34ps増強されたモンデオ ST200
1990年代後半は、フォードの高性能モデルにとって混迷の時期といえた。XRグレードは消滅し、RSコスワースも終了。欧州フォードのスポーティなモデルには、統一感に欠けるネーミングが与えられていた。
【画像】高性能フォード ロータス・コルティナからフォーカス ST170まで フォーカス STも 全123枚
振り返ると、フィエスタ・ゼテックSにレーシング・プーマ、エスコート GTIなどがラインナップされていた。落ち着いたサルーンのスコーピオに、エスコートという特別なグレードが追加されるほどだった。しかし、モンデオ ST24が次の流れを生み出した。
このSTが、ストリート・テクノロジーの略なのか、スポーツ・テクノロジーの略なのかは定かではない。それでも、スポーティでカッコ良く仕立てられていたことは間違いない。エスコート XR3のように。
1997年のモンデオ TS24は、専用ボディキットとアルミホイールでスタイルアップし、スポーツシートが載った、上級トリムグレードの1つだった。だが、1999年に登場した台数限定のST200では、2.5L V6エンジンが34psも増強されていた。
当時、フォード・モンデオはスポーティなサルーン/ステーションワゴンとしてクラスをリードする存在にあった。そこへ追加されたST200は、訴求力を一層補強することへ貢献した。
その頃は2ドアクーペだったプーマのレーシングも、同様の効果を果たした。もし登場が少し遅ければ、モンデオのようにSTを冠していたことだろう。
洗練の走りで驚かせたフォーカス
この2台へ関わった人物が、技術者のリチャード・パリー・ジョーンズ氏。世界最高水準の量産車メーカーだという、欧州フォード自体のイメージ向上にも大きく貢献したことは明らかだった。
エスコートの後継モデル、フォーカスの開発では、パリー・ジョーンズの手腕が遺憾なく発揮された。ベーシックな仕様でも、コントロール・ブレードと同社が呼ぶ独立懸架式サスペンションをリアに採用。洗練された走りで、多くのドライバーを驚かせた。
操縦系の重み付けは完璧といえ、クラストップの操縦性を備え、最初から完成度は高かった。フォーカス ST170へ与えられた違いは、これまでご紹介した4台と比較すれば小さい。それでも、ベース車の能力は確実に引き上げられていた。
英国へ拠点を置くフォード・スペシャル・ビークル・エンジニアリング(SVE)によって、2.0L 4気筒エンジンは173psまで最高出力を向上。シリンダーヘッドを改良し、可変バルブタイミングを与え、より高回転域まで許容する鍛造部品が内部へ組まれた。
マツダとヤマハが共同開発した、1.6L 4気筒エンジンの印象が生んでいた、フォーカス全体の冴えないイメージを払拭。遅れながらも、スリリングなハッチバックとして輝き始めたのだった。
ピーキーさがなく驚くほど扱いやすい4気筒
アクセルペダルを蹴飛ばすと、ブワーッという吸気音がドライバーの気持ちを鼓舞する。空気を沢山吸えるよう、スポーツ・エアフィルターに交換されていることが通例だが、今回のガンメタリックのフォーカス ST170は完全なストック状態にある。
ハイチューニングのツインカム・エンジンらしいピーキーさはなく、驚くほど扱いやすい。トルクが重視された、4気筒エンジンのように振る舞う。だが、5000rpmを超えた辺りから秘めた荒々しさを表現しだす。
このエンジンは、傑作として注目を集めた。エスコート Mk2へ換装させたいと考える人が多く、フォーカス ST170の残存数が減じたことは、予期せぬ結果といえる。
エンジンだけでなく、SVEは素性の優れたシャシーを一層磨いた。サスペンションは引き締められ、ステアリングラックはクイックに。変化度合いは小さかったものの、快適な乗り心地はそのままに、走りの鋭さは高められていた。
ショーン・マッケイブ氏にお持ちいただいたフォーカス ST170の場合、インテリアはオプション仕様。2019年に彼が買い取るまで、初代オーナーが維持してきたクルマで、カスタムパッケージが組まれている。
レザーのレカロシートが、注目のアイテムといえる。標準では、センター部分がブルーのクロスで仕立てられた、ハーフレザー・スポーツシートが載っていた。初代フォーカスのベーシックなシートはフラットな形状だったため、有用な装備になった。
有能なベーシックカーを素材にしたレシピ
着座位置はレカロシートのおかげで若干落ちているものの、ドライビングポジションは高め。ボンネットを見下ろすような目線になる。メーターは、文字盤部分がホワイトの専用品だ。
見た目の印象は、モンデオ ST200に通じる。フォーカス ST170の場合、エレクトリック・ブルーと呼ばれる鮮やかな塗装が定番だった。マルチスポークの17インチ・アルミホイールに専用フロントバンパー、低く構えたスタンスが違いを主張する。
初代フォーカスにST170が登場したのは、世代末期の2002年。販売期間は2005年までの3年弱と短く、フォーカス RSの復活も予告されたことで、若干影の薄い高性能フォードという立場にある。
それでも、その後のフィエスタ STと、2代目フォーカス STへしっかりバトンを繋ぎ、成功を掴む土台になったことは間違いない。有能なベーシックカーを素材に、秀でたドライバーズカーを仕上げるという、フォードのレシピを見事に体現させていた。
フォード・フォーカス ST170(2002~2005年/英国仕様)のスペック
英国価格:1万6340ポンド(新車時)/5000ポンド(約90万円)以下(現在)
販売台数:−台
全長:4174mm
全幅:1702mm
全高:1430mm
最高速度:231km/h
0-97km/h加速:7.9秒
燃費:11.0km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1283kg
パワートレイン:直列4気筒1988cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:173ps/7000rpm
最大トルク:19.8g-m/5500rpm
ギアボックス:6速マニュアル(前輪駆動)
高性能がお手頃に提供されてきた60年
今回、英国編集部が集めた5台のドライビング体験は、それぞれ大きく異なる。それでも、予算に見合った動力性能と、当時の高度な技術を巧みに融合させるという、フォードの達成力では共通している。
日常的な実用性は、まったく犠牲になっていない。扱いやすい主力モデルをベースにすることで、優れた性能が比較的安価に提供されてきた。その点でも、非常にフォードらしいモデルだといえる。
家族が増えても、クルマ好きがスポーツカーを諦めずに済む選択肢でもあった。2台を所有する余裕がなくても、ドライビング体験を堪能することが許されてきた。
今回の目的は、1番の高性能フォードを見つけ出すことではない。この5台のほかにも、量産車をベースにした好例は複数存在する。それでも、60年間の歴史を辿る興味深い比較にはなっただろう。
ロータス・コルティナの頃から、明確なテーマのもとで欧州フォードは特別なモデルを手掛けてきた。社内・社外を問わず、有能な技術者の才能を注ぎながら。直近の20年間でも、フォーカス STを筆頭とする傑作が多くのドライバーを喜ばせてきた。
フィエスタの生産が終了し、マスタングを名乗る電動SUVのマッハEが登場するなど、フォードの今後は不透明ではある。しかし、多くの注目を集めるモデルが引き続き登場するであろうことは、想像に難くない。われわれに現実的な価格帯で。
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