新しい時代の働くクルマ──新型ホンダN-VAN e_試乗記

2024.08.28 11:00 掲載 1

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ホンダの新しいNシリーズの軽バンEV（電気自動車）「N-VAN e_」に、小川フミオがひと足はやく乗った！

使い勝手バツグン！

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ホンダがここから本格的にEVに乗りだすといわれる新型N-VAN e:。2024年6月に発表され、10月10日発売予定のこのクルマに24年8月下旬に試乗した。スムーズな走りが印象的なモデルだ。

N-VAN e:は軽商用をメインに、ガソリンエンジンモデル「N-VAN」をベースにしたピュアEV。商用はひとり乗りとふたり乗りの設定だ。

一方、キャンプやスポーツなどで出かけるひと向けに重用されそうなのが乗用車版、「e:L4」と「e:FUN」。本田技研工業の電動車事業開発本部の渡邊伸一郎は「自分はサーフィンが趣味なので、（同様の趣味をもつユーザーに）スムーズな走りのこのクルマは喜ばれると思います」と、話す。

気合いを入れて開発された軽バンEVのため、使い勝手は相当考えられている。例えば、低くてフラットな床面、広いテールゲート、高さ1365mmもある天井高、前後長2635mmに達するに荷室空間、更に、左側はピラーレスで前席用ドアとスライドドアを開けると1580mmの幅になる広大な開口部……と、いった具合。

一充電あたりの走行距離は245km（WLTC）。開発者によると、エアコンなどを使っての実走行距離は100km以上を確保しているそうで、「このクルマの使いかたを考えると、近場の移動が多いはずで、低床と低めの価格を考慮して、バッテリーサイズを決めていきました」とのこと。

「重要だと考えたのは、スムーズな走行マナーです。いきなり最大トルクが出せるのがEVですが、“どんっ”とトルクを出しては荷くずれを起こしかねない。それでは評価してもらえませんから、加減速ともに感覚に忠実に走れることを目指しました」（前出の渡邊）

トランスミッションには、回生ブレーキが働く「Bモード」も用意されているが、効きは弱め。これも「運転しやすさを考えて、あえて弱めにしています」と、渡邊は話す。

ホンダでは、開発にあたって、異なる配達環境をもつ3カ所のヤマト運輸へ試験的にN-VAN e:を使ってもらったという。例えば、上りと下りの多い山がちな神戸では、前記のBモードの評価してもらったそうだ。

室内のデザインは、ガソリン版のN-VANとだいぶ異なっている。ホンダのSUVと共通したものを感じさせるクリーンなダッシュボードで、N-VAN e:にはボタン式のエレクトリックギヤセレクターが用意されている。

「物理的なギヤセレクターを排除したことで、ドライバー近くにセレクターを引き寄せることが出来たうえに、コンソールでセレクターの下の部分をえぐって、ドライバーがさっと助手席側に移れるようになっています」（担当者）

N-VAN e:のインテリアは、縦リブを入れたパネルが目をひく。斬新な印象だが、デザイナーの意図は「移動蓄電コンテナ」なるコンセプトの視覚的表現にあるようだ。ベージュ系の内装も、汚れがつきにくい素材を使った、と、説明され、乗用として使う際に好ましい。

気持ちよく走り抜けていける操縦した印象はバランスが良い、というものだ。

強めにアクセルペダルを踏み込んでみても、強力なトルクは抑えられている。かといって、かったるさはない。そこからぐんぐんと加速していき、（テストースでの試乗では）楽々140km/hで走行できた。

N-VAN e:には、1インチアップした13インチ径のホイールと組み合わせたタイヤを履く。理由は、ガソリン版より200kg重くなった重量増に対処したためと説明されるが、操縦性にも良い影響が出ているようだ。カーブが連続するコースを気持ちよく走り抜けていける。

乗り心地は、速度にかかわらず、路面からの入力を丁寧に吸収してくれる。2520mmもあるロングホイールベースも奏功しているはずだ。シートのホールド性も良い感じで、乗用車としての快適性も高いだろう。

スマートフォンのアプリ「Honda CONNECT（ホンダ・コネクト）」が使えるようになっていて、利便性が上がっているのも特徴だ。例えば、出かける時間を設定しておくと、あらかじめ車両がバッテリー最適（に近い）温度に近づけてくれる。

外部給電機能もあり、キャンプ場などでの使い勝手も良さそうだが、そこで電気を使いすぎないために、事前にバッテリー残量を設定しておくことも可能。他にも、使い勝手を考えた操作が豊富に用意されている。

サステナビリティの点において、リサイクル素材の多用もN-VAN e:の特徴だ。今回、新しいのは、充電ポートが埋め込まれたフロントパネルにバンパーリサイクル材を使った点だ。

よく見ると、黒地に、白や黄や赤といった細かい点がある。「たとえば、赤色の点は（ホンダ）『NSX』のフォーミュラレッド、黄色の点は（ホンダ）『ビート』のカーニバルイエロー……と、想像するのも楽しいのでは？」と、デザイン担当者が笑顔で語っていた。2台と同じパネルはないそうだ。

乗用版の価格はe:L4が¥2,699,400（急速充電機能なし）と¥2,809,400、今回試乗したe:FUNが¥2,919,400。日産「サクラ」（¥2,599,300～¥3,082,200）と共に、小さなEVの市場を拡げていきたいと、ホンダではしている。

文・小川フミオ　写真・小塚大樹　編集・稲垣邦康（GQ）