FD3SことマツダRX-7は現在、中古車相場が高騰している1台。すでにロータリーエンジンが生産を終了していることから、今後も値上がり傾向は収まることがないと思われている。ロータリーファンにとってみれば最後のロータリーターボエンジン搭載車であり、例え値段が上がり続けたとしても「いつかは」と思わせるだけの魅力に溢れている。それはNA仕様になったRX-8にもいえることなのだが、ピュアスポーツカーを標榜したRX-7は他車では得られない満足感と充実感を備えていることだろう。中古車相場が上がるにつれ街で目にする機会が減ったRX-7最後のモデルFD3Sが、6月18日に開催された「クラシックカーヒストリックカーミーティングTTCM」の会場にあった。その姿はノーマルを留めないほどカスタムされていたが、そばにいたオーナーの鈴木博之さんに話を聞けば「2021年に富士スピードウェイで開催されたオプジャンのモティーズ賞をとったんです」とのこと。興味深さからさらにお話を聞いてみることにした。
90年代のエアロパーツで当時風に仕上げたFD3S。なんでも鈴木さんは以前にもロータリー車に乗っていたことがあるそうで、それも含め過去の愛車たちはいずれもフルチューンやそれに近い状態まで仕上げてきた。ところが現在54歳という年齢的なものか、はたまた心境の変化からか、人生最後の愛車にするためFD3Sに白羽の矢を立てた。50代になると目の衰えからスピードを追求するより楽しみを優先するようになるものだが、まさに鈴木さんも「普通に乗って楽しむ」ことを優先するようになった。そこで選んだのはピュアスポーツカーであるRX-7だが、AT仕様でサンルーフまで装備するツーリングXというグレード。この個体が新車登録された1996年当時、5速MTのタイプRが391万円だったところ、このツーリングXは423万円もした豪華仕様。だからRX-7といっても激しいチューニングをしなければ普通に乗ることができると考えたのだ。
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ヴェイルサイドCombat C1を装着したフロントまわり。後方視界の良さから選んだRE雨宮製フェンダーミラー。ボンネットはTBO。サンルーフと干渉しないリヤウインドーバイザー。ホイールはBBS RI-Aの18インチを前後に履く。このFD3Sを手に入れたのが2019年。今ほど相場が高騰する前とはいえ、それなりに相場は上昇していた。年齢的なこともあってATでサンルーフ付きを選ぶことでMTと比べたら若干割安感はあったことだろう。ここからも読み取れるように、激しい走りを求めて選んだわけでなく鈴木さん自ら語るよう「普通に乗って楽しむ」ことを優先している。だから入手直後はメンテナンス程度で済ませるつもりだった。ところが90年代のエアロパーツが手に入ると「火がついてしまった」そうで、気がつけばボディはフルエアロ状態にまで発展してしまった。当初はモンツァの17インチホイールを履いていたが、火がついてしまったら止められず今ではBBSの18インチに発展している。BBSの間から見えるブレーキはキャリパーことオーバーホールと同時に塗装を施した程度だが、パッドとディスクローターはしっかりエンドレス製にグレードアップ。さらに足回りもオーリンズDFV車高調を組み込んであり、いつでもパワーアップに対応できる内容となっている。
13B-REWエンジンは基本的にノーマルのまま。GReddyパイプキットやオールアルミインタークーラーなどを装着。外装や足回りには手を加えたがエンジン本体はノーマルのまま。「最後の愛車」だから長く乗りたいと考えた結果で、パイピングや冷却系、吸排気系は見直したもののタービン変更などハイパワー化は進めていない。もちろん純正から社外品へと変更したECUも「仕様合わせのみ」という。耐久性に不安が残るロータリーエンジンだから、ハイパワーを狙うより気持ちの良い吹け上がりを長く楽しみたいならこの程度がベストだろう。純正プラスアルファの特性になっていると思われるから、鈴木さんの語る「普通」がどの程度かは不明ながら楽しい走りを演じてくれそうだ。
MOMOステアリングやダッシュカバーで雰囲気を変えたインテリア。300km/hメーターに変更されたメーターパネル。ブーストコントローラーのGReddy Profecを装着した下にはキーを吊り下げておけるアイデアが。外気温と空気圧をモニターできる。フルバケットながらエルゴノミクスを追求したレカロのRCSシート。買った当初は「ファミリーカーにするつもりだった」そうで、だからこそATで4人乗りのツーリングXグレードを選んだのだろう。ところが室内をみれば、もはやファミリーカーには全く適していないことがよくわかる。フロントには左右ともレカロのフルバケットシートが入れられ、「どうやったらリヤシートに座れるんだっけ」ととぼけてみせる鈴木さん。このような仕様だからイザとなれば楽しめる性能と装備になっているけれど、あえて普通に乗って雰囲気を楽しまれている。ある意味オトナなスポーツカーとの付き合い方といえるのではないだろうか。
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