愛車を見せてもらえば、その人の人生が見えてくる。気になる人のクルマに隠されたエピソードをたずねるシリーズ第32回。後編では、佐野さんが購入した愛車や憧れのクルマについて語る!
『ずっとあなたが好きだった』の“冬彦さんブーム”で愛車購入
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【前編はこちらから】後編は、佐野史郎さんが仕事の移動用にと選んできたクルマと、好きな映画に登場するクルマについて語ってもらう。
1965年に公開されたフランス映画『ファントマ 電光石火』で、その姿を見て、大いなる感銘を受けたというシトロエン「DS」を前に、興奮を隠しきれない様子だ。「このクルマにハネが生えてね、空を飛んでしまうわけですよ」と、熱く語る。
1955年のパリ・サロンでデビューしたシトロエンDSは、大きな話題となった。宇宙船のようなデザイン、大船に乗ったような乗り心地を提供する革新的なハイドロニューマチックサスペンションなど、まさに個性の塊で、世界中の記者が20世紀で最も素晴らしいクルマを選んだカー・オブ・ザ・センチュリーでは、フォードの「モデルT」(通称:T型フォード)、初代「MINI」に続く第3位の票数を集めた。
このDSの話題は後でじっくり語ってもらうとして、佐野さんが封印したはずのクルマに乗ることになったきっかけを振り返る。
1992年にドラマ『ずっとあなたが好きだった』(TBS系列)が大ヒットし、佐野さんが演じた“桂田冬彦”がブームになると、電車で撮影現場に通うことはできなくなった。
「電車に乗っているだけで大騒ぎになるから、ドラマのプロデューサーから『クルマを買ってくれ』、『マネージャーを付けてくれ』と、言われたわけです。それまでは井の頭線と小田急線を乗り継いでTBSの緑山スタジオ(神奈川県横浜市)に通っていましたが、必要に迫られてクルマを購入することになりました。1990年代の初頭だとみんなベンツに乗っていましたが、自分はいかにも芸能人みたいな感じじゃないなぁ、と。バラエティの人の間ではレンジローバーが流行っていて、そうそう、(明石家)さんまさんのイメージです。レンジローバーもちょっと違うなぁ、と、思ったんですが、山間部でのロケもあるし、4駆がいいとは聞いていたんです。あと荷物が積めたほうがいいという機能的な理由から、ジープの『チェロキー』を買いました」
チェロキーは、スタイリッシュなクロスオーバーSUVの先がけとも言うべきモデルで、佐野さんが購入したのは1984年から2001年まで生産された長寿モデル、XJ型と呼ばれた2代目チェロキーだった。
「チェロキーは、機能美みたいなところが格好いいと思っていました。用の美というのかな。もともとバウハウスとかモダニズム建築が好きなので、そういう気持ちがどこか根底にあってチェロキーを選んだのだと思います。自分では運転しませんが、クルマならなんでもいいというわけではなくて、移動用のクルマも基本的には僕がスタッフと相談しながら決めています。チェロキーの次が真っ赤なシボレーの『ブレイザー』で、これも機能美を感じたと記憶しています。ブレイザーの次がベンツの『Vクラス』(初代)で、これがよく壊れるし燃費の悪さはとんでもないし、こりゃダメだということで、国産車にしようということになりました。それで買ったのが、トヨタの『エスティマ』です」
佐野さんが購入したエスティマは、2000年に登場した2代目エスティマで、2001年に追加されたハイブリッドモデルだった。
「エスティマは乗り倒しました。壊れないし、燃費もいいし、後ろの席でDVDの映画を観られるし、バンドをやっているので機材をたくさん積めるのもよかった。十何年か乗って、まだまだ乗れるんだけど、いい加減そろそろ換えようということで、いまは日産の『セレナ』に乗っています。カギはカード型になっているし、駐車する時は上から俯瞰する映像がモニターに映るし、僕は運転しないから関係ないといえば関係ないんだけど、とてつもないハイテクに感心しています」
