この記事をまとめると
■新型ステップワゴンを販売前に徹底研究
新型ステップワゴンは先代の秘密兵器「わくわくゲート」が廃止! ものすごーく便利なのに「不評」だった理由とは
■トヨタのノア&ヴォクシーの数値とも比較した
■今年はミニバン市場の激戦が予想される
販売目前! 大注目の新型ステップワゴンをいち早く実測
この春、ファミリーミニバンの主役、Mクラスボックス型ミニバンが火花を散らすことは間違いない。そう、2022年1月に4代目となるトヨタ・ノア&ヴォクシーが登場し、5月中旬には6代目新型ステップワゴンがデビューすることになっている。ノア&ヴォクシーに関してはすでにすべての情報があり、筆者は試乗も行っているが、新型ステップワゴンについてはまだ一部の情報しか出ていない。が、ファミリーミニバンの肝となる乗降性や居住性、荷物の積みやすさと言ったパッケージングについて、筆者は現時点でほぼすべてをつかんでいる。ここではその点について、いち早くノア&ヴォクシーとステップワゴンを比較し、報告したい。
まずは両車の概要から。ノア&ヴォクシーの新型は全車車幅1730mmの3ナンバーとなり、パワーユニットはガソリン車とHVを用意。先代の弱点だった先進運転支援機能については、いきなりトヨタ最新のトヨタセーフティセンスを採用。さらに最先端のハンズオフドライブも可能になるアドバンストドライブやアドバンストパークまで用意しているのが特徴だ。また、先代でも2列目キャプテンシートは前後左右にスライドしたのだが、ロングスライドさせるためには2座のキャプテンシートを中寄せする必要があり、ロングスライド時には折り畳み式センターテーブルが使えないといった使いにくさもあったわけだ。が、新型ではキャプテンシートの横幅をほんの少し狭めることで、なんとほかにはない、中寄せスライドなしのストレート超ロングスライド機構を実現している点にも注目だ。
一方、ステップワゴンはと言えば、ガソリン車とe:HEVと呼ばれるHVを用意するのは先代同様だが、じつは使いやすかった、バックドアが左右に分割され、縦にも横にも開き、バックドアからも乗降が可能で、車体後部にスペースのないシーンでもバックドアが開けやすい「わくわくゲート」を廃止。そのかわり!? ついに先代の弱点のひとつだった、左右にスライドしなかった2列目キャプテンシートの中寄せ横スライド機構をシート側に持たせて実現。つまり、キャプテン、セミベンチシートの両方の使い方が1台でできることになり、子育て世代が子供のおむつ替えをするような場面でも便利になっている。少なくとも先代ノア&ヴォクシー同等のシート&スライドアレンジが可能になったということだ。
さて、筆者はホンダの青山本社ショールーム訪れ、展示されている新型ステップワゴンを徹底実測&チェックした。それを踏まえ、両車の乗降性、居住性、実用性、荷物の積載性にかかわる各部を比較することにしよう。ちなみにこの日は懐かしい、回転対座シートを備えた初代ステップワゴンも同時展示されていた。
乗降性にかかわるスライドドア部分のステップ高は、ステップワゴンが先代の385mmに対して390mm/段差なし。ノア&ヴォクシーは先代の360mmから380mm/段差なしだからほぼ同等。低床自慢のステップワゴンに対してノア&ヴォクシーもかなり「攻めた」低床を実現していることになる。しかしそれでも高い!! とおっしゃる高齢者、足腰の弱い方に向けては、ノア&ヴォクシーは工場オプションとして非パワーの”からくり”を使ったユニバーサルステップ(33000円)を用意。先代用のパワーステップは20万円近くして、導入のハードルが高かったものの、この価格なら一気に装着しやすくなるはずだ。
もちろん、ステップワゴンにもオートサイドステップが純正アクセサリーとして用意されているが、価格はまだ未公開ながら、パワーというだけあって、けっこう高くなると予想する。
スライドドアからの子供や高齢者の乗降にうれしいBピラーにあるアシストグリップは、ステップワゴンは一般的な高さ、形状だが、ノア&ヴォクシーはアシストグリップが長く、下半分は子供用として、子供用自転車のハンドルグリップと同じグリップ径として、高齢者を含む誰もが握りやすい形状になっているのがうれしいポイントだ。
が、ステップワゴンもやることはちゃんとやっている。そのひとつがパワースライドドアの室内側開閉スイッチだ。先代ステップワゴン、そしてノア&ヴォクシーは、2列目席の乗員が乗り込んだあと、自身で開閉する場合、常識的なドア側のレバーで操作することになる(運転席でも操作できる)。しかし新型ステップワゴンではBピラーにもスライドドアのパワースイッチを用意。ドア側のレバー操作より遥かに自然な位置にあり、わかりやすいプッシュ操作でラクラク開閉できるのだ。この点ではステップワゴンが優れていると言っていい。
ミニバンの要、シートサイズと車内空間の広さを検証
次に全列のシートサイズだ。1列目席はステップワゴンが座面長520mm、座面幅500mm、シートバック長560mm。ノア&ヴォクシーは同500mm、500mm、630mm。ステップワゴンのシートバック長が低いのは、後席からの視界の確保、クルマ酔いのしにくさであると説明される。ちなみに座面の長さがかけ心地に有利なことは言うまでもない。
