アウディがポルシェと手を組んで開発したモンスター・ワゴン「RS2」を覚えているだろうか? 直列5気筒2.2Lターボは最高出力315psにまで引き上げられ、6速MTとクワトロシステムを組み合わせ、最高速度248km/hと0-100km/h加速5.8秒を実現。いわば今日のRSモデルの祖となる記念碑的なマシンである。この貴重なヒストリックモデルに、ドイツはノイブルクで試乗することができた。TEXT●小泉建治(KOIZUMI Kenji)
RSシリーズの歴史はここから始まった
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現在のアウディスポーツGmbHの前身であるクワトロGmbHが設立されたのは1983年。モータースポーツ活動を主たる目的とした会社であるが、転機が訪れたのは、RSの名を冠した初めてのモデル「RS2」をリリースした94年だろう。
そんな、RSモデルの祖とも言えるRS2に、アウディスポーツGmbHの本拠地であるノイブルクで試乗する機会に恵まれた。
RS2はA4の前身である80をベースにポルシェとの共同開発で生まれた。エンジンは直列5気筒DOHC2.2Lターボで、最高出力315psと最大トルク41.8kgmを発生する。6速MTを組み合わせ、当然ながら4輪を駆動する。
用意されたRS2は鮮やかなブルーのボディカラーをまとい、インテリアにも擦れや褪せや綻びは一切認められず、オドメーターはわずかに1万5000kmという極上コンディションである。
現代へと脈々と受け継がれているDNA
まだ新車の匂いすら漂っていそうなほど綺麗に保たれたコクピットに乗り込む。6速MTはゲート感が明確で、スルッと1速に入る。
強烈なスペックを誇りながらも当然ながらESPなどの電子デバイスを持たない。クワトロシステムを介するとはいえ、現代の最新技術に甘やかされた腕には、ちょっと手に負えないシロモノかも……と恐る恐るクラッチをつなぐと、アイドリングのままとくにエンジンがガクガクすることもなくスーッとボディが前に出た。
そのまま2速、3速とシフトアップする。貴重なビンテージモデルだけに床まで踏め付けるような真似はできないが、とにかく各ギヤでの伸びやかで力強い加速が印象的だ。そして乗り心地もすばらしく、けっして滑らかとは言い難い田舎道でも、サスペンションが見事に雑味を濾過してくれる。
いくらアウディスポーツGmbHが直接メンテナンスをしている優良な個体とは言え、四半世紀も前のクルマが、現代の感覚でもまったく問題なく乗れるどころが、十分に一級品と感じられるパフォーマンスを見せることには感嘆せざるを得ない。
そしてそれが、居住性やユーティリティ性にも優れたアバントボディで実現されているところに、現代のRSモデルとの血脈を感じさせる。この試乗の前後には、2019年には日本にも上陸する予定の最新RS4で移動していたのだが、RS4からRS2へ、そしてRS2からRS4に乗り換えたときにも、違和感はまったく覚えなかった。
現代のRSモデルにRS2のDNAが脈々と受け継がれていることを、強く感じさせられたのである。
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