手頃なスーパーカーか、最強ホットハッチか
執筆:Matt Prior(マット・プライアー)
撮影:Max Edleston(マックス・エドレストン)
いや、聞かずともご意見ごもっとも。片や新車はホットハッチのトヨタGRヤリス、もう一方の中古車は2007年式のスーパーカーであるアウディR8だ。ここに並べた2台に共通点は見つけがたいとおっしゃるだろう。ドライバーのためのクルマ、という一点を除いては。
GRヤリスは4シーターで、R8は2シーター。一方はフロントエンジンで、もう一方はリアミドシップ。コンセプトも実用性もパッケージングもまったく別物で、そのマーケットも異なる。コンパクトカーからスーパーカーマで、自動車のカテゴリーはじつに多様だということを示すような対比だ。ところが14年の時を隔てたこの2台、いまや同じような価格で手に入る。
R8は、じつに得がたいクルマだ。同世代におけるベストハンドリングカーの1台に数えられるこの宇宙船のような4WDは、運動性や順応性、視認性や使い勝手のバランスが並外れて優れ、ライバルたちがうろたえるような専用設計と先進的なマテリアルを用いながら、比較的安価に販売されたのだから。
はたして、この2台を購入時に比較することがあるのか、個人的に確信はない。とはいえ読者諸兄からの質問を見るに、その手の比較で頭を悩ませるひとびとはいるようだ。すでに実用的なクルマを所有していて、なにかアナログでオールドスクールなセカンドカーを手に入れたいというニーズもある。
スペシャルで、走らせてる感があって、ドライビングに熱中できる。それでいて安心感があり、一年中いつでも乗れて、大メーカーに期待するような完成度を備えたクルマ。そういうものがほしいという声は、たしかにあるのだ。
そういう顔合わせの比較テストは、あまりメディアで取り上げられないかもしれないが、さまざまな取り組みが思いつく。新車のアルピーヌA110と中古のポルシェ911、最新の718ケイマンと先代アストン マーティン・ヴァンテージ、そして今回のGRヤリスと初代R8。日曜日の買い出しに出て、必要以上に遠回りしたくなるようなクルマたちだ。
さて、今回の2台の話を続けよう。GRヤリスはパールセントレッドに塗られたサーキットパック仕様で、フル装備状態といえる。そのため価格は3万4400ポンド(約482万円)と高価だ。
これに三角表示板とファーストエイドキットを加えると25ポンド(約3500円)のプラスだ。ただし、一括払いするユーザーはそう多くないだろう。納車待ちの長さやリセールのよさを考えれば、ローン払いでもそう高くつくものではない。
14年経ってもR8はクール
この3万ポンド台半ばで、今ではR8の初期モデルが狙えるのだ。2007年当時、われわれがベストドライバーズカーに選んだスーパーカーが、である。
中古車広告を見れば、そう多くはないが、4.2LのV8を積むマニュアル車が、3万3000ポンド(約462万円)程度で見つけられる。走行距離は10万km前後といったところだ。
新車価格は7万6000ポンド(約1064万円)はした。420psの70%を後輪に伝達し、ウェイトは1565kg。標準装備にはレザーシートやキセノンヘッドライト、19インチホイールが含まれる。今回の試乗車は、オプションのマグネティックライドこと磁性流体アダプティブダンパーが装備されていた。
一般的に、R8の信頼性は高い。インテリアはところどころテカり、インフォテインメントシステムは古さを感じさせ、時の流れを隠しきれていないが、機械面は強力だ。
購入前に試乗できるなら、エンジンの底面あたりからおかしなノイズが出ていないか耳をすまそう。また、オイルホースの劣化や、ラジエーターの繋ぎ目からのリークも要チェックだ。
さらにいえば、大部分がアルミ素材なので、スティール部材との接合面は腐食しやすい。サスペンションの取り付け部は、サビや焼きつきが出ることがある。マグネティックライドが故障しているなら、適切なパッシブダンパーのコイルオーバーに交換したほうがいい。
タイヤとブッシュの摩耗や、アライメントの狂いにも、R8は敏感に反応するクルマだ。とはいえスーパーカーのスタンダードからすれば、信頼性は高く走らせやすい。専門店の整備や補償を加えておけば、さらに安心だ。
