昭和の時代によく見た「ゆっくり走ろう〇〇県」ステッカー。「法定速度を超えて走るのはやめようよ」の意味だが、クルマを運転していると「ゆっくりどころかゆっくりすぎでは?」と感じるドライバーをたまに見かける。今回はそんなお話。
文/今坂純也(DIRT SKIP)、写真/写真AC、イラストAC
あおり運転&イライラしたら負け!! のろのろ運転に出会ったときの対処法はどうすべきよ!!
■ゆっくり走ればいいってもんじゃない⁉️
3年ほど前に世間をにぎわせ、ニュースにもなっていた「10キロおじさん」。もちろん、速度10 km /hで走る健康的なランナーおじさんという意味ではない。
速度10 km /h前後でのろのろ走り続け、後続車が延々とつながって……という状況を作り出していた張本人だった。しかもこの「10キロおじさん」、追い抜くと激しくクラクションを鳴らして威嚇するという。
制限速度を超えた速度で走るのはもちろん違反だが、あまりに遅すぎる速度で走ることは交通渋滞を発生させ、他車の迷惑となる行為であることは確か。
■のろのろ運転を最低速度違反で取り締まれる?
のろのろ運転と思っていたら、実は法定速度が低速だったなんてこともある。一般道を走るときには標識を見落とさないように注意しよう
道路交通法第27条によって、高速道路には50km /hと最低速度が決められている。これは、標識や標示で特に速度指定のない本線車道に限ったもの。
よって、高速道路上では最低速度を下回る速度でののろのろ運転は取り締まりの対象となる。
では、一般道は? というと、自動車専用道路やバイパスなどの高速道路に近い場所を除いて、最低速度は決められていない。自動車専用道路やバイパスなどで最低速度が決められている場合は、標識の数字の下に青い線が引かれた最低速度標識で確認できるので見る機会があれば注意して見てほしい。
ちなみに、東京をメインとする“首都高(首都高速道路)”、近畿地方の“阪神高速(阪神高速道路)”などは“高速道路”とついているが、東名高速道路などと同じ高速自動車道ではなく、“自動車専用道路”である。
なので、首都高の最高速度は都心環状線(C1)で50km /h(一般道は60km /h!)、超タイトコーナーのあるジャンクションではそれ以下、片側3車線のほぼ直線だらけの湾岸線などはそれ以上……と最高速度は細かく設定されているが、最低速度はない。
つまり、一般道において、のろのろ運転を最低速度違反で取り締まることはできないのだ。
■追いつかれたクルマには2つの義務が定められている
一般道をのろのろ運転しているからといって最低速度違反での取り締まりはできないが、道をふさぐように走り、スムーズな走行の妨げとなる運転は“逆あおり運転”ともいえる。
また、意図的に遅い速度で走り続け、道路の左端に自車を寄せられるスペースがあるのに進路を譲らない行為は、道路交通法第27条“他の車両に追いつかれた車両の義務”違反に該当する場合がある。
“他の車両に追いつかれた車両の義務”を要約すると、次の2つの義務が定められている。
1. 最高速度が高い車両に追いつかれた車両は、後方からの車両が追い越しを開始した場合、追い越しを終了するまで加速してはいけない。
2. 最高速度が高い車両に追いつかれた場合は、できるだけ道路の左側端に寄って(追い越しできるスペースを作る)、後方からの車両に進路を譲らなくてはならない。
2を読むと、「そうか、後方から来たクルマに追いつかれたら道を譲らないといけないのか」と思うだろうが、冒頭の“最高速度が高い車両”という言葉に注意。最高速度が高い車両=制限速度超過の車両ではないということだ。
つまり、50km /h制限の道路を他車が40km /hで走行中、後方から50km /hで走行して追いついた場合には、前車はできるだけ左側端に寄って道を譲らなくてはいけない。
しかし、同じ50km /h制限の道路を50km /hで走行中の他車に、後方から自車が80km /hで走行して追いついたとしても、道を譲られないのは当たり前。前車に “他の車両に追いつかれた車両の義務”は発生しないので違反にはならないのだ。なぜならこの“義務”は、法定速度や指定速度内において発生するもの。
この場合、ただ単に自分が速度超過しているだけで、前車に落ち度はまったくないことを認識しておきたい。追い越しさせないからといってイライラするのはお門違いなのだ。
■高速道路など“車両通行帯のある道路”では?
追い越し車線でのろのろ運転をしているクルマに遭遇したら走行車線から追い抜いて問題はない。しかし、その直後に追い越し車線に車線変更した場合は違反となってしまうので注意
通常、高速道路では走行車線を走っているはずなので、前車に追いついたら右側の追い越し車線を使って追い越していけばいい。
このシーンでも、走行車線を走るクルマが後続車に道を譲る義務はない。なぜなら、右側に追い越し車線があるから、追いついたクルマはここを使って追い越していけばいいだけの話だ。
もちろん、追い越す側は追い越し車線を使って前車を追い越したら、すみやかに元の走行車線に戻るべき。そのまま追い越し車線を走り続ければ、自分自身が通行帯違反となる。
そして、たまに耳にするのが「追い越し車線をのろのろ運転で走っている前車が譲らない」というもの。
高速道路において、自車は基本的に走行車線を走っているのだから、右側の追い越し車線をのろのろ運転で走るクルマはそもそも関係ないはず。
右側の追い越し車線を走るのろのろ運転のクルマを横目に、そのまま走行車線を制限速度内で進み、右側の追い越し車線に出ることなく走行車線を使って追い抜いていけばいいだけだ。これは違反にならない。
つまり、「追い越し車線をのろのろ運転で走っている前車が譲らない」というのは、自車が追い越し車線をずっと走ってきたのでは? これは、自分が通行帯違反となるので注意したい。
まあ、自分はとても急いでいるのに、自車のスムーズな通行(速度超過になってませんか?)を阻むようなのろのろ運転にイライラする気持ちもわからないでもない。
だが、イライラすると逆に自分が速度超過や通行帯違反となったり、前車にぴったりつけて走ったために「あおり運転された」と認識され、通報されないとも限らないので注意してほしい。
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みんなのコメント
タイトルの答えが全く描かれていないダメ記事。
化石の道路交通法を現代の道路、タイヤ、クルマそのものの品質向上に合わせて柔軟に改定するべき。
60年以上変わらぬ最高制限速度をいつまでも変えず、道路上の交通阻害を誘発する法律と遵法を金科玉条の如く他社の迷惑を顧みない風潮は逆に問題。