昭和は遠くなりにけり・・・か。以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は「日産 パルサー(3代目)」だ。
日産 パルサー ミラノX1ツインカム(N13型):昭和61年(1986年)5月発売
「パルサー・ヨーロッパ」のキャッチを掲げ、欧州市場を見据えて開発されたパルサーは、初代/2代目とも軽快な走行性能を武器に着実に認知度を高め、3代目に替わる直前の1986年(昭和61年)3月末には、輸出累計130万台中、約70万台が欧州向けという実績を残している。
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しかし前身のチェリーから引き継いだイシゴニス式(二階建て)FF機構やトレーリングアーム式リアサスペンションなどメカの旧態化が目立ち始めたのも事実。そのため3代目はこれを一新する形で開発され、X1ツインカムを頂点に置く3ドアHB(ハッチバック)は、キャッチも「ツインカム・ヨーロッパ」に変わった。
1986年5月、3代目となったN13型パルサーは、日産の伝家の宝刀とも言うべきターボエンジンを設定せず、最強バージョンのX1ツインカム用に4バルブDOHCのCA16DE型を新開発。7000rpmまで一気に吹け上がる切れの良さと、ロングストロークによる実用域でのリニアなトルク特性と同時に、日産小型FF車初のDOHCユニットとしても注目されている。
CA16DE型はCA16(S)型をベースに、ベルト駆動のDOHCヘッドを架装したもの。4バルブ化でバルブ開口面積はCA16より50%拡大し、NICS(ニッサン インダクション コントロールシステム)の採用もあって吸入効率の大幅向上を実現。さらに、ペントルーフ型燃焼室や、ボアセンター配置の白金電極点火プラグ、NDIS(ニッサン ダイレクト イグニッションシステム)の採用などにより優れた燃焼効率も実現した。また、高回転域でのバルブ追従性を高めるため、直動式ハイドロリックバルブリフターを採用するなど、新開発エンジンらしい意欲的な設計が自慢だ。
X1ツインカムのトランスミッションはクロスレシオの5速MTのみ。駆動方式は先代同様FFだが、エンジンとトランスアクスルを直線上に配したジアコーサ式に一新された。サスペンションもリアをラジアスロッド一体型スタビライザー付きパラレルリンク式ストラットに一新している。サスストロークを確保してトー変化を抑え、コンプライアンスステア、ロールステアともに弱アンダーステア特性を実現した。ブレーキもシリーズで唯一、前ベンチレーテッドの4輪ディスクが設定され、高速からの安定した制動力を確保している。
「スポーティ&クオリティ・ソリッドフォルム」をスタイリングコンセプトとしたパルサーは、3ドアHBをスタイリングの基本とし、そこから5ドアHBと4ドアセダンを派生させた。ロングキャビンの台形フォルム、プランビュー(真上から見た平面図)におけるボディサイド前後の絞込みにより安定感を実現。大型カラードエアロバンパー、クリアランスランプを内蔵した薄型の異型2灯式ハロゲンヘッドランプに加え、X1系にはエアロパーツのセット装着車が設定され、ホットハッチらしいフォルムを作り出している。
内装は、包み込むようなラウンド感とスポーティ感を融合させた「ラウンディッシュ インテリア」がテーマだ。ソフトパッドを貼った曲面形状のインパネ、広いガラス面積がもたらす開放感、欧州輸出仕様のヨーロピアンシート(X1系)などで、スポーティな走りを演出している。
とくにシートはドライビングポジションのフィット性を高めるため、リクライニング機構を細かい調整が効くダイヤル式にし、パッド硬度を高めに設定して支持力を上げるなど、欧州の長距離高速移動でも十分通用する高機能が与えられ、日本車離れした座り心地で高い評価を得ている。6:4分割可倒式リアシートバックを採用したラゲッジスペースは定員乗車時で231L、2名乗車時なら438Lで、これも「世界的に十分通用する大容量」と謳った。
パルサー ミラノX1ツインカムは、カローラFX-GT/シビックSi/ファミリア スポルト16と並ぶ、1.6LのFF 2BOXスポーツとして、ホットハッチファンから熱い視線を浴びた。
日産 パルサー 3ドアHB ミラノX1ツインカム 主要諸元
●全長×全幅×全高:4030×1640×1380mm
●ホイールベース:2430mm
●重量:1020kg
●エンジン型式・種類:CA16DE型・直4 DOHC
●排気量:1598cc
●最高出力:120ps/6400rpm(ネット)
●最大トルク:14.0kgm/5200rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:185/60R14
●価格:142万2000円
[ アルバム : 日産 パルサー ミラノX1ツインカム はオリジナルサイトでご覧ください ]
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