東京オートサロン2019の会場には、カーデザイン的に注目のモデルが展示されていた。これを難波治教授(スバルの前デザイン部長で現首都大学東京教授)と見て回った。シリーズに第1弾は、マツダ3だ。マツダの新世代商品群のトップバッター、アクセラの名前からグローバルネームである「Mazda3」へ生まれ変わるこのニューモデルを見て、難波教授はどう思ったか。まずは、5ドアHBから。COMMENT◎難波 治(NAMBA Osamu/首都大学東京教授) TEXT & PHOTO◎鈴木慎一(SUZUKI Shin-ichi/MotorFan.jp)
スバルの前のデザイン部長で、『スバルをデザインするということ』の著書もある難波治教授(首都大学東京)が、東京オートサロン2019の会場を訪れた。難波教授のデザインウォッチング 東京オートサロン2019編の第一弾は、注目の「Mazda3」から。
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難波教授は、東京モーターショーのとき、魁(Kai)Conceptについて、こう語っていた。
難波:今回は、初めて実物を見たマツダ3、2年前の東京ショーで登場した魁(Kai)コンセプトと同じクルマとは感じなかったですね。要素としては、基本的になにも変わっていませんが、クオーター周りの重さ感が、Mazda3ではなくなった感じです。
(魁Kaiコンセプトの写真をあたらめて見ながら)
難波:ショーカーってもしかしたら、トレッドがMazda3よりもっと広かったのかな。全幅ももっとあったのかな。って記憶の中ではそうなんですけど……。
(さらに魁Kaiコンセプトの写真を見る教授)
だいぶ変わってますよね。ああ、全然違うんだ。でも、ショーカーをかなり忠実に量産化していますね。あとMazda3はルーフとピラーのあたりで一回段差をつけてますね。ショーカーのまま量産にするとリヤの頭周りの居住性が狭かったのかもしれないです。
魁(Kai)コンセプトはリヤのフェンダーが張っていて、後ろから見たときに、テールランプから両脇のところがボリュームが張りすぎていてちょっと重さというか、寸法(全長)がないなかでやりたいことを頑張りすぎた感じがあったんですが、量産のMazda3になって、そういうところが全部直されていますね。とても良いです。
良くなっていると思います。魁(Kai)コンセプトを見たときのような「ちょっとtoo muchな雰囲気」なく見られました。Mazda3は、「これは5ドアHBでそれ以外のものになにも見せない」といういい意味で無駄な努力はしないというのがあると思います。それは見習いたいよね。
ただ、クォーターパネル、リヤフェンダーあたりのちょっとした重たさみたいなものは完全にはなくなってはいないですよ。サイドビューにずっと回っていくと、クォーターウィンドウの下のリヤタイヤの周りのあたりってちょっと抑揚が少なくてノッペリした感じがあります。
魁(Kai)コンセプトは「こういう造形感でいくんだ」「俺たちこういうやり方でいくぜ」というのを見せてくれたので、とてもよかったと思います。でもね、とくに5ドアHBってリヤのオーバーハングがわりと短いじゃないですか。だから、そこで幅の広い、なにも抑揚のないことをやると、つらいんですよ。だから、ギリギリのバランスだね。ちょっとペターっとした感じ、時と場合によってはちょっと重たく見えてしまうかもしれませんね。
MF:(リヤのフェンダーアーチの面を見ながら)このフェンダーアーチを囲む面は、魁(Kai)コンセプトより広くなっていますよね?
難波:これは現実にタイヤが大きくならないので、タイヤの大きさを大きく見せたい。この充分すぎるくらいのボリュームを、この面なしで、ホイールアーチぎりぎりで普通に切っていたら、全然バランスとれないですよ。でも、とても難しい。この面の面積が増えすぎると、余計タイヤが小さく見えてしまいます。だからウェルバランスというのがどうしてもあるんです。それがとても難しい。
(再び魁(Kai)コンセプトの写真)
うん、やっぱりタイヤのサイズが全然違いますよね。もっと面が薄い、というか面積が小さい。
MF:今日、Mazda3を見ていたお客さんが、「結局、マツダのクルマの顔もみんな同じになっちゃったね」と言っているのが聞こえました。
難波:言ってましたね。結局、みんな同じ顔になっちゃうんだなぁって。
では、どうして、それをあなたはBMWに言わないんですか。メルセデス・ベンツに言わないんですか、アウディにも言えばいいじゃないですか。「みんな同じ顔だからなぁ」って。絶対言わないでしょ? だから、辛いですよ、マツダ。偉いと思うよ。同じようでいて、モデル毎にちゃんとデザインの処理の仕方は変えているんですから。これはやっぱりブランドが育っていきますよね。
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