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「いやぁ、ちゃんとしたカメラを持って来なくてよかったですよ。単焦点のレンズを何本か持って来たら、大変なことになるところでした。クルマのことって自分の無意識の領域と向き合う作業なので、ちょっと怖い取材でもあるけれど、やっぱり鉄道に対して抱くのと同じように、クルマにも偏愛的な要素があることを感じています」
佐野さんは、シトロエンDSの特徴的な外観だけでなく、エンジンルームのパイプ類など、ディティールの写真も撮りまくる。
「自分でも、やけにパーツを撮っているなぁという自覚があります。自己分析をすると、やっぱり“部分”が好きなんでしょうね。部分、部分の丁寧な仕事の積み重ねにより全体が滑らかになる、という自分が思い描く理想の仕事像と重ねているのかもしれません。いやぁ、クルマと向き合うと、考えることも深みにハマっちゃいますね(苦笑)」
『ファントマ 電光石火』のシトロエンDS以外に、クルマが登場する印象的な作品はあるのかと尋ねると、佐野さんは力強くうなずいた。
「1960年代の『007』に登場するアストンマーティンとか、『サンダーバード』で見たピンクのロールス・ロイスとかは映画を見ながら格好いいなと思っていましたね。ほかにもヌーヴェルヴァーグの映画とか日本の東宝の作品にもいろいろなクルマが登場していて、無意識のうちに染み込んでいるんでしょうね。そうそう、大瀧詠一さんの『雨のウェンズデイ』という曲に、ワーゲンに関する詩があるんです、作詞は松本隆さんで。あれ、ビートルズに掛けてたのかな?無意識のうちにビートルが気になって、ロケでブラジルに行った時に海辺に停まっていたビートルの写真を撮ったりしましたね。もしクルマを封印していなかったら、ビートルか初代MINIに乗っていたような気もします」
そういえば、ドラマでも映画でも佐野さんがハンドルを握る印象的なシーンがある。けれどもいずれも“牽引車”で、自身が運転できないことに由来する不便やストレスを感じたことはないという。
ただ、劇中車はスポンサーの意向などで自由には選べないため、特に記憶に残っているものはないという。ただし、唯一の例外を除いては。
「僕は1986年に『夢みるように眠りたい』という林海像監督の作品で映画デビューをしたんですけど、そこでオート三輪のミゼットに乗って移動するシーンがあるんです。僕が幼少期を過ごした時代の設定で、思春期に封じ込めたクルマへの思いや、江戸川乱歩的な世界観や探偵など、僕が偏愛するものがぶつかりました。監督とは初対面だったし僕の好みを知る由もなかったんですが、お互いに呼び寄せられたのかもしれませんね」
そして佐野さんは、「作品に出てくるわけではないけれど、どうしても忘れられないクルマがあります」と、続けた。
「1988年、昭和最後の年に東ベルリンで『舞姫』という映画を日独合作で、撮ったんです。監督は篠田正浩さんで、郷ひろみさんが主演でした。西ベルリンに宿泊しチェックポイントチャーリーを通って東ベルリンの撮影所に通ったんですが、その時に乗せてもらったトラバントが忘れられないですね。乗った感じはキャロルに近くて、シンプルな機能美が格好いいなと思った記憶があります。だからクルマのことはずっと封印してきたけれど、この取材で蓋を開けてみたら、自分の人生の要所要所にクルマが登場します。クルマのことは考えないように、考えないようにしてきたんですけれど、実は大きな存在だったんだなということに、改めて気付かされました」
まさか、運転免許をお持ちでない佐野史郎さんから、これだけ濃厚で味わい深いクルマの話が聞けるとは、想像もしていなかった。興味があり、大好きになるかもしれなかったクルマを封印し、けれども振り返ってみるとクルマが大きな存在だったという佐野さんのお話に、すっかり引き込まれてしまった。
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文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) ヘア&メイク・Ryo スタイリング・間山雄紀(M0) 編集・稲垣邦康(GQ) 車両協力・コレツィオーネ
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昔のフランス映画によく登場してれ
DSは大統領車にも使われてる