世界中で人気が高まっている市販レーシングカーにマツダが参戦。日本上陸はなるか?
マツダUSAが「MAZDA3 TCR」を発表しました。フロントに搭載されるエンジンは2.0L 4気筒ターボで最高出力350馬力、6速のレーシングミッションを介して、前輪を駆動するレーシングカーです。そもそも『TCR』というのは4ドア/5ドアボディの市販車をベースとしたFFレーシングカーのことであり、各メーカーが生み出したTCR車両を使ったレースが世界中で行なわれています。またTCRは基本的に市販レーシングカーであることも特徴です。あくまでプライベートで楽しめるレースという位置づけです。
日本でもTCR車両によるレースシリーズは存在しています。その一つがTCRジャパンシリーズであり、また市販車をベースとしたレーシングカーによるスーパー耐久シリーズにもTCR車両が参加するクラスが用意されています。いずれも多くのエントラストを集めています。日本でもTCR車両への注目度が高まっているといえます。
さて、マツダの発表ではアメリカで開催されているTCRシリーズに出るということだけが明らかとなっていますが、日本での盛り上がりを考えると、早々に国内シリーズへの参戦を期待したくなります。もちろん、市販レーシングカーですから建前としてはチームがMAZDA3 TCRを購入することが必要ですが、そのために足りない要素がいくつもあるでしょう。
マツダといえばモータースポーツに理解のあるブランドというイメージですが、じつは国内でのモータースポーツ活動というのはロードスターなどのナンバー付きレースが中心です。前述のスーパー耐久にマツダ車で参加しているチームもありますが、ほとんどはメーカーとは深いかかわりのないプライベーターが作ったマシンです。マツダ自身がマシン作りに関わった純粋なレーシングカーというのは久しく国内では走っていないといえます。
MAZDA3 TCRは、公開された写真からもわかるようにレーシングカーに求められるエアロダイナミクスと、マツダの「魂動デザイン」が見事に融和しています。レーシングカーだからゴテゴテとしてしまうのではなく、MAZDA3の持つスタイルの良さをスポイルしないレーシングカーなのです。マツダの美学が強く影響していることを感じさせます。これほど力の入ったレーシングカーなのですから、日本で走る姿を見たいと思うのはマツダファンでなくとも望んでしまうのではないでしょうか。
現実的な話になると、すでにTCRでのレースが行なわれていますから、他メーカーのマシンというのはそれだけ熟成が進んでいるわけですし、レースのノウハウも溜まっています。あえて新型車で参戦しようというチームやオーナー、ドライバーが出てくるとは思えません。実績あるマシンを使ったほうが有利だからです。さらに、マツダに縁のあるチームというのも限られています。
ですから、MAZDA3 TCRを走らせたいと考えるチームが出てくるような施策が必要といえます。そのためにはメーカーの手厚いサポートも重要な要素となるでしょう。この美しいマシンがレースをしている姿を見るためには、そうした部分にも期待したくなるのです。MAZDA3 TCRの誕生にあわせて、日本におけるマツダのモータースポーツに対する本気の体制作りが進むことを願ってやみません。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
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