコいいデザインだったのである。「これなら市販モデルもイケるかも!」と思えた。
ところが、実際に登場した新型フォレスター(2018年発表)は、先代のマイナーチェンジもどきにしか見えなかった。テールランプなど無意味な装飾的グラフィックも目立ち、むしろ改悪か? という面も。
いや、そんなに悪いデザインではないけれど、そんなにカッコよくもない。少なくともVIZIVフューチャーコンセプトの面影はほとんど残っていなかった。騙されたー!
同時に発表された「インプレッサ5ドアコンセプト」は、VIZIVフューチャーコンセプトよりさらに現実的で、これはさすがにほぼこのまま出るんだろうと思ったが、2016年登場の5代目インプレッサスポーツは、アウディもどきのエッジを立てて若干シャープではあるものの、割とフツーなハッチバックだった。
これまた決して悪くはないけれど、決してそんなに良くもない。
このインプレッサスポーツをベースにしたXVはカッコよかったので、デザインの素性が悪くなかったことは間違いないが、いざ市販化となると、スバルのデザイン革命はどうも手が鈍るようだった。
■洗礼払拭!? コンセプトカーを色濃く引き継いだ新型レヴォーグのデザイン革命
2018年に発表された「VIZIVツアラーコンセプト」。一連のVIZIVデザインの系譜にあり、既視感が強かった。
スバルのデザイン革命に対する期待が、「大失敗はないけれど、大成功もない」というあたりに集約されつつあった2018年。スバルは性懲りもなく、「VIZIVツアラーコンセプト」を発表した。つまり次期レヴォーグのタネである。
それは、一連のVIZIVデザインの系譜にあり、既視感が強かった。このまま出ればいいけれど、どうせ出ないんだろうし。
ところが、今年公開された新型レヴォーグは、VIZIVツアラーコンセプトにかなり近い印象を保っていた!
インプレッサスポーツとの違いは、フォルムよりもバネル面のラインやエッジの鋭さにある。つまり表面的な化粧の部分だ。
インプレッサスポーツやXVも、バランスは決して悪くない。ただ、特にインプレッサスポーツに関しては、メイクが田舎娘っぽく、どこか野暮ったいイメージになっている。
ところがレヴォーグは、特にフロントフェイスのシャープさが、コンセプトモデルに極めて近い。ヘッドライト内側の切れ込みを見ても、インプレッサスポーツは「カッコよさげに小細工してみました」なのに対して、レヴォーグのそれはグリルの端のエッジがグイッと食い込んでおり、精悍さが違う。つまりメイクにキレがある。
人もクルマも、見た目の印象は結構微妙な部分で決まる。新型レヴォーグは、左門豊作ではなく花形満になって登場した。
フォルムをワイド&ローにすれば、カッコよくなって当然。しかし市販化にあたっては、どうしたってサイズの制約はある。だからコンセプトモデルのカッコよさを保つためには、細部のキレが非常に重要なのである。
スバルのデザイン部門は、デザイン革命を市販モデルに落とし込むコツを、会得しつつあるかもしれない。
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