【スバル BRZ】MT車に待望の「アイサイト」を導入。衝突被害軽減ブレーキで安全性がアップ

新車試乗レポート [2023.06.20 UP]


【スバル BRZ】MT車に待望の「アイサイト」を導入。衝突被害軽減ブレーキで安全性がアップ
文●大音安弘　写真●スバル

　スバルは、2023年6月20日、今秋発売予定のスバル BRZの改良型モデルに、スバル初となるマニュアルトランスミッション（MT）車向け「アイサイト」を採用することを発表した。


アイサイトカメラ
　スバル独自のステレオカメラによる先進の安全運転支援機能である「アイサイト」は、現実的な価格と優れた性能から、多くのユーザーに選ばれ、現在ではスバル車の象徴のひとつにもなっている。最新ラインアップでは、MT車のBRZを除き、全車標準となっており、MT向けアイサイトへの期待も大きかった。今回の発表は、すべてのスバル登録車でアイサイトが選べるようになるというビッグニュースだ。

　MT向けアイサイトの狙いは、スバルが目指す2030年死亡交通事故ゼロの目標に向けてのもの。プレゼンテーションを行った商品企画部のプロジェクトマネージャー小林正明氏は「最新スバル車の総合安全技術の進歩により、死亡重傷事故数は年々減少してはいる。しかし、より高い目標である死亡交通事故ゼロとする未来の実現には、車種や国を問わずできることから、順次、先進安全技術を投入していくことが重要」とし、BRZのアイサイト搭載拡大も、スバルの目指す安全なクルマ社会実現への大切な歩み出ることを示した。

　MT向けアイサイトに備わる機能は、「プリクラシュブレーキ（衝突被害軽減ブレーキ）」、「追従機能付クルーズコントロール（ACC）」、「車線逸脱・ふらつき警報機能」、「先行車発進お知らせ機能」、「後方ソナー警報機能（クリアランスソナー内蔵）」の5点となる。システムは、先行搭載されるスバル BRZオートマチック（AT）用アイサイトをベースとしている。開発時のこだわりポイントは、AT車と同等の機能を実現しつつ、MT車でも違和感のない動作のアイサイトだという。その特徴が反映される衝突回避や被害軽減を図る「プリクラッシュブレーキ」と長距離運転の疲労軽減に繋がる「追従機能付クルーズコントロール」について紹介する。


プリクラッシュブレーキの動作イメージ
　プリクラッシュブレーキでは、ATモデルと同様の衝突被害軽減機能を備える。MT車向け仕様の特徴は、クラッチの状態やシフトポジションに関わらず、自動ブレーキが作動。さらにブレーキ制御中はエンストしても、ブレーキが完全停止まで行うことだ。通常、MT車でブレーキをかけ続けると、クラッチを切らないとエンジンストール（エンジン停止）が起きる。そうなれば、ブレーキの油圧が低下し、ブレーキの効きが弱くなってしまう。しかし、システムの制御によりエンストが起きても、ブレーキの油圧を低下させないようにすることで、完全停止を実現しているのだ。通常走行時はもちろんだが、ACC作動時やクラッチが切れた状態、シフトポジションがニュートラルでも、自動ブレーキが作動する。作動条件は、1km／h以上での走行時だ。ただし、ギアがニュートラルやクラッチが繋がっていない状態（空走時）は、8km／h以上となる。注意点は、作動によるエンジンストールが発生した場合は、徐々にブレーキ圧が抜けてしまうので、一定時間でブレーキが解除されること。停車状態を保持するならば、ドライバーによるブレーキ操作が必要となる。またサーキット走行など、意図的にプリクラッシュブレーキ機能をOFFにしても、エンジン再始動後は、自動的にプリクラッシュブレーキ機能が復帰する。


クリアランスソナーのイメージ
　AT車には、後退時ブレーキアシスト（RAB）が備わるが、MT車には非採用となる。その理由は、万が一、踏切内などで自動ブレーキが誤作動した場合、後退で脱出しようとしても、自動ブレーキを瞬時に解除できず、立ち往生する可能性があるためとする。ただし、後方の障害物を知らせるクリアランスソナーは備わり、障害物の存在を知らせてくれるので、衝突リスクを低減させることはできる。また前後のAT誤発進抑制制御についても、クラッチ操作が必要なMT車では非搭載としている。


追従機能付きクルーズコントロール（ACC）追従イメージ
　追従機能付きクルーズコントロールは、先行車両との間隔を維持しながら、追従走行を行うことで、ドライバーの疲労軽減を図る機能とセット操作については、AT車と同様。ただし、作動条件が異なり、シフトが2速～6速のいずれかであることと、車速が30km／h以上で走行中であることの両方を満たす際にセットできる。機能がキャンセルとなるのは、25km／h以下になった場合や、シフトがニュートラルもしくはクラッチが切れた状態が5秒以上続いた場合だ。もちろん、キャンセル後は、ドライバーが操作を行う必要がある。快適な動作を実現すべく、システムのチューニングもMT車専用に。例えば、巡行中に速度が低下しても、25km／hまでは制御が継続されるのは、6速ギアでもエンジンストールを起こさない速度であるため。またクラッチ踏んでいる時間が5秒以内であれば、自由なギアチェンジが可能。変速時は、加速を止め、エンジン回転の吹け上がりを防止するが、クラッチが繋がると、即座に加速を再開し、違和感のない走りを実現しているという。車間距離にも配慮があり、速度が低下し、追従機能付クルーズコントロールがキャンセルされた際は、ドライバーが運転を引き継ぐが、余裕を持って対応できるように、AT車のシステムよりも、低速時の車間距離を少し長めにしているそうだ。


株式会社SUBARU／商品企画本部／プロジェクトゼネラルマネージャー 小林正明氏
　BRZの開発を指揮する小林氏は、「旅先での自由なドライブを楽しめるスポーツモデルであればこそ、目的地までの旅は快適にお過ごしいただきたい。長時間の操作に負担があるMTモデルだからこそ、プリクラッシュブレーキや追従機能付クルーズコントロールの効果が高いともいえる」と、MTへのアイサイト拡大への意義を語る。

　新型BRZ発売時から、将来の法規対応を見据え、MTモデルへのアイサイト投入の話題は挙がっていたため、アイサイト付きMTのBRZを待ち望んでいたファンも多いだろう。その登場は、今秋とされている。今回の改良では、スポーツ性能の強化も図られるというから、そちらも気になるところ。現時点では、改良型BRZのラインアップや価格については非公表。MTアイサイトが標準かオプションなのか、そして、非装着車が用意されるのか。詳細については明かされていない。いずれにしろ、アイサイトの魅力のひとつである、お手頃な価格を願うが、その点は心配いらないはずだ。

Comments

3ペダル用緊急自動ブレーキなんか他所では散々ガイシュツなのになぁ（白目

チワワ！出番だよ😃