思ったよりも「箱」だった!? ホンダ 新型ステップワゴンが初公開! 大ヒットした初代・2代目モデルへの原点回帰も感じる新型のポイントは? 実車を取材した自動車評論家の渡辺陽一郎氏が、独自に掴んだ最新情報も交えて解説する。
文/渡辺陽一郎、写真/奥隅圭之
【車名当てクイズ】この名車、迷車、珍車、ご存じですか? 第61回
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■親しみやすく原点回帰した新型ステップワゴン
新型ホンダ ステップワゴン。写真の『エア』は従来の標準ボディに相当するグレードだ
1996年に初代モデルを発売して、順調に進化を続けてきたミニバンの主役、ホンダ ステップワゴンがフルモデルチェンジを実施する。
販売店によると、通算6代目になる新型ステップワゴンは、2022年2月に予約受注を開始して5月に発売される。販売店に試乗車が届くのも、5月頃になる見通しだ。
これに先立ってホンダは、2021年12月10日に、ホームページで新型ステップワゴンのティザーキャンペーンを開始。
そして、今日2022年1月7日に、内外装のデザインなどを公開した。2022年1月13日にライバル車のヴォクシー&ノアがフルモデルチェンジを行うため、発売から5か月も前だが、新型ステップワゴンの情報を公開した。
新型ステップワゴンのバリエーションは、「エア」と「スパーダ」にわけられる。エアは従来の標準ボディに相当するグレードだが、開発者によると「空気のような親しみやすい存在」という意味で名称を変更した。
スパーダについては、最上級のプレミアムラインも用意している。つまり合計3グレードの構成になる。
フロントマスクは、エアは親しみやすさを表現して、穏やかな表情に仕上げた。スパーダは従来と同じく精悍な印象だ。
ボディサイズは、2022年1月7日の時点では公表されていないが、全幅は標準ボディも含めて1750mm前後に拡幅されそうだ。全長は従来型のスパーダと同じく、4760mm前後になりそう。プラットフォームは従来型と共通で、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)の数値も2890mmを踏襲する。
ボディの基本デザインは、従来型に比べて水平基調を強めた。従来型は、前席側はサイドウインドウの下端を低く抑えて側方視界を向上させたが、新型では最大で約50mm持ち上げた。
新型は従来型に比べるとサイドウインドウの下端が高まって上下幅は狭まり、ドアパネルの幅が増している。塊感を表現するうえでは有利な形状だが、ドライバーから見た時の側方視界は少し悪化した。
その代わり前方視界は良好だ。フロントピラー(柱)とフロントウインドウを約70mm後退させ、斜め前側の視界を向上させた。インパネの上面も平らに仕上げたので、正面の視界も良い。サイドウインドウの下端は高まったが、前方は従来型よりもスッキリしていて見やすい。
ミニバンでは珍しく、ボンネットがドライバーの視野に収まることも特徴だ。これも水平基調のデザインを採用したメリットで、車幅やボディの先端位置が分かりやすい。
■快適性は向上するも『わくわくゲート』は廃止に
2列目の足元もゆったり。前後はもちろん左右方向へのスライドも可能だ
インパネの形状は、水平基調で視認性や操作性が良好だ。空調吹き出し口は、シビックに似たメッシュ状にデザインされている。
1列目のシートは、背もたれを少し柔らかく仕上げた。体重の加わる背もたれの下側や座面の後方は硬く、乗員の体をしっかりと支える。長距離を移動する時も快適だ。
2列目は、スパーダに採用されるオットマンを装着したキャプテンシートに注目したい。前後方向に加えて、左右方向のスライドも可能だ。前後方向については、3列目を床下に格納すると、610~865mmの長いスライドを可能にする。
左右方向のスライド量は、右側は75mm、左側は115mmだ。内側にスライドさせると、スライドドア付近のスペースを広く確保できる。
3列目は、従来型と同様、座面の奥行寸法が1列目に比べて80mmほど短い。床下に格納するため、サイズが制約を受けたので、大腿部に違和感が生じる。
その代わり3列目の座面の厚みは、新型では従来型に比べて20mm増えた。従来型では座った時に底突き感が生じたが、新型にはボリューム感が伴う。
前後のシート間隔は、従来型とほぼ同じだ。身長170cmの大人6名が乗車して、2列目に座る乗員の膝先空間を握りコブシ2つぶんに調節すると、3列目の膝先にも同程度の余裕ができる。この空間があれば、多人数で乗車しても窮屈ではない。
また、新型の床と座面の間隔は、従来型に比べて2列目シートで10mm、3列目では20mm拡大した。着座姿勢が最適化され、着座位置と併せて視線も高くなったから、2/3列目に座った乗員も前方が見やすく開放感が伴う。
また1/2列目は背もたれの形状を変更して、少しスリムになった。後席に乗車した時でも、前席による圧迫感が生じにくい。
この変更は子どもの目線で行った。子どもは前方を見やすい助手席に座ると元気なのに、後席ではクルマ酔いを生じることがある。ホンダではクルマ酔いの研究を行って、2/3列目のチャイルドシートに子供が座った時の開放感、前方の見やすさ、快適性などに配慮した。
荷室の機能は、基本的に従来型と同じで、3列目シートを床下に格納すると、出っ張りのない広い空間になる。
リアゲートは、従来型は横開きのサブドアを内蔵して、狭い場所での開閉を可能にしていた。サブドアは縦長だから、3列目シートの左側を床下に格納すると、乗員がサブドアから乗り降りすることもできた。
便利なアイデア装備だったが「メーカーが提案したもので、お客様の人気を得られなかった」という理由から、新型では廃止されてしまう。その代わり新型では、スパーダにリアゲートの電動開閉機能を標準装着する。
■動力性能や安全性能もアップ!
上級グレードであるスパーダも健在。スパーダには最上級のプレミアムラインも用意される
エンジンは従来型と同じく、直列4気筒1.5Lターボと、2Lをベースに開発されたハイブリッドのe:HEVを搭載する。駆動方式は前輪駆動の2WDが基本で、ターボには4WDも設定される。新型ではe:HEVと4WDの機能を向上させる。
装備は安全面の充実に注目したい。衝突被害軽減ブレーキと運転支援機能を併せ持つホンダセンシング、後方誤発進抑制機能、トラフィックジャムアシスト(渋滞時の運転支援機能)、両側スライドドアの電動開閉機能などは、すべてのグレードに標準装着する。
ドライバーの死角に入る後方の並走車両を検知して知らせるブラインドスポットインフォメーションは、スパーダに標準装着した。さらにスパーダプレミアムラインには、ハイビームで走行中に対向車などを検知すると、LEDの点灯を調節して相手方の眩惑を抑えるアダプティブドライビングビームも採用する。
このほかスパーダプレミアムラインには、17インチアルミホイールも標準装着した。ドライバーの死角を補うマルチビューカメラシステムは、すべてのグレードに、メーカーオプションとして用意されている。
以上のように新型ステップワゴンは、従来型の特徴を踏襲しながら、機能を幅広く向上させている。
特に注目されるのは、フィットやヴェゼルと同様、前方視界を改善したことだろう。ステップワゴンではボンネットも見えるから、ボディの四隅も分かりやすい。混雑した街中や駐車場でも運転しやすく、安全性も高まる。これは最近のホンダ車に共通するメリットで、ステップワゴンにも反映されている。
※編注)新型ステップワゴンは拡幅されることにより、全グレード3ナンバーとなる見込み。また価格は公開されていないが、予約受注が開始される2月には明示される見込みなので、情報が入り次第お知らせします。
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