この記事をまとめると
■話題の新型エクストレイルを公道で試乗
【試乗】タフギアのエクストレイルにe-POWERってアリ? と思ったらアリだった! 新型に乗ったらタフな上に上質までプラスして死角はほぼナシ
■質感が大幅に向上し、プレミアム感が漂っている
■肝となるVCターボエンジンは今後の日産をリードする技術になりそうだ
世界初の技術を搭載した話題のSUVを公道でチェック
日産は2030年までに15車種のBEVを含む23の新型モデルを投入するとしている。BEVのパイオニア「リーフ」を中心に、「アリア」「さくら」とラインアップの拡充に積極的だ。その一方で、「ノート」や「ノートオーラ」、あるいは「セレナ」などには、伝家の宝刀「e-POWER」を投入。BEVだけではなくハイブリッドにも力を注ぐ。今回エクストレイルに搭載したe-POWERは第二世代に進化した。日産電動化戦略の中心を担うのだと想像する。
エクストレイルでもっとも驚かされたのは、格段に質感を高めたことだ。その最大の功労が、世界初となる「VCターボエンジン」であることに疑いはない。VCターボは「可変圧縮比エンジン」と訳される。上下運動するピストンを押し上げるコンロッドにリンクを挟んだと考えていい。その角度を自在にコントロールすることで、最低の8から最高の14まで圧縮比をバリアブルに変化させるのだ。
低回転域では高圧縮比にして出力を稼ぐ。回転が上昇するに比例して圧縮比が下がるが、それによって不足したパワーをターボチャージャーの過給圧を引き上げることで補うのである。
メリットは多い。まずは燃費に優れていることだ。走行負荷によって自在に理想的な圧縮比にアジャストできるからである。ハイパワー化も自由が効く。ターボチャージャーとの相性がいい。実際にエクストレイルに搭載されるVCターボは、最高出力106Kw、最大トルク250Nmを発揮する。
まったく新しいパワーユニットはエクストレイルの性格にぴったり
e-POWERはシリーズ式のハイブリッドである。エンジンは駆動輪と直結しておらず、あくまでバッテリーに電力を補充する発電機としての機能に限定される。だから、そのエンジン出力のその数値が加速性能を表すものではないが、力強いトルクを得た効果で、低回転域で発電をしやすい。エンジン介入の頻度が少なくなり、しかも上までまわさずとも充電が可能になる。つまり、エンジンの存在が薄れたのだ。
回転フィールが上質なのも特徴だ。直列3気筒1.5リッターターボでありながら、V型6気筒のような滑らかな感覚である。2.5リッター級のトルクも得る。よって、直列3気筒のガサツな印象は霧散した。高級な雰囲気を讃えるのである。
そんなに素晴らしいエンジンだったら今後はスポーツカーに搭載も? と期待したくなるところだが、高回転化には不向きだそう。理由として、コンロッドに挟んだリンクを高回転で回転させるのは現状では難しいとのこと。確かに、スポーツカーでよく使用する域である6000rpm以上を常用するのは、構造上建設的ではないとも言える。という理由から想像できるのは、それ以下の回転域で常用するe-POWERや高価格帯のミニバンやVIPセダンなどへの採用だろう。
エクストレイルは2WDとAWDの駆動方式をラインアップするが、圧倒的に人気なのはAWDの「e-4ORCE」。レスポンスに優れた電気モーターの特徴を活かして、緻密な前後左右の駆動力を配分する。タイヤの限界が迫ってくるような旋回領域では、外輪の駆動力を増やしてヨーゲインを高める。それでも不足ならば、内輪にブレーキをかけて補正する。悪路踏破性だけではなく、オンロードでの素直なフットワークを実現している。
乗り心地はいい。PHEVほど大きなバッテリーを搭載しないから、ガソリン仕様からの重量増はわずかだ。走りの軽快感は薄れていない。多少の重みを感じるものの、そのウエイトを重厚感に置き換えることに成功している。しっとりとした走り味が心地いい。都会的SUVとしての資質を高めたといえる。
そもそも、ボディ剛性を高めることで静粛性を整えていながら、窓ガラスを厚くするなどの細工によって、外部からの騒音を遮断している。それでいて、VCターボは滑らかであり、ノイズはない。静かさでも大幅に進化しているのだ。
メーカーにとってSUVはドル箱市場である。浮沈を左右するジャンルだといっていい。そこに日産が投入したエクストレイルは、第二世代の「VCターボ+e-POWER」を武器に、ライバル迎撃体制を確立したといえる。
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