トレンドよりもアドバンレーシングらしく、ワンランク上を目指す姿勢も忘れない
古くは1980年代の国産スポーツカーユーザーに始まり、今やヨーロッパの本格スポーツカーユーザーにまで支持される「横浜ゴム」の『アドバンレーシング』。持ち味の高性能さと、デザインのスタイリッシュさとの好バランスは、創設から現在まで受け継がれるホイールブランドだ。
そんなアドバンレーシングを、90年代からけん引してきた一人が萩原 修サン。当初はレーシングドライバーとして活躍しながら、アドバンレーシングのホイールデザインを担当し、現在は、ヨコハマホイール全体のデザインやコンセプトメイクのキーパーソンとなっている。
「今は、年に2本くらい新しいホイールをデザインして、あとは既存モデルの追加サイズを新設定していくという流れですね。この『アドバンレーシング TC-4』は2018年のオートサロンで発表した新作で、”TCIII”の後継モデルです。ホイールをデザインする時、トレンドはそれほど気にしてはいません。きちっとアドバンレーシングらしさを入れながら、ホイールとしてバージョンアップするようなつもりでデザインしていますね」。
『TC-4』は、スポークをリムエンドまで伸ばしたモダンなフルフェイスデザイン。スポークの立ち上がりをダイナミックに湾曲させて、人気ホイールのアドバンレーシングGTに通じる、ダイナミックな5スポークに仕上げている。
じつは「ヨコハマホイール」は自社生産施設を持たない。ホイールのデザイン・設計までを行ない、製作はアウトソーシングしている。そうすれば、工場維持のために大量に売れるようなホイールを作る必要がなくなるから、デザインにこだわったホイールを必要なだけ作るという、ヨコハマホイールの生産スタイルが成立するのだ。
モデルのラインアップからも分かるように、アドバンレーシングは、金型による生産に並々ならぬこだわりを持っている。特にキャスト(鋳造)モデルのディテールを攻めたデザインは、ブランドならではの特徴。リムの深さからビッグキャリパーへの対応まで、ディスクのデザイン要素に取り込む細かさで、サイズバリエーションを用意しているのだ。
「金型でホイールを作る最大のメリットは、サイズバリエーションを細かく設定できること。玄人受けするようなサイズも入れるようにしているんですけど、それは、決してマニア御用達を狙ってるわけではないんです。むしろ、ユーザーさんのホイールセッティングのステップアップにつながるサイズだって、ボクは考えているんですよ」。
その例として分かりやすいのが、萩原サンが日常の足にしているというアバルト595コンペティツィオーネだ。『アドバンレーシング RG-D2』の7.5J×17インチを装着しているが、車高がほどよく下がり、リアホイールには僅かにキャンバーがつけられている。
7.5J×17インチには、インセット30と35の2種類が用意されていて、実はセンターディスクもそれぞれ専用のデザイン。装着サイズのインセット30は、スポークのコンケーブを35の方より深くしてあり、より力強いルックスを際立たせている。車高を下げて僅かにキャンバーをつけて装着すると、もっともかっこよく見えるようにデザインした、と萩原サンはいう。
「自分としては、この世界にドップリと漬かった人間として、そういう人間が欲しいものを作っているつもりです。常に自分がユーザー目線であり続けるために、自分で色々なクルマを買って、乗り続けているんですよ(笑)」。
現在、萩原サンの所有している輸入車は、アバルト595に加え、ポルシェ991型911GT3、981型ボクスターSの3台。それぞれのクルマに、自分がベストと思うサイズのアドバンレーシングを装着している。
「今のユーザーさんって、気に入ったホイールを見つけたら、サイズを選んで着けてもらってそれで終わりって人が多いですよね。でも、いいデザインを選んでも、ただ着けただけでは、まだ終わりじゃないんです。ツライチ、シャコタン、キャンバーは、カッコいいホイール装着の要素だとボクは思っています。そういうところで、ギリギリ”不良”というか、ちょっとだけ不良なところを見せるって、カッコいいじゃないですか」。
しっかり走れて、見てもキレイに収めてあるホイールが理想なのだと萩原サン。注目している輸入車をうかがったら、デザイン的に一番先を行っているからメルセデスだとのこと。それでは、と新作についてうかがってみた。
「もちろん、来年のオートサロンに出品するホイールも、すでに手がけていますよ。まだ情報はお知らせできませんけど(笑)」。
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