今回の試乗車に乗る限り、今でもR8の走りにはすばらしいものがあるといっていい。キーを捻ってエンジンをかけると、最近のクルマで聞き慣れているような芝居がかった爆音を発するのではなく、マクラーレンF1的なソフトな始動音から繊細なアイドリングへ移行する。それだけでなく、正確なギアシフトもF1的。さらに、オープンゲートのカチッと鳴る音が気分を盛り上げる。
乗り味はしなやかで、視認性がよく、クイックなステアリングの手応えはやや軽めで、セルフセンタリングは積極的だ。全幅は1900mm強あるが、見切りがいいからだろう、狭い道でもそれほど大きく感じない。
V8エンジンはみごとだ。サウンドが大きすぎることは決してなく、パワーは8000rpmに届くまでリニアでスムースに出る。2速でそこまで回すと100km/hを超えるくらいだが、そこではすばらしい音を聞かせてくれる。
トルクは43.8kg-mに過ぎず、4500rpm回さないとピークに達しないが、スムースでやかましくないので、コーナリング中や追い越し加速時に低いギアへ入れっぱなしにしておくことも楽にできる。各ギアでカバーできる速度域も十分高く、R8のようなクルマにもふさわしいものになっている。
エキゾティックなスーパーカーブランドの商品ではないが、かなりクールなクルマだ。エンジニアリング的にみても、完成度の高さが感じられる。
ホットハッチは賢明な選択だが
GRヤリスには、維持する上で決定的な問題がある。整備は1万kmごと、フルードとブレーキのチェックはその半分が推奨で、普通の乗り方をしていれば年に2回のチェックと毎年の整備が必要ということになる。
それでもこのクルマは、この15年ほどで自動車業界がどれほど変化したかを示す好例だ。これがただのホットハッチとは言いがたいスペシャルなモデルであるとはいえ、それでも新車価格が倍以上もするスーパーカーと同じくらい速く、有能に感じられるのだから。じつのところ、おそらくこちらのほうができることは多いはずだ。
GRヤリスの乗り心地は十分にいい。サーキットパック仕様は、ダンパーを硬めのセッティングにしたR8とそう遠くないし、標準仕様であればR8のスタンダードなモードに近い。シフトの満足度ではアウディに譲るが、正確さでは負けていない。ステアリングもまた然りだ。
1.6L直3ユニットは、V8の特別感に及ぶべくもないが、実力は十分。アウディは回転を上げるにつれてエキサイティングさも増し、スペック表にはより大きなピーク値が記載されている。とはいえ、GRヤリスは車重が1280kgしかないうえにターボユニットなので、より早くピークに達し、果敢に回り続ける。
本気で走らせたら、凄まじいものがある。アウディのほうがスペシャルさを感じさせることは多いし、低い速度域ではたしかにそう思える。だが、それでもGRヤリスを走らせるのは常に楽しく、とりわけ満足感が高いクルマのひとつに数えられる。
おまけに、実用性で大きく上回るというのは否定できない事実だ。運転席の背後に座るとレッグスペースはかなり狭いが、それでも3人+荷物は余裕でキャビンに収まり、さらに後席を倒して拡大できるラゲッジスペースが備わるのだから。
R8のルックスはグラマラスだが、その代償として積載スペースはフロントの大きくない空間に限定される。おそらく、取引先とのミーティングに自家用車で向かう機会があったら、スーパーカーでは躊躇しても、それより目立たず実用的なGRヤリスなら迷うことはないだろう。実際にはそのスーパーカーが実用的だったり、安く手に入れたりしたものであってもだ。
さて、そろそろどちらかを選ぶとしよう。もちろんその選択は、購入者がそのクルマをどう使いたいかによる。使用頻度が高いなら、GRヤリスを選ぶといい。きっと、それまで乗っていたステーションワゴンの出番を奪う機会が増えるはずだ。
対するR8は、日常使いしやすく、しかも安価で手に入るスーパーカーだとしても、それでもやはりスペシャルだと思えるクルマだ。一台でいろいろこなせて、走りも楽しいクルマがほしいならGRヤリスで決まり。しかし、豊かなカーライフを楽しめるセカンドカー選びという観点でいえば、われわれはR8により強く魅かれる。
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