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EV普及の礎となるか?軽自動車とは思えない先進性と風格を備えた日産「サクラ」の完成度

掲載 更新 4
EV普及の礎となるか?軽自動車とは思えない先進性と風格を備えた日産「サクラ」の完成度

今、話題騒然の電気自動車、日産サクラ。日産と三菱の合弁会社NMKVの企画・マネジメントの元、リーフ、アリアで培った日産の電気自動車に注入された先進技術、そしてアイミーブ、アウトランダーPHEV、エクリプスクロスPHEVを送り出してきた三菱の電動化技術を結集した軽規格の電気自動車である。三菱版としてekクロスEVがあるのは、デイズ、ekワゴンの関係と同じと言ってよく、両車はデイズ、ekワゴンが基本のプラットフォーム、電気自動車としてのパワートレーンなどを共用する。

ちなみに日産サクラは電気自動車のシリーズの1台として、あえてデイズとはまったく異なる、アリアに通じる内外装としているのに対して、三菱のekクロスEVは三菱のSUVシリーズの1台として、エクステリアはekクロスに準じるデザインを採用している。

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日産サクラ

三菱ekクロスEV

電気自動車と聞いてまず気になるのは航続距離。サクラは軽自動車として登録されるため、軽自動車ユーザーの1日の走行距離が30km以下というデータに基づき、街乗り、あるいはガソリンスタンドの廃業が相次ぐ地方の足を念頭に、リチウムイオンバッテリーの総電力量を20kWhとし、最高速度130km/h、WLTCモード航続距離を180kmに抑えている。充電時間は自宅でも可能な2.9Kw、200Vの普通充電で約8時間(寝ている間でOK)、急速充電であれば約80%充電まで約40分と、充電のしやすさもなかなかと言ってよい。とはいえ、もっと航続距離が欲しい・・・というのであれば、日産としてはリーフやアリアがありますよ、というわけだ。

しかも、バッテリーの総電力量を短距離用に割り切ったことで、価格はベースグレードのXで239万9100円。上級かつプロパイロットやSOSコール、9インチワイドディスプレー& EV専用日産コネクトナビなどを装備するGが294万3000円と、電気自動車としてかつてないリーズナブルな価格設定としているところにも注目だ。国からの補助金は2022年度で最大55万円+エコカー減税1万5600円(自治体によってさらに補助金が上乗せされ、東京都の場合は自治体の補助金が45万円)と、Xグレードの場合、180万円ちょっとの車両本体価格で手に入ることになる。デイズのハイウェイスターGターボ アーバンクロムが168万1900円だから(他メーカーのハイトワゴン系最上級グレードもほぼ同じ)、100%電気で走るBEV(バッテリーEV)としては極めて買いやすいと断言していいだろう。

冒頭で、サクラはデイズをベースに仕立てられていると説明したが、つまりはデイズの開発時点で、このサクラの企画があったことになる。ガソリンエンジン専用のプラットフォームを持つクルマを電気自動車にするのは困難だからだ。よって、サクラのパッケージング、室内、荷室の広さはデイズと同じ。ハイトワゴン系ならではの高めの着座位置、後席の驚くほどの広さ、後席格納時に段差ができてしまう!?シートアレンジ性などが、デイズからそのまま受け継がれている。



ただし、2WD(FF)のみのサクラながら、リヤサスペンションが床下に敷き詰められたリチウムイオンバッテリーを収めるため、デイズの4WDと同じ3リンクに変更されているのと、2WDにして荷室の床下収納はデイズの4WD基準、というか、パンク修理キットや日産サクラではオプションとなる200V充電用ケーブル(ekクロスEVは標準装備)でいっぱいいっぱいで床下収納はないに等しい。パッケージング(最低地上高と全高は除く)、使い勝手面でのデイズとサクラの違いは、それぐらい、ということになる・・・。

さて、アリア風のフロントフェイスを持つ、軽自動車らしからぬ存在感とデザイン性を発散するサクラに乗り込めば、すでに説明したようにクラストップレベルの前席頭上空間、後席頭上、膝回り空間はデイズ同様だが、インテリアの仕立ては別物。専用デザインのインパネからドア内張りにかけては贅沢な布張りとなり、先進感ある7インチカラーディスプレーメーターとほぼ水平にレイアウトされる9インチワイドディスプレーのナビ画面によるインターフェースはアリアさながら。

デイズのフレームを使うシートは、前席では表皮の変更に加え、よりソファ感あるクッション感、ホールド性を持たせたものにグレードアップ。デイズで「座面のかけ心地が薄く感じられる」というユーザーの声もあった後席にしても、クッションの厚みを増し、電気自動車の走行感覚に合わせた上級感、快適感あるかけ心地の良さを実現している。

