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英国版中古車のすゝめ オースチン・アレグロ コンパクトカーのほろ苦い過去

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英国版中古車のすゝめ オースチン・アレグロ コンパクトカーのほろ苦い過去

先進的な装備を搭載していたアレグロ

text:Malcom McKay(マルコム・マッケイ)

【画像】オースチン・アレグロ 全20枚

photo:John Bradshaw(ジョン・ブラッドショー)

translation:KENJI Nakajima(中嶋健治)


1973年5月に自動車雑誌の表紙を飾り、18ページの特集が組まれたアレグロ。世界初のハイドラガス・サスペンションに5速マニュアル、フロントのディスクブレーキ。オースチン1100・1300より車内空間も荷室も広くしつつ、車重は軽くなり、衝突安全性も高められていた。

アレグロにはとても肯定的な反応が集まっていたが、角の取れた四角形のようなステアリングホイールは評論家の評判を下げてしまった。「操縦性は信じられない形状のステアリングホイールによって損なわれている」 と記されている。

時代は移り変わり、初期のモデルに付いていた四角形のステアリングホイールは、今は人気アイテムとなった。ずんぐりしたスタイリングも1970年ぽい。

アレグロはAシリーズとEシリーズと呼ばれたエンジンを搭載し、1100と1300、1500、1750が用意され、1750SSがトップグレード。当時の記事には「広い車内には装備も充実。スピードを上げてもスムーズで静か。操縦性も優れ、ほとんどの条件で乗り心地も滑らか。価格も競争力がある」 と良い評価が並ぶ。

だが実際は、サスペンションは舗装の剥がれたくぼみで底突きした。車内空間は広かったが、4ドアボディでもリアシートへの乗降性は良いといえず、評判も高くはなかった。そこで1974年にブリティッシュ・レイランド社(BLMC)は改善ほ施す。

製造品質の悪さが最大の課題

個性的な4角形のステアリングホイールは置き換わり、1975年には乗り心地や外気導入も向上。だがEシリーズのエンジンを搭載した5速MTは冴えないままだった。1100のうるさいエンジンは批判の的だったが、BLMCの前輪駆動モデルの中では、シフトフィールはベストだった。

ギア比が高かったおかげで、馬力の割には高速巡航も可能。最高速度は高くなかったが、1750は144km/hで、1100でも128km/hくらいでの走行も許した。リラックスした走りと良好な燃費を実現していた。

アレグロには様々なバリエーションがあり、好みのクルマ探しに没頭する価値もある。初期の1750SSは象徴的なモデルで、最高出力は76ps。1974年に登場したスポーツとハイラインにはSUキャブが2基付いて、91psを発生させた。

おかげで走行性能も大きく引き上げられた。1970年代半ばの普通のハッチバックで、0-96km/h加速10秒というダッシュ力は良い方だ。

1974年後半に登場したバンデンプラスは、シートの肉厚が増して車内は窮屈だが、滑らかで静かに走った。1979年に登場したエクイップは、ツインキャブの2ドアのみの設定。「ホットハッチ」の人気にあやかったグレードだった。

製造品質は、アレグロ最大の課題。当時のBLMCはストライキが多く経営も不安定で、作りは残念なものだった。一方で現在まで生き残っているクルマは、皮肉にもきちんと組み立てられた少数エリートである可能性が高い。

オースチン・アレグロの中古車 購入時の注意点

オースチン・アレグロの場合、多くの不具合は現在に至るまでに修正・改善されていることがほとんど。自宅のガレージで作業するのも難しいクルマではない。

エンジンは、異音や振動、白煙が出ていなければ、充分に寿命は残っている。仮に摩耗していても、リビルトは比較的安価に済むはず。Aシリーズのエンジンは整備しやすいし部品も簡単に出てくる。Eシリーズの方も、愛好家クラブを介してスペアパーツの手配が可能だ。

トランスミッションも長持ちする方だが、2速目のシンクロは確認したい。4速MTのAシリーズは変速の感触もいいが、Eシリーズの5速MTは批判が出た通りグニャグニャ。MkIIのオプションとして設定された4速ATにはマニュアルモードが付いている。耐久性は高いが、リビルトできる専門家は限られる。

ガススフェア(球体タンク)が故障していなければ、ハイドラガス・サスペンションのガス補充は、MGFの整備ができるガレージなら対応可能。衝撃の吸収性が悪ければ、スフェアの交換が必要になることもある。きついコーナリングを繰り返すと、ドライブシャフトの等速ジョイントを傷めてしまう。

アレグロのエンジンは洗練されたユニットではないが、整備は簡単で安価。不具合箇所もわかりやすい。エンジンが載せ替えられていないかも見ておきたい。

不具合を起こしやすいポイント

ボディ

アレグロがスクラップ置き場行きになった最大の理由はサビ。サビの進行状態は充分に確認しておきたい。フロントバルクヘッドやフロントガラスの下、Aピラー周りやフロアのサビは修復に金額がかかる。フロントフェンダーの新品は貴重。

カーペットの下やプラスティック製シルカバーの下も見ておきたい。排水穴が詰まるとドアの底が錆びることがある。ヘッドライトやボディの装飾トリムもレアパーツ。

エンジン

機械的な問題は多くはない。劣化したエンジンをリビルトするなら、良好なエンジンに交換した方が安価に済むことがある。Eシリーズはガスケットが痛みやすく、冷却系に液漏れやオーバーヒート痕がないか注意。フィラーキャップに乳化したオイルが付いていないか、ラジエタークーラントにオイルが混ざっていないか観察したい。

装飾トリム

4角形のステアリングホイールは人気アイテム。ダッシュボードはシンプルだが、スイッチ類の交換部品は珍しい。オースチン・ミニのメーターと互換があり、ホーンボタンも合う。初期のビニールシートは耐久性があるが、後期のファブリックとベロアはすり減りやすく退色もする。新しいシートは少なく、張替え用の素材も珍しい。状態の良いものを選ぶのがベスト。

サスペンション

シンプルで、ほとんどのジョイント交換も自分で簡単に行える。ハイドラ・サスペンションは、ガス補充以上の修理が必要となることは珍しい。

掘り出し物を発見

オースチン・アレグロ 登録1979年 走行6万6613km 価格5995ポンド(83万円)

2015年に5000ポンド(69万円)を掛けてレストアしてある。部品のいくつかは交換され、再塗装もされている。Eシリーズのエンジンはリビルト済み。その経過は写真で残っている。走行距離も間違いないようだ。

リアのホイールアーチに塗装の気泡があるが、地金の状態は良い。ベルトライン下部まで再塗装してある。塗装は完璧とはいえないが、小豆色のボディカラーはしっかり合っている。プラスティック製のシルカバーの状態は良く、ホイールカバーやバンパーも悪くない。

タイヤは残り溝半分程度のグッドイヤーGT70。スペアタイヤにはミシュランZXが付いている。

インテリアのレザーはややくたびれているが、木パネルは綺麗。ビニール巻きのドア内張りも良好で、時計やラジオも動いている。

ボンネットの内側の状態は素晴らしく、インナーフェンダーも完璧。だがエンジンオイルは汚れており、量も少ない。ラジエタークーラントがリザーブタンクの下に付着している。

エンジンの始動性は良くアイドリングもスムーズ。水温も安定している。ブレーキのフィーリングは良くないが、まっすぐ止まる。トランスミッションは変わらずグニャグニャした変速感。

乗り心地は良い。ステアリングコラムにやや遊びがあり、ボールジョイントもガタがある。だが車検に通らないほどではないだろう。

オーナーの意見を聞いてみる

「子供の頃、母が乗っていました。黄色の小さなアレグロで、色んな所へ行きました」 と振り返るのはオーナーのアレックス・フィリップス。

「ローバーP6を抹消してレストアを始めたのが2014年。その間に乗れるクラシックモデルを探していて、eBayで800ポンド(11万円)見つけたのがこのアレグロです」

「女性のワンオーナー車で、トライアンフ・ヘラルドから乗り換えたあと、40年ほど所有していたそうです。わたしが購入してからは、フロントフェンダーのサビを修理し、サイドシルを再塗装しました。エンジンから白煙が出ていたのでリビルトしています」

「フロアカーペットの色も塗り直し、ホイールキャップも入手しました。クロームメッキのパーツも新しく交換しています。このクルマは何度かコンクールで受賞していますし、運転するのも大好きです」

まとめ

ハリス・マンによるズングリしたデザインと、ハッチバックのないボディ。当時のBLMCらしい組み立て品質の悪さによって、新車当時は評判の悪かったアレグロ。しかし現代では実用的なクラシックカーとして見られるようになった。

デザインも含めて存在が個性的な、他にはない魅力を持った穏やかなコンパクトカーだ。残っているクルマは走行距離も少なく、大切にされてきた場合が多い。価格も手頃で価値は充分にある。

良いトコロ

安価でシンプル、信頼性も悪くないアレグロ。長く続いた悪評も乗り越えてきた。熱心なオーナーズクラブもあり、部品供給や修理の相談ができる体制が英国にはある。

良くないトコロ

価格が安いということは、経済性重視で乗られてきたということ。長い間メンテナンスをおろそかにされてきたクルマの状態を、今から改善することは大変。

オースチン・アレグロ(1973~1982年)のスペック

価格:1967年時 2105ポンド(29万円)~3392ポンド(47万円)
生産台数:64万2350台
全長:3920mm
全幅:1600mm
全高:1330mm
最高速度:133-165km/h
0-96km/h加速:19.9-10秒
燃費:7.7-12.7km/L
CO2排出量:-
乾燥重量:838-911kg
パワートレイン:直列4気筒1098/1275/1485/1748cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:48ps/5250rpm-91ps/5500rpm
最大トルク:8.2kg-m/2700rpm-14.2kg-m/3100rpm
ギアボックス:4速マニュアル/5速マニュアル/4速オートマティック

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