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13年間進化を続ける、国産ナンバー1スポーツ

掲載 更新 7
13年間進化を続ける、国産ナンバー1スポーツ

登場から13年、いまだに進化を続けているGT-Rは国産ナンバー1のスポーツモデルであり続けている。ほとんど尊敬の念を抱きつつ、最新の最強というべきGT-Rニスモに乗り込んで、“13年前のGT-Rオーナー”は京都を目指す。

Rei.Hashimoto国産ナンバー1のスポーツモデルであり続ける

電動化しようとも息づくレースのDNA

今から13年も前のこと。私は雨のぱらつき始めたアウトバーンでとある新型車をかっ飛ばしていた。隣には同業のナベ(渡辺敏文)さんが仏の笑顔で座っている。いつものように“あーでもないこうでもない”と飽きもせずクルマの話だけをしつつ、アウトバーンまでやってきたのだった。

「ちょっと踏んで見てもええかな」。私は一方的にそう断って追い越し車線に移るとためらうことなくアクセルペダルを踏み込んだ。

それまでの国産車とはまるで次元の違う加速に、臓物が体の中で浮きあがったかのようだった。ポルシェターボを初めて経験した時よりも衝撃的な加速。しかもまるで恐怖感がなく、それゆえ恐れから右足を緩めるということがない。あっという間に200km/hを超え、通過点とばかりに250km/hに達し、そしていよいよ大台が見えてきたという時に、隣から悲鳴にも似た懇願が聞こえてきた。「もうその辺でやめといてください!」。仏の笑顔が鬼の形相になっていた。滅多にないことだ。

Rei.Hashimoto雨が降っていたのを忘れていたのだった。そう言えばワイパーもまともに動いていなかった(後からそのことを当時のエンジニアに自慢げに話すと危ない! と叱られた)。加速中はただ無心に前を見つめ、何も聞こえてはこず、ほとんど忘我の境地だったのかも知れない。瞑想加速。その時、発売されたら絶対にすぐ買うと決めた。

07年12月。発売と同時に納車された私の日産GT-Rは真っ赤な個体だった。あれからちょうど13年が経って、GT-Rはいまだに進化を続けている。国産ナンバー1のスポーツモデルであり続けている。世界の第一級レベルで戦い続けている。私はただ歳と体重を重ね、その分だけ性能も落ちつつあるというのに。

ほとんど尊敬の念を抱きつつ、最新の最強というべきGT-Rニスモに乗り込んで京都を目指した。

Rei.Hashimoto濃密に感じられる最新モデルたちが失った気配

ノーマルのGT-Rよりも、アシが3倍も硬い。けれども不思議と乗り心地が悪いとは思えない。もちろんソリッドな感覚はビシバシと伝わってくる。まるで分厚い鉄板床もろとも組み込んだジャングルジムの中に座らされて動く気分だったが、不愉快ではないのだ。自由に動いてくれる前足とともに、私が買った初期のGT-Rにはまるでなかったキャラクターである。

面白いことがあった。京都に着いてから友人3人を乗せて移動する必要に迫られた。後席が狭いこともさることながら、とはいえ流石に乗り心地はダメだろうと恐縮することしきり、だったのだが、後ろの2人が口を揃えて「乗り心地がいい」というのでたまげた。これもまた以前のR35にはなかったことだ。

Rei.Hashimoto話を出発点まで戻そう。いつものように首都高から東名へと向かう。地面が近く感じられ、路面の継ぎ目を正確に拾っていくが、ボディは硬く、足は軽く、ショックは柔軟だから、身体への不快な影響はない。硬いなぁ、とは思うものの、嫌ではない。

ここまでボディが強くできているなら、それゆえアシの動かし方次第で動的キャラクターを変えることができるなら、やっぱり可変ダンパーが欲しくなるのがクルマ運転好きの人情ってものだが、そこは無い物ねだりというわけで、日産はその回答としてニスモとスタンダードを用意しているのだった。

それにしても、法定速度で巡航するようなレンジでも、このクルマにはある種の懐かしさ、それは自分が乗っていたからとかそういうものではなく、最新モデルが失った気配を濃密に感じることができる。エンジンそのものの精緻なメカニカルサウンド、大きく空気を吸い込み吐き出す音、ターボの音、ずっと何か性能を支える音が聞こえてくる。それがまず、楽しい。

デュアルクラッチミッションは6速、しかない。もう1つ2つ欲しいところだ。あれば燃費も少しは良くなるだろうし、何より、巡航時の回転数が下がって結果的にドライブもラクになる。長距離ドライブの場合、エンジン回転数が低く収まってくれていればいるほどに身体的にはラクなのだった。

途中で大雨に見舞われる。流石に浅溝の極太タイヤでは神経を使う。特に前足が落ち着かない。ドキドキしながらのドライブで、逆に感心したのはカーボンルーフだ。静かである。カーボンパネルで屋根を単に軽くしたというだけでは気が済まず(この手の高性能モデルではよくある話だからだ)、吸音材がサンドされているという。面白い。

Rei.Hashimoto路面にへばりつきながら、左右へも滑るように動く

ここだけの話、ニスモのドライブフィールがスタンダードと圧倒的に異なってくるのは高速域である。新東名の120km/h区間でもそれを感じることは辛うじて可能だけれども、明確になるのは130km/hを超えてからだ。とてつもない接地感を味わうことができる。路面にへばりつきながら進み、なお、左右へも滑るように動く。この感覚はスタンダードには残念ながらない。もう少し、普通のクルマっぽいのだ、アチラは。

空気をきれいに切って走る感覚もニスモに独特だ。こんな無骨な形をしているにも関わらず、上手に空気の壁をすりぬけていく。このエアロダイナミクスを経験するためだけにニスモを買っていいとさえ思った。

もうひとつ、ニスモの魅力はブレーキだ。これはもう絶対制動力というべき境地で、そもそもスタンダードのGT-Rであっても、車体のすべてを使ってどこでもいかようにでも停まってみせるぞ! という自信に満ち溢れているのだけれど、それに輪をかけて素晴らしい。停まれないことなどない、と思えるほどによく効く。それゆえ、ドライブは一層ラクになる。

Rei.Hashimotoラクといえば、GT-Rに限って重さは武器だ。軽々しくないから、安心して身体を委ねていられる。ある程度の重量感を伴ったままに路面を拭くようにして走るから、気持ちもいい。この感覚もまたニスモで強調されているのだった。

あっという間に、本当にあっけなく、450kmを走り切った。ホームワインディングにも出かけたが、相変わらず、そこでは最速の1台のままだ。以前のニスモを上書きしただけだったけれど。

一つ変わったところはドライブモードで、オートマチック変速を選び、Rモードで走ると、これがよくできていて愉快痛快だった。GT-Rを早く走らせるコツは高め高めのギアを選んで走ることなんだけれど、意識しすぎると忙しいことになる。機械任せにしておけば、ステアリングに集中することができる。実際、そうしなければならないほど、GT-Rニスモは速いマシンだ。

Rei.Hashimoto進化し続けるGT-R

しかし社会はそのさらなる存命を許してくれそうにない。CO2に加えてノイズの問題もあって、早晩、生産終了となる可能性が高い。持ってあと1年だろうか……。加えて次期型のウワサはまるで聞こえてこない。Zは早々にデザインコンセプトを発表したというのに。しかも、商品開発の責任者は同じ人物で。

なるほど、アチラは日産の言わば嫡流だ。GT-Rの起源はスカイラインだから、傍系というわけか。否、販売台数が違う、影響力が違うと言われてしまえばそれまでだけれども。

そろそろゴールが見えてきた。もう一度、乗っておきたい、なんて13年経っても思えること自体、奇跡の国産車ではあるまいか。

文・西川 淳 写真・橋本玲 編集・iconic

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みんなのコメント

7件
  • 湾岸ミッドナイトの中でR35が最後のGT-Rって言ってたけど、本当にそうなっちゃったね。
    次GT-Rが出ても純ガソリンエンジンのスポーツカーにはならないだろうからね。
  • 日産三菱は世間一般では評価良くないんだけど、こっち路線ではむしろ最強なんだよな。
    国産車でサーキット速いのはだいたいエボかGT-Rだからな。

    まぁそんな事、世間一般は興味ないけどな…残念。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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