前席に座り、ちょっと気になったのが、贅沢な布張りに仕立てられたドア内張り上端の薄さ感。しかし、開発陣に聞けば、これはインパネから連続させるためのデザインであり、見た目はそう感じるかも知れないが、ドアの厚み自体はデイズと変わらないとのこと(ホッとした!?)。

ソファ感覚のシートのかけ心地に満足しながら(身長172cmの筆者だと座面はやや短めに感じられるが)、デイズとはまったく異なる四角形の電制セレクターをDレンジに入れて(Bレンジもあり)走り出せば、当たり前だが、まったくの電気自動車である。とにかく静かで(車外騒音は別だが)ウルトラスムーズに、リニアに加速する。パワーステアリングは低速ではごく軽く扱いやすく、アクセルペダル操作に対するモーターパワー、トルクの出方は実にレスポンシブル。右足とモーターがつながったような感覚になれるのが、電気自動車の大きな魅力でもある。アクセルを戻せばスーッと減速するe-Pedal Step(ワンペダル機能)のON/OFFにかかわらず、ペダル操作に対して意のままの加減速が行えるため、走りやすさは文句なしと言っていい。

驚きを隠せないのが、エコ/ノーマル/スポーツの3種類があるドライブモードをスポーツにセットした時だ(スイッチの位置はステアリングの左下でブラインド操作は難しく、位置の改善を望みたいところ)。何しろ最高出力は軽自動車の規制で64psに抑えられているものの、トルクは軽ターボの倍近い19.9kg-mに達する。エコモードでも軽自動車らしからぬスムーズな速さを発揮するのだが、スポーツモードでは下手なコンパクトカーを凌駕する、胸のすく加速力を見せつけてくれるのだから痛快すぎる。また、高速道路でe-Pedal Step OFF×エコモードにセットすれば、抵抗感なく滑走するようなコースティング状態の走行感覚も得られ、気持ち良さとともに電費の向上にも直結するはずである。

床下にバッテリーを敷き詰めている効果もあってか、乗り心地は軽自動車とは一線を画す、というより、コンパクトカーを凌ぐ上級感、上質感の持ち主だ。段差、ゼブラゾーンなど走破しても、振動、ショックは最小限。軽自動車に乗っていることなど、忘れさせてくれるほどだった。

操縦性にしても低重心が効いた、ステアリング操作に対してリニアに向きを変え、安定感抜群のフットワークが好ましい。e-Pedal Stepを効果的に使えば、日常的な走りのシーンでのスムーズな減速、山道でのカーブ手前の減速からカーブの出口の加速という一連の走りの流れも実にスムーズかつ安心して行えるのだから頼もしい。が、首都高速道路にあるような比較的タイトなカーブにけっこうなスピードで飛び込んでしまうと、バッテリーを床下に敷き詰めたことによる低重心と、ハイトワゴンのデイズ基準の高めの着座位置による、クルマとドライバーの重心感覚(位置)のズレからか、ドライバーが倒れ込むような(シートはサポート性より快適感を重視)、ちょっと緊張しがちな運転感覚に陥るシーンもあった。もちろん、タイトなカーブにけっこうなスピードで飛び込まなければ、そんな思いをすることなどないからご安心を。ナビ画面の見やすさ、プロパイロットの動作にも満足できた試乗であった(デイズ同様にSOSコールも用意)。



なお、WLTCモードで180kmの航続距離となっているが、急速充電された試乗車のメーターに示されたスタート時の航続距離は140km。この季節だからエアコンをONにすると134kmに(その前の走り方によって航続距離は変化する)。それでも1日30km以下の走行が多いという軽自動車の使われ方なら、4日ちょっとは無充電で走れることになる。都会のユーザーなら買い物や送り迎えに使う分には十分なセカンドカーになりうるし、ガソリンスタンドの廃業が相次ぐ地方ちょい乗りの足としては十分すぎる航続距離と言ってもいいかも知れない(自宅充電が基本か)。それも補助金込で車両本体価格が100万円台から手に入るのだから、このミニ・アリア!?は、日本の軽自動車の新たな歴史を刻むゲームチェンジャー、というより、近い将来に向けた日本の電気自動車の大いなる普及を決定づける1台になりうると思えたのも本当だ。



日産サクラ
https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/sakura.html

文・写真/青山尚暉

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みんなのコメント

4件
  • これ予約がハンパねらしいねw
    BEV車は日産が一歩リードした感じ
    トヨタがダイハツを脅迫しそうだよw
  • あさくら みなみ は よかった
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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