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口当たりがよくなった? 新型カイエンに乗る──スポーツカーブランドを支えるフラッグシップSUVの3代目が登場

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口当たりがよくなった? 新型カイエンに乗る──スポーツカーブランドを支えるフラッグシップSUVの3代目が登場

カイエン、ケイマン、マカン、タイカン……。近年のポルシェの車名には、東洋の言葉を語源にもつ、尻取りをすれば負けてしまうような最後に「ん」のつくものが多い。その先陣をきったのが「カイエン」だった。赤トウガラシのカイエンペッパーに由来する“刺激”を意味するものという。

2002年、911とボクスターというスポーツカー2本立てのビジネスに限界を感じていたポルシェが起死回生の一手としてSUV市場に送り込んだのがカイエンだった。ちょうど、初代のメルセデスのMLや、BMW X5といったプレミアムSUV が誕生し人気を博していた頃だ。スポーツカー専業メーカーであるポルシェがあえてSUVを作る、という商品戦略は見事にハマった。

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初代カイエンは、初年度からいきなり911のグローバル販売台数に匹敵する約2万5000台を供給。翌年度のセールスは4万台を超え、あっという間にポルシェの屋台骨になった。2010年に2代目へとモデルチェンジし、2012年の販売台数はなんと8万台を越えた。ちなみに2017年のポルシェのグローバル販売台数は約24万6000台。そのうちマカンが9万7000台、カイエンが6万4000台と、SUVの2モデルでおよそ65%を占めている。これらの稼ぎがあるからこそ、911や718などコストのかかる2ドアスポーツカーを作り続けられるのだ。

それゆえ3代目に失敗は許されない。その意志は明確にキープコンセプトのエクステリアデザインに見てとれる。以前、ポルシェのデザイナーに聞いた話だが、ポルシェのすべてのモデルには共通する“ポルシェDNA”が存在するという。例えばフロントフェンダーは、ボンネットよりも高い位置にあって必ず峰がなければならず、911にインスパイアされたサイドウインドウグラフィックや、クリーンなテールランプの造形、幅広くどっしり構えたリアフェンダーなどが新型でもしっかりと継承されている。

新型のボディサイズは、全長を63mm延ばし、全幅は43mm拡げて居住空間を拡大する一方で、全高を9mm低めてスポーティさを高めた。ホイールべースは先代と同じく2895mmながら、後席の居住性も大幅に改善されていた。またラゲッジルームの容量は、先代を大きく上回る745リッターで最大で1710リッターにまで拡大する。広くなっても重くなっては元も子もないので、外板パネルは総アルミニウム製に、ボディはアウディなどとの共同開発による最新の接合技術を用いたアルミとスチールとのハイブリッド構造を採用。車両重量は先代比で約65kg軽量化した。乾燥重量はカタログ値で1985kgと2トン切りのダイエットに成功、オプションが満載された試乗車の車検証を見ても車両重量は2040kgだった。

インテリアのデザインは、新型パナメーラ譲りのものだ。物理スイッチがずらりと並んでいた先代とは一変、エアコンの温度やオーディオのボリュームなど操作頻度の高いものにのみ物理スイッチが残されてはいるものの、基本的には12.3インチのタッチスクリーンを中心としたタッチパネルで操作を行う。メーターパネルは911譲りの5連式タイプで、中央のエンジン回転計だけがアナログ式、残りの4つは液晶パネルの組み合わせで、速度や燃費、ナビなども表示が可能だ。

試乗車はベースモデルのカイエンだった。先代から40ps/50Nm増強され、340ps/450Nmを発揮する3リッターV6ターボエンジンを搭載するモデルだ。同じユニットを使うパナメーラのものよりも10ps増えており、またトランスミッションもパナメーラが8速PDKであるのに対して新開発のZF社製8速AT、ティプトロニックSを組み合わせている。

ATを選択したのは重量物の牽引や低いギアでの悪路走行を見越してのもので、SUVらしくオフロードでの走行性能アップに寄与する。4WDシステムは、多板クラッチをアクティブ制御するポルシェ4Dシャシーコントロールを採用しており、状況に応じて最適に前後アクスルにトルク配分される。

エンジン特性としては、ベースモデルだけにものすごくパワフルというわけではないが、必要十分なものだった。静粛性は高く、普通に街中を流していると、ほとんどエンジンサウンドが聞こえないくらい。まるで普通のサルーンのようだ。またポルシェといえどもいまやADAS(先進運転支援システム)は必須アイテムとなりつつあり、アダプティブクルーズコントロールをはじめとするポルシェ・イノドライブなどを設定している。

ポルシェとしては走行性能の強化が最優先事項であると同時に、新型カイエンにはフラッグシップSUVとして、快適性、実用性の向上がミッションとして課されていることは想像に難くない。第一印象では、新型になって少し刺激が薄れてしまったかのように感じたのだが、しばらく時間をともにすると実はそうでないと気づいた。ひと口目の刺激をおさえ、万人受けする懐の深さを得たのだ。

より刺激を求める向きにはターボやのちにGTSが用意されるわけで、そう考えればベースのカイエンの味付けとしては、いいさじ加減なのだと思う。

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