昭和は遠くなりにけり…だが、昭和生まれの国産スポーティカーは、日本だけでなく世界的にもブームとなっている。そんな昭和の名車たちを時系列で紹介していこう。今回は昭和59年発売のトヨタ MR2だ。
国産初のミッドシップ2シーター
トヨタ MR2:昭和59年(1984年)6月発売
トヨタは運動性能が高い市販スポーツカーとして、MR2を昭和59年(1984年)6月に発表している。エンジンの位置は、通常の場合スペースや使い勝手からフロントかリアに配置するのが一般的な方法として広く用いられている。しかし、こと運動性能についてだけ見ると、重量物はできるだけクルマの中心にあったほうが、慣性の影響を受けにくく、スポーティな操縦に適した設計ができると言われている。
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MR2はこうした条件を市販車に盛り込んで、エンジンをクルマの中央にマウントしたミッドシップカーとして誕生した。ネーミングの由来も、ミッドシップ・ランナバウト・2シーターの頭文字を取ってMR2と名付けられた。
主要な動力パーツのほとんどがシート後部の位置に収められているため、全体のスタイルはフロントが低く下がり、Aピラーの傾斜を大きくとって、キャビンをコンパクトにまとめている。そして高めのリアまで流れるようなラインで構成され、全体は典型的なウエッジシェイプの2ドアクーペとしている。
空力的にもさまざまな考慮がなされていて、フロントのヘッドライトは全格納式のリトラクタブルヘッドライトを採用。また前後のスポイラーは、高速安定性に貢献するようにボディと一体となるデザインとしていた。
ミッドシップ2シーターで一番問題となるのが、ラゲッジスペースの確保だ。MR2の場合は、フロントにスペアタイヤや工具、ジャッキなどを格納するフロント・トランクを配置。そしてリア(エンジンルームの後方)には、ゴルフバッグ2個を収納できるほどのトランクルームが辛うじて確保されている。
デビュー当時のパワーユニットは、Sグレードに搭載されていた3A-LU型と、G/Gリミテッドに搭載されていた4A-GELU型の2系統でスタートする。その中で、スポーツカーとしては、最高出力130ps/6600rpm、最大トルク15.2kgm/5200rpmを発揮する4A-G型の需要が多く、市場ではほとんど1.5LのSグレードを見かけることはなかった。
4A-G型はすでにAE86レビン/トレノに積まれ、スポーツ性ということでは定評のあったエンジンだ。MR2では、このエンジンを横置きにマウントして、FF系と同じ5速MTと組み合わせていた。
しかも、レビン/トレノがオートマチックトランスミッションを後から追加しているのに対し、MR2でははじめから完全にスポーツを楽しむマニュアルと、その雰囲気だけを楽しめるイージー派のためにオートマチックが用意されていた。
1986年8月、それまで自然吸気エンジンのみだったMR2に、一部改良とともに4A-G型エンジンにスーパーチャージャーを装着した過給器エンジンが追加される。この4A-GZELU型は、トヨタ内製のルーツ型ブロアーを使って、最高出力145ps/6400rpm、最大トルク19.0kgm/4400rpmの性能を発揮した。
デビューした頃のMR2は、その運動性能の評価が賛否両論で、トヨタもはじめは面食らっていたようだ。スタビライザーやダンパーの強化など、幾度となくパッケージ車を追加し改良を行っていたが、最終的には初期のセッティングに近いものに落ち着いた。
その足まわりは、フロントがストラット式独立懸架で、スーパーチャージャー車にはストラットバー(パフォーマンスロッド)が装着される。リアは、2本の平行したロアアームと1本のトレーリングアームでボディとアクスルを結合するデュアルリンクストラット式独立懸架としていた。
MR2は全体のバランスも良く、当時のパーソナルスポーツカーとしての地位を築いたモデルと言える。
トヨタ MR2 Gリミテッド 主要諸元
●全長×全幅×全高:3925×1665×1250mm
●ホイールベース:2320mm
●重量:950kg
●エンジン型式・種類:4A-GEU型・直4 DOHC
●排気量:1587cc
●最高出力:130ps/6600rpm
●最大トルク:15.2kgm/5200rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:185/60R14 82H
●価格:179万5000円
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