アロー・マクラーレンのスペシャルアドバイザーを務めるトニー・カナーンは、わずか数戦でインディカーのシート失うことになったテオ・プルシェールについて、彼がなにか悪いことをしたわけではないと説明した。
プルシェールは今季、TEAM IMPULと契約してスーパーフォーミュラの開幕戦を走ったが、負傷したデビッド・マルーカスの代役としてインディカーに出場し、印象的な走りを披露。その後アロー・マクラーレンと今季残りのレース(インディ500を除く)を走る契約を交わし、6号車のドライバーとなった。それに伴い、TEAM IMPULを離脱することになった。
■テオ・プルシェール、わずか数戦でインディカーのシート失う。アロー・マクラーレンがノーラン・シーゲルと複数年契約
しかし第8戦ラグナセカを前に、マクラーレンはノーラン・シーゲルと複数年契約を締結したことを発表。今後6号車のドライバーとして起用していくことを明らかにした。
結果として、プルシェールは開幕戦とインディ500を除く5レースを戦っただけで、アロー・マクラーレンのシートを失うことに。2023年のF2王者であるプルシェールだが、一気にキャリアの先行きが不透明となってしまった。
アロー・マクラーレンのチーム代表ギャビン・ワードとスペシャルアドバイザーのカナーンは一部メディアとの電話会見で、プルシェールはシートを失うような悪いことは何もしていないと説明。それよりも先週末のル・マン24時間レースでLMP2クラス優勝を果たし、インディカーの関係者が高く評価している19歳の有望株、シーゲルの獲得する方が重要だったと繰り返し主張した。
「彼は何も悪いことはしていない」とカナーンは語った。
「ただ、そういう状況だった。そう判断せざるを得なかった」
「彼個人が原因ではないし、彼のパフォーマンスのせいではない。彼は自分にできることをやってきた」
「もちろん彼は満足していなかったが、理解していたよ」
ウォード代表は、この決断のタイミングについて、先週末のル・マン24時間レースでユナイテッド・オートスポーツ22号車に乗り、LMP2クラスを制したシーゲルを逃さないためだったと説明した。
マクラーレン・レーシングのザク・ブラウンCEOがオーナーのチームであったことも、その判断を後押ししたのかもしれない。
シーゲルは今季、インディNXTに参戦しつつ、デイル・コイン・レーシング、フンコス・ホリンジャー・レーシングからインディカーにもスポット参戦している。
「言うまでもなく、我々は以前テオが今年の残りのレースを戦うと発表した。それはその時に使える選択肢だったんだ」
「ノーランはインディーカーと北米のレース・シーンにおいて、新進気鋭の有望株である。彼に注目していなかったかと言えば嘘になる」
「テオをマシンに乗せた時点で、ノーランはインディNXTのシーズンに専念しており、日程の衝突やデイル・コインとのプログラムもあって、フルシーズンを走るのは望めそうになかった」
「彼の成長と、彼がロード・アメリカでNXTから離れるという選択をしたことで、急きょこの話が持ち上がった」
「そして2025年へのコミットメントを検討する中で、論理的に行なうべきことが明らかになった。簡単な決断ではなかった……理屈では明白だが、感情的には簡単ではなかった」
「できるだけ早く彼をマシンに乗せ、来年につなげたいんだ」
前述のように、プルシェールは開幕戦とインディ500を走っていないにも関わらず、ランキングは21番手。ルーキー・オブ・ザ・イヤーの有力候補であるリヌス・ルンドクヴィスト(18番手)との差はわずか25ポイントだ。
マクラーレンは来季パトリシオ・オワードとシーゲルの起用を決定し、3つのシートのうちふたつが埋まった形。だが7号車に乗っているアレクサンダー・ロッシの去就はまだ決まっていない。
プルシェールを来季起用する可能性は検討されていないのかと聞かれたウォード代表は、次のように答えた。
「いや、それはないと思う。この交代劇の本当の目的は、チームが必要としている安定性を求めることだ」
「うまくいけばメリーゴーランドを止めることができる。率直に言って6号車のシートをどのように埋めるか、反射的ではなく、積極的な判断を下すための初めての機会が生まれた」
「これは急な反応ではない。戦略的なことなんだ」
「2025年に向けたコミットメントが一旦整理されたなら、それに向かって最善の準備をするために、ノーランをすぐにマシンに乗せることは非常に論理的な判断だ」
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