かつてバカ売れしたホンダ シティが東南アジアで今、超絶支持されているのだ。 しかも乗るとめっちゃイイ!! 新型アコード日本に入れるならシティのほうがよくない!?
文:永田恵一/写真:永田恵一・ホンダ
アコードじゃなくてシティを日本に!! コスパも仕上がりも日本に超ピッタリだった
■カブリオレもあった!! 初代大ヒットも2代で国内撤退したシティの歴史
モデル途中でカブリオレを追加するなど、今となってみれば超うらやましいラインアップであった
私事になるが、昨年12月にタイに10日ほど滞在した。この滞在ではタイ国内で片道約500kmの移動をすべくレンタカーを利用。今回借りたのが、日本未発売のホンダ シティというセダンであった。今までノーマークだったのだが、イメージよりもずっと好印象だったのだ。
ホンダ シティは日本でも二世代に渡って販売されていたモデル。1981年登場の初代モデルが全高1470mmと、当時としては異様に全高の高いコンパクトカーだった。
全高を生かした街乗りでの便利さ、老若男女や収入などに関係なく多くの人が欲しがるクラスレスなキャラクター。スポーツモデルのターボやカブリオレといった豊富なバリエーションなどを理由に大ヒットを記録したのだ。
対照的に1986年登場の2代目モデルは初代モデルとは180度違うワイド&ローなコンパクトカーとなり、普遍性が薄れたこともあり販売は振るわず、ロゴを後継車に絶版となった。
■東南アジアで今も現役!! 令和のシティは車格アップでデキもイイ
デザインは現行シビックに似たイメージ。フィットベースながら質感はシビック級と永田氏
しかし、シティはタイなどの新興国向けのセダンとして今も現役。ベース車を6代目シビックや歴代フィット(日本では初代フィットベースのフィットアリア、3代目フィットベースのグレイス)としながら継続されているのだ。
2019年登場の現行シティもフィットベースだが、車格は上がった印象。というのも現在タイではフィット(タイでの車名はジャズ)は販売されておらず、現行モデルから5ドアハッチバックが加わったシティが実質的な後継車となっているのだ。
その理由はタイを含めたアジア圏の新興国では「その車格のなかで極力サイズの大きいクルマが好まれる」という傾向があるようで、シティのポジションは「フィットベースの極力大きいクルマ」といったところだ。
それが特に明確なのが現行シティの5ドアハッチバックで、全長4345mm×全幅1748mm×全高1488mm(セダンは全長4553mm×全幅1748mm×全高1467mm)と、ボディサイズだけ見ると「シビック級のCセグメント?」とも感じる。しかし、実際の車格はフィットとシビックの中間というイメージであった。
■ハイブリッドとターボで勝負!! 価格も200万円台前半ってのもイイ
「1リッターターボということを忘れてしまうほどパワフルだった」とコメント。日本市場導入に期待!!
タイで販売される現行シティにはセダン、ハッチバックともに3気筒1リッターターボ(122馬力&17.6kgm)+CVTと、1.5リッター4気筒NA+2モーターシリーズハイブリットとなるe:HEVという2つのパワートレーンが搭載される。
後者は日本のフィットなどに搭載されるものに近いが、前者は1.5リッター4気筒NAの代替となる存在だ。
グレード体系はスポーティなRSをトップに、1リッター3気筒ターボには3グレードが設定され(セダンで57万9500バーツ、約229万7000円から)、10日間をともにしたレンタカーは中間となるVグレード(60万9000バーツ、約241万4000円)だったようだ。
なお、レンタカーで乗ったシティのコンディションは受け取った時点で走行2000km台と、良好だった。
■ホンダファン垂涎のVTEC! 1リッターターボで高速だって文句ナシ
セダン・ハッチバックともにRSグレードもラインアップ!! エンジンなど走行に関する部分は同じながら内外装に特別な装備を採用
まずシティを運転する前に妙に印象的だったのは、リアに着く「VTEC TURBO」のエンブレム。筆者ははじめ1リッターターボということがまったく頭になかったため「このレンタカー、エンブレムチューンしてるのか?」と、本気で思ってしまったほど。その後1リッターターボの存在を思い出し、シティに関心を持ち始めたわけだが。
一番気になるエンジンはターボということで「発進時のレスポンスがイマイチ」という同行者もいたが、筆者は乗っている時間が長かったのもあり、乗っているうちに気にならなくなった。むしろ、乗っているうちに「普通に乗っていると中低速トルクの太い1.6リッターくらいのNAエンジン」と感じるようになったくらいだ。
振動やエンジン音も、アイドリングで振動を感じることもなく、3気筒らしいエンジン音も「4000回転以上だと分かる」という程度によく抑えられており、普通に乗っていると3気筒という点を意識することは皆無だった。
絶対的な動力性能も、タイは郊外などでは制限速度が120km/hと流れが速く、加速力を要求されることも多々ある。それでも3人乗車+荷物満載というシーンにおいてもトルクの太さもあり、「車格の割に速い」と感じるほどの動力性能を備えていた。
燃費も郊外の道を流れに乗って20km/L(アクセルを深く踏むと相応に落ちるが)、バンコク市内で13km/Lと、このクラスの純エンジン車としては及第点以上だった。
1リッターターボの印象をまとめると「日本のフィットなども、1.5リッターエンジン車は最近フィットに加わったRSも含めこの1リッターターボにした方いいのではないか」と思うくらい、好印象だった。
■セダンの良さがわかる仕上がり!! 快適性も静粛性もお見事
ご覧の通りに荷物満載でも十二分な走行性能!! それでいて静粛性も高かったという
筆者のように自動車メディアで仕事をしていても車種の減少によりセダンにジックリ乗ることは減っているが、今回セダンのよさを再認識した次第。
具体的には、セダンはそもそも全長が長いのもあるにせよ、写真の通りラゲッジスペースの広さ(ヒンジの形状で容量すべては使えなかったこと、トランクスルーがなかったという盲点もあったが)、ボディ剛性の確保のしやすさによる静粛性をはじめとした快適性の高さなどが挙げられる。
このことを思うと、クルマ自体の魅力が大前提にせよ、セダンが絶滅寸前の日本車においてももう少しセダンが見直されてもいいように強く感じた。
■アコードよりもシティが……東南アジアの人気車種が上陸する可能性大
現在の日本でボディサイズと価格が手ごろなセダンは、スバルインプレッサG4の絶版もあり、カローラアクシオとカローラセダンというカローラファミリーだけである。
この点を考えると、シティは適価であれば日本導入を検討する価値はあるのではないだろうか。
また、ホンダでは北米で発表済みの新型アコードを日本に導入する予定だが、期待できる販売台数などを考えてもアコードよりシティの方が戦力は強いように感じる。
組織再編で新興国向けのモデルが日本上陸の可能性も!! 期待したいのはコンパクトSUVのBR-Vだ
と筆者が感じているなか、1月24日に4月1日からホンダにおいてこれまで北米、中国、日本、アジア&太平洋、欧州&アフリカの6つに分かれていた地域本部という組織が、北米、中国、2つ以外の4つを統合とする3つに再編成されるというニュースがあった。
この再編成により生産国などはともかくとして、今後アジア向けのホンダ車が日本に導入されることも考えられる。それだけに「日本に導入して欲しいアジア専売車」といった自動車メディアの企画でよく名前が挙がるミニバン寄りのSUVとなるBR-Vなどと一緒に、シティの日本導入も期待できるかもしれない。
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