2列目キャプテンシートはステップワゴンが座面長510mm、座面幅510mm、シートバック長610mm。ノア&ヴォクシーは同500mm、490mm、600mm。ノア&ヴォクシーのシート幅がやや狭いのは、すでに説明した、ストレート超ロングスライド機構を可能にするためと考えていいだろう。とはいえ、実感として、ノア&ヴォクシーのキャプテンシートが先代より狭くなった!! とは感じにくいから心配無用だ。なお、両車のキャプテンシートはどちらもスライド位置にかかわらずシートベルトをかけやすい内蔵式となる。
居住空間はどうか。両車、2/3列目席フロアがフラットであるところは同じで、身長172cmの筆者のドライビングポジション背後の2列目キャプテンシートに着座すれば、ステップワゴンは頭上に260mm(先代290mm)、膝まわり空間はロングスライド時で最大600mm。ノア&ヴォクシーは頭上に260mm(先代260mm)、膝まわり空間はストレート超ロングスライド時で最大600mm。つまり最大膝周り空間は両車まったく同じ。新型ステップワゴンの2列目席頭上空間が狭まった理由は、かけ心地をよくするため、シートクッションの厚みを増したからである(室内高は新型ステップワゴンが未公表なので比較しないが、どちらもボックス型ならではのゆとりあり)。
3列目席はどうか。先代同様に床下収納タイプとなるステップワゴンは座面長430mm、座面幅1190mm、シートバック長500mm。ノア&ヴォクシーは座面長430mm、座面幅1180mm、シートバック長515mm。サイズ的にはほほいっしょとなっている。
筆者が3列目席に着座した時の頭上、膝まわり空間は、ステーションワゴンが頭上に140mm、2列目席膝まわり空間200mm時で240mm(合計440mm)。ノア&ヴォクシーは頭上に200mm、2列目席膝まわり空間230mm時で220mm(合計450mm)。つまり、頭上方向ではノア&ヴォクシーが、膝まわり空間では同等ということになる。
が、上下の調整ができない後席で重要なのが、フロアからシート先端までの高さ=ヒール段差だ。ここが高いほど、着座しやすく、立ち上がりやすくなり、より自然な着座姿勢がとれることになる。その点では、ステップワゴンは2列目席が340mm、3列目席330mm。ノア&ヴォクシーは同、370mm、330mmと、2列目席のヒール段差では優勢ということだ。ただし、写真を見てもわかるように、3列目席の座面の厚みは、床下格納の利を生かしたステップワゴンのほうは明らかに厚みがあり、かけ心地自体はステップワゴンのほうがよいと感じられそうだ。
最後にラゲッジスペースを比較する。ここでのトピックは、ノア&ヴォクシーの場合、パワーバックドア、非パワーバックドアのどちらでも、任意の位置で開閉操作を止められる便利さが加わったこと。また、ステップワゴンはわくわくゲートを廃止したことでバックドアが軽くなったのと同時に、パワーバックドアのみだが、これまた任意の位置で開閉をメモリー式で止められる、わくわくゲートのサブドアの代わりとなる機能を身に着けたところである。
まずは3列目席使用時だ。ステップワゴンは重い荷物の出し入れ性にかかわる開口部地上高505mm奥行き420mm、幅1200mm。ノア&ヴォクシーは開口部地上高500mm、奥行き410mm、幅1280mm(高さは呆れるほど高いのであえて未掲載)。
それが3列目席をステップワゴンは床下に、ノア&ヴォクシーは左右にワンタッチで跳ね上げて格納すれば、ステップワゴンの奥行きは910~1600mm(2列目席スライド位置による)、ノア&ヴォクシーは900mm~と、どちらも広大だ。ちなみにノア&ヴォクシーは床下収納あり、ステップワゴンはそこが3列目席の格納場所になるので、なしである。床下収納が必要か、すっきり3列目席を格納したいか……の究極の!? 選択になる。
なお、パワーバックドア装着車同士の比較では、ノア&ヴォクシーが優勢だ。というのは、パワーバックドアスイッチの位置で、ステップワゴンは通常通りバックドア側にあり、しかしノア&ヴォクシーはボディサイド後端に設置。そのほうが、巨大なバックドアを開ける際、バックドアが操作者への接触が避けられるからである。
というわけで、新型ステップワゴンとノア&ヴォクシーの乗降性や後席居住性、ラゲッジルームの使い勝手などについて説明してきたが、多くの項目で似たり寄ったりとなるものの、実用性でひとつだけ、大きな違いがある。それはHV(e:HEV)モデル同士の場合、ノア&ヴォクシーにあるAC100V/1500Wコンセントが、新型ステップワゴンではオプションから消えていること(フル装備の展示車になかった)。アウトドアではもちろん、災害時にも大いに役立つ装備だけに、ぜひと復活してほしいところである。
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