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カローラクロス投入でもはや居場所はなし? C-HRの功績を改めて考える

掲載 更新 29
カローラクロス投入でもはや居場所はなし? C-HRの功績を改めて考える

 2016年末のデビューと同時に人気を集め、2017年、2018年と日本国内におけるSUV年間販売ランキングの1位となったトヨタC-HR。ニュルブルクリンク24時間レースの出走や新城ラリーでのデモ走行など、かなりスポーツ色を強く演出し、その独特なスポーティな外観と相まって瞬く間に人気車種となった。

 しかし、最近ではカローラクロスやヤリスクロスの人気に押されて、売上絶頂期の9分の1の販売台数にとどまっている。

新型アウトランダーPHEV販売好調!! おお…それは何より…でももっと売れてもいい気が…「全部盛り」の中身と懸ける意気込み

 かつては販売台数ランキングの上位だったC-HRは、なぜここまでの苦戦を強いられることとなったのか? C-HRを厳しい状況に追い込んだその要因と、これまでの功績やまだまだ衰えない魅力を紹介する。

文/渡辺陽一郎、写真/トヨタ、ホンダ、ベストカー編集部

■カローラクロスとヤリスクロスが好調な一方、C-HRは……

 今はSUVが売れ筋のカテゴリーだ。新車として販売される小型/普通乗用車の25%前後を占めており、ミニバンに匹敵する売れゆきとなっている。

 そしてトヨタは一部のOEM車以外は軽自動車を扱わないから、小型/普通車のSUVに力を入れる。2019年にはRAV4とライズ、2020年にはヤリスクロスとハリアー、2021年にはカローラクロスとランドクルーザーという具合だ。SUVのフルモデルチェンジや新規投入が続いている。

2021年9月から発売となったトヨタ『カローラクロス』。いちばん安いガソリンFF「G”X”」が199万9000円でハイブリッドFF「G」が259万円からとなっている

 特に成功している車種は、2021年9月に発売されたカローラクロスだ。同年11月には7300台、同12月には6290台、今年1月には7510台が登録され、国内で販売されるカローラシリーズ全体の53%を占める。ヤリスクロスも好調で、昨年11月が6480台、同12月は9450台、今年1月は1万760台だから(いずれもコンパクトカーのヤリスを除く)、この2車種がSUVの販売1位を争っている。

 カローラクロスとヤリスクロスが好調な一方、人気を下げたのがC-HRだ。2021年1~12月の1か月平均は1508台で、直近の昨年11月は1288台、同12月は1097台、今年1月は1072台であった。登録台数はカローラクロスの約17%だ。

■強烈なインパクトを放つデザインで2016年にデビュー

 C-HRとカローラクロスは、基本的に同じプラットフォームを使う。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)の数値も、両車ともに2640mmで等しい。パワーユニットは、ハイブリッドシステムは共通で、ノーマルエンジンは、C-HRが1.2Lターボ、カローラクロスは1.8Lを搭載する。

2016年末に販売開始されたトヨタ『C-HR』。独自性の高いデザインと欧州で鍛え抜かれた走行性能、さらに洗練されたインテリアで鮮烈なデビューを飾った

 もともとC-HRは、2014年のパリモーターショーに「トヨタC-HRコンセプト」の名称でプロトタイプを出展した。この時点では3ドアボディだったが、2015年のフランクフルトモーターショーには、5ドアモデルに変更して出展されている。2016年にはジュネーブモーターショーで、市販モデルが披露され、日本での発売は2016年12月であった。

2014年パリモーターショーに出展された「トヨタ C-HRコンセプト」。この後2015年フランクフルトモーターショーで5ドアモデル、そして2016年ジュネーブモーターショーで市販モデルが披露された

 C-HRで注目すべきは、各モーターショーに出展されたプロトタイプが、ほとんどデザインを変えずに市販されたことだ。一般的に個性的なプロトタイプは、市販の段階で外観を大きく変えるが、C-HRは個性を弱めなかった。

 そのために2016年12月の発売時点では、C-HRは強いインパクトを放っていた。ボディ形状はSUVに含まれるが、既存のカテゴリーに当てはまらない斬新なクルマと受け取られた。

■デビュー当時は今の9倍も売れていた!!

 このように注目度の強い新型車が登場すると、好みに合うユーザーは、購買意欲を一気に高める。C-HRも発売直後の2017年1~6月には、1カ月平均で1万3217台を登録した。小型/普通車の登録台数ランキングでは、プリウスとノートに次いで3位に入り、アクアやフリードを上回った。

 直近の2021年におけるC-HRの登録台数は、前述のとおり1カ月平均で1508台だから、2017年の前半には今の9倍も売られていた。そこで当時のC-HRの販売が好調で、その後に急落した理由について、改めて考えてみたい。

 C-HRが発売直後に売れゆきを急増させた一番の理由は、外観を趣味性の強い個性的なデザインに仕上げたからだ。インパクトの強いクルマは、ユーザーの気持ちとしてスグに手に入れたい。鮮度の高い時に味わいたい気持ちもあるから、今使っている愛車の車検期間が十分に残っていても乗り替える。

2016年11月に開催された新城ラリーでデモランするC-HRプロトタイプ。なんとトヨタ自動車の社長であるモリゾウ選手がC-HRプロトを自らドライブして周囲を驚かせた

 軽自動車やコンパクトカーのような実用的な車種は、損失を抑えるために愛車の車検満了を待って乗り替えるが、趣味性の強いクルマは購入タイミングが異なる。その結果、発売直後の売れゆきが急増した。かつて豊富に用意されていたクーペにも、発売直後に売れゆきを伸ばす車種が多かった。

■ニュルブルクリンク24時間レースを走り切った走行安定性

 C-HRが好調に売られたふたつ目の理由として、2016年の発売時点から、トヨタの全店で扱ったことも挙げられる。2016年当時のトヨタは、全国に4800店舗以上を構えており、今よりも約200店舗多かった。この販売網で一斉に売られたから、登録台数も急増した。

 商品力については、C-HRは走行安定性が優れていた。プラットフォームは2015年に発売された現行プリウスと基本的に同じだが、後輪の接地不足が解消され、SUVながらも安定性を向上させた。開発者は「C-HRはプリウスの登場から約1年を経過して発売されたので、プラットフォームや走りの熟成も進んでいる」と述べた。

 全長は4400mm以下だが、ホイールベースは2640mmと長く、カーブを曲がる時などに慣性による悪影響も受けにくい。全高は大半のグレードが1550mmに収まる。このボディ各部の数値も走りの向上に役立った。走行安定性を高めながら、乗り心地の粗さを抑えたことも、C-HRのメリットであった。

2016年ニュルブルクリンク24時間レースに参戦したトヨタC-HR。ニュルを舞台にした「極限でのテスト」をノーマル+αの仕様でみごとに走り切った

 サスペンションは、2WD、4WDともに、前輪はストラット、後輪はダブルウィッシュボーンの4輪独立懸架だ。発売時点では、ショックアブソーバーにザックス製を使い、欧州車の運転感覚を連想させた。

 開発者に経緯を尋ねると、以下のように返答された。「ザックス製はグローバルに採用されている。このブランドを選んだ理由は、サプライヤーの立地条件や供給体制によるところが大きいが、結果的に優れた足回りに仕上がった」。

■趣味性の強いC-HRは一気に売れて一気に急落

 C-HRの走りのよさは、足回りの滑らかな動きにあったので、販売店の試乗でも確認できた。そのために適度なボディサイズで、上質な運転感覚と4名乗車の可能な居住空間が欲しい場合、C-HRはちょうどいい選択肢になった。

 それなのにC-HRの需要は急落していく。2017年1~6月には、1カ月平均で1万3217台を登録したが、2018年は6396台に半減している。2019年は4640台、2020年はコロナ禍の影響も受けて2806台だ。2021年は前述の1508台であった。

 C-HRの売れゆきが下がった一番の理由は、趣味性の強さに押されて売れゆきを一気に伸ばし、短期間で欲しいユーザーに行き渡ったことだ。しかもC-HRはインパクトの強い外観を重視して開発されたから、SUVらしさとか、SUVの実用性は乏しい。後席や荷室の広さ、車内の使いやすさを重視するファミリーを中心としたユーザーには選ばれにくく、販売面で災いした。

■先代ヴェゼルは地味に淡々と売れ続けた

 この経緯は、C-HRの販売動向を先代ヴェゼルと比べるとわかりやすい。先代ヴェゼルは2013年に発売され、2017年と2018年の売れゆきは、新発売されたC-HRを大幅に下回った。この販売順位が2019年には逆転して、設計の古い先代ヴェゼルがC-HRを上回っている。

 先代ヴェゼルは、後席と荷室の広い実用型のコンパクトSUVだから、雰囲気は地味だが淡々と売れ続けた。目立ち度で勝負するC-HRは、持久戦に持ち込まれると弱味が露呈した形となった。

2013年に発売が開始されたホンダの先代型ヴェゼル。デザインはC-HRに比べると地味に見えるが、新型はさらにシンプルを追求したデザインになり、好調に売れている

 また2019年には、価格帯は異なるものの、同じトヨタから現行RAV4が登場した。その年末にはコンパクトSUVのライズも加わっている。2020年にはヤリスクロスの投入もあり、C-HRは身内となるトヨタのSUVに需要を奪われた面もある。

■改良を重ねたC-HRにはほかの車種にはない魅力がある

2019年10月にマイナーチェンジしたトヨタ『C-HR』。デザインをよりスタイリッシュに変更、さらに「GR SPORT」を新設定するとともに、1.2Lターボ車(FF)に6速iMT(インテリジェントマニュアルトランスミッション)車を追加した

2019年10月にマイナーチェンジで追加された「GR SPORT」。19インチタイヤと足回りの専用チューニングでGRの走りを追求したモデル

2020年6月に発売された特別仕様車 G「モード・ネロ・セーフティ・プラス」。トヨタセーフティセンスのアップグレードと共に、Fスポイラーやアルミホイールなどに特別なブラック塗装を施し、内装もブラック基調にしたクールな仕様

 特にカローラクロスは、適度なボディサイズで、C-HRよりも後席と荷室が広い。C-HRの欠点とされる後方視界も優れているので、多くのユーザーにとってカローラクロスのほうが選びやすい。

 C-HRの人気動向について販売店に尋ねると、以下のように返答された。「C-HRが発売された時は、トヨタのSUVは車種がかぎられていたが、その後に新型車が続々と登場した。車内の広さを求めるお客様には、価格は少し高いがRAV4がある。価格の安さなら、ライズやヤリスクロスという具合だ。C-HRの需要は、今ではほかの車種に分散して吸収されている」。

 もっとも、C-HRも改良を重ねている。価格も割安で、C-HRハイブリッドSの2WDは274万5000円だから、カローラクロスハイブリッドSの275万円とほぼ同額だ。カローラクロスの2WDは、リアサスペンションが車軸式のトーションビームだが、C-HRは独立式のダブルウイッシュボーンになる。

 ディスプレイオーディオのサイズも、カローラクロスは7インチだが、C-HRは8インチだ。サイズと価格が適度で、なおかつ目立つクルマが欲しい場合、C-HRは今でも候補に入るクルマとなっている。

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29件
  • 反ブサイクプリウスの受け皿として売れたがもう役目は終了かな
  • 独身で若かったら今でも買うが、残念ながら年寄りになってしまった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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