サクラ以外のEVがぜんぜん売れていない日本
日本国内の最直近3月度の電気自動車の販売台数、および人気のEVの詳細が判明しました。とくに、EV販売台数が前年比で低下するという兆候が止まらないという厳しい流れのなか、テスラに対する厳しい見通し、中国BYDが販売台数を大きく伸ばすという最新動向も含めて解説します。
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まず、最直近である2024年3月度のバッテリーEVとPHEVの販売台数の合計1万2793台と、2024年に突入してから最高の販売台数を更新しました。ところが前年同月と比較するとマイナス15.6%という販売台数の減少を記録しています。
通常のマーケットであれば、年末にかけて販売台数が最大化し、1月以降は販売台数が落ち込むものの、この日本に関しては、そのほかのマーケットとは異なり、年度末が3月に該当するということから、この3月こそ自動車販売が最大化するわけであり、残念ながら前年を超えることができなかったという点で、4月以降も幸先の悪い見通しとなる予感です。
次にこのグラフは、バッテリーEVとPHEVの合計が、自動車販売全体と比較してどれほどの割合を占めているのかの変遷を示した電動化率を示したものです。黄色のラインで示されているとおり、最直近の3月については3.33%と、歴史上最高の電動化率を達成したものの、2022年12月と比較しても後退している様子を確認可能です。
他方で、前年同月である2023年3月の電動化率は3.17%であったことから、EVの販売割合自体は若干の上昇トレンドです。いずれにしても、この4月以降、電動化率上昇のトレンドが続くのか、いつになったら歴史上最高の4.12%のバリアを突破することができるのかに注目です。
次に、そのEVのなかでも、とくにバッテリーEVの販売動向についてを詳細に確認していきたいと思います。
まずこのグラフは、バッテリーEVの販売台数を、乗用車と軽自動車それぞれで比較したものです。
注目すべきは、黄色で示されているバッテリーEVの販売比率であり、1.94%と、いまだに2%を突破することができていない状況です。
その一方で、前年同月に関しては2.01%であったことから、確かにPHEVも含めると販売比率は上昇しているかに見えていたものの、バッテリーEV単体で行くと、販売比率でも前年割れです。やはり明確に、日本国内のEVシフトが停滞、というよりもむしろ後退し始めている様子が見て取れるわけです。
他方で、日産サクラなどの軽EVを除いた、乗用車セグメントのEV単体の販売台数を示したピンクのラインを追ってみると、3月は4000台弱と、前年はおろか2年前と販売台数が変わっていません。つまり、2年前よりもバッテリーEVの販売台数が増えている理由というのは、シンプルに「日産サクラにより軽EVが売れただけ」であり、乗用車のバッテリーEVの販売台数は、2年前からまったく変化していないのです。
この2年前に関しては、環境省が主導して最大80万円という電気自動車購入に対する補助金が倍増された年であり、その後も経産省が主導する形で、同程度の補助金額が維持されていたものの、2024年3月末までは、基本的に同様の補助金額が維持されていたわけです。
つまり、何がいえるのかといえば、この2~3年ほどのEV販売台数を追っていくと、日産サクラに対する55万円もの軽EV補助金というのは、そのサクラの販売台数を見る限り、かなりの効果を発揮している可能性があるものの、乗用車EVに対しては、少なくとも販売台数を増やすという有効な施策にはなり得ていないのではないか、ということなのです。
さらにこのグラフは、その乗用車セグメントのEVのなかでも、さらに日本車と輸入車でわけたものです。この通り白で示された輸入車のEVに関しては、前年同月を大きく上まわる販売台数を実現し、歴史上最高の販売規模にまで到達しています。
よって、より厳密にいえば、乗用車セグメントのEVの販売が伸びていないのではなく、「日本車のEVの販売がまったく伸びていない」というよりも、ピンクの販売台数の変遷を見る限り、むしろ販売台数が減少してしまっているという点こそ、この日本車天国である日本市場で、なぜEVが普及していかないのかの最大の理由であるということが見て取れるわけです。
いずれにしても、この日本メーカーのEVの販売台数が増えていかないことには、日本のEV普及が伸びていくことは絶対にあり得ないわけです。
ちなみに、この日本市場におけるEV、とくにバッテリーEVの普及率が、世界と比較してどれほどなのかを比較します。このグラフは、欧米中という主要先進国、およびタイという新興国、そして世界全体平均を日本と比較したものです。
このとおり、緑で示された日本については、世界と比較してもEV普及率で大きな差がついてしまっている様子を確認できます。まだ最新のデータが公開されていないものの、基本的にEV普及率がもっとも停滞する1月の、世界全体のシェア率が10%であったことを踏まえると、やはり日本が根本的にEV普及で遅れてしまっているという状況です。
それでは、この日本国内においてどのような電気自動車が人気となっているのかについてを確認しましょう。まずこのグラフは、主要な自動車メーカー別のバッテリーEVの販売台数の変遷を示したものです。
このとおり日産に関しては、月間で4000台を超えるバッテリーEVを発売することに成功しており、日本国内で売れたバッテリーEV全体のうちマジョリティを日産が占めているとイメージしてみると、それこそアