快適な走りで静粛性は最上級 モーター制御や旋回性も絶妙
三菱のフラグシップSUVであるアウトランダー。昨年9年ぶりにフルモデルチェンジを果たした第三世代は、ガソリン車を廃してプラグインハイブリッドのみに割り切ったことが、最大の特徴である。
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エクステリア
ツートーンのボディカラー、同色のサイドドアガーニッシュは最上級グレード「P」の識別ポイント。エントリーグレードを除き、20インチのタイヤ&ホイールが標準装備となる。最小回転半径は5.5m。全長4710×全幅1860×全高1740mmと、先代より少し大きくなったボディを引っ張るパワーユ ニットは、2.4l直列4気筒(133ps)と前後2モーターの組み合わせ。そしてその駆動方式は、フルタイム4WDである。バッテリーは容量が先代の13.8kw/hから20.0kw/hへと拡大され、 65km(JC 08モード)だったEV走行の航続距離は、 最大87km(「M」・WLTCモード) まで延長された。ちなみにAC200Vの普通充電だと約7.5時間で満充電となり、急速充電では約38分で80%の電気がチャージされる。また停止状態でエンジン発電を行なうと、94分で約80%の充電が完了する。
乗降性
1列目2列目3列目前後ともステップは数字以上に高く感じる。特に 2&3列目から降りる際には地面まで距離を感じるだろう。3列目へのアクセスは若干タイトゆえ、子ども向けと捉えるのが良さそうだ。アウトランダーをまず走らせて感じるのは、静かで快適な乗り心地だ。足元に20インチの大径タイヤを履くにも関わらず、オフロード走行をも想定したストロークフルな足まわりが、路面からの入力を巧みに吸収してくれる。通常はモーター駆動を常用することからアクセルに対するレスポンスは良好で、かつ室内はエンジンやインバーターの作動音がきちんと遮断されており、とても快適な空間が演出されている。さらにステアリングのパドルを駆使すれば回生ブレーキを5段階で調整でき、センターコンソールのボタンを押せばワンペダルドライブも可能と、街なかでの操作性は偏差値が高い。
インストルメントパネル
ブラックとタンのツートーンインテリアは、「P」の標準仕様。インパネ中央の9インチスマートフォン連携ナビは、全車に標準装備となる。12.3インチのフル液晶メーターも標準装備で、ナビと連動して地図を表示することも可能。カラータイプのヘッドアップディスプレイも装備するなど、未来的なコックピットだ。巨体の割に身のこなしが良いのは、前後のモーター制御が巧みな上に、ブレーキAYCを交えながら旋回性能を高めているからだ。筆者はこれをサーキットで走らせた経験があるが、特に「ターマックモード」によるパフォーマンスの先鋭化は見事で、ランエボのごときゼロカウンター走行ができるだけでなく、高い安定性をも備えていることに驚かされた。またオフロードで「グラベル」モードを選べば、高出力なフロントモター(116ps)に対して高出力化されたリヤモーター(136ps)の特性を活かしながら、積極的に駆動力を高めて旋回してくれた。
居住性
3列目2列目1列目前席は国産SUVとは思えないほどゆったりとしたサイズ感で、ホールド性にも優れた形状。「P」にはマッサージを行なうリフレッシュ機能も標準装備されている。2 列目シートは背もたれに余裕があり、長く座っていたくなる出来映え。3列目は大人には厳しいが、小学生5名を2&3列目に座らせるといった使い方には十分対応してくれる。こうした四輪制御技術の高さに対して、加速性能は驚くほどではない。これは燃費および電費のために意図的に出力を抑えているせいもあるが、根本的には2110kgの車重が効いている。総じて現状は、ソフトな乗り心地に併せて上質な加速を味わうキャラクターに仕立てられている。気になるのは車重としなやかな足まわりがもたらす前後ピッチング量の多さ。高速巡航を考えるともう少しだけ姿勢がフラットだとさらに良いと感じた。オプションでいいから、可変ダンパーが欲しいところだ。
うれしい装備
2列目中央部分を展開するとドリンクホルダー付きの大きなアームレストに変身する。リヤウインドウにロールサンシェードも備わるのはSUVでは珍しい。とても快適な2列目空間という印象だ。2 列目シートの格納はラゲッジ壁面のレバーから行なえるのも荷室の使いやすさにつながっている。なおシート側では左右それぞれ横のストラップを引くことで格納することができる。センターコンソール背面とラゲッジ壁面にAC100Wの電源コンセントを装備。レジャーだけでなく非常時にも活用できる。シフト後方のダイヤルにより、7つのドライブモードを切り替える。中央のボタンを押すとヒルディセント機能が起動する。加減速をアクセルだけで操作できるシングルペダルモードを用意。EVボタンを押すと可能な限りエンジンを掛けずに走行する。ACCと車線中央維持を組み合わせた高速道路同一車線運転支援機能「マイパイロット」 はワンタッチで起動できて便利だ。月間登録台数 1334台(21年12月~22年3月平均値)現行型発表 21年10月WLTCモード燃費 16.6 km/l ※「M」
ラゲッジルーム
通常時3列目格納寺2列目+3列目格納寺3列目使用時の奥行きはコンパクトカー並みだが、最大284lのスペースがあり、複数のサッカーボールを積むといった使い方には良さそうだ。3列目を床下に格納すると最大646lのフラットで使いやすいラゲッジフロアとなり、ゴルフバッグ4個は積載可能になる。2列目を格納すると最大1390lの荷室が現れるが床が斜めで大きな荷物は積みづらい。直近のライバルは、ずばりRAV4 PHVで、燃費性能は22.2km/l と、アウトランダー(16.2km/l ) が大きく差を付けられている。しかし、ロングホイールべースのアウトランダーは後席が広く、かつ3列目シートも選択が可能。価格もほぼ同等だから、お互いがっぷり四つのライバルになる。大らかで優しい乗り味を求めるなら、筆者はアウトランダーをお薦めする。
※本稿は、モーターファン別冊ニューモデル速報統括シリーズVol.141「2022-2023 国産&輸入SUVのすべて」の再構成です。
http://motorfan-newmodel.com/integration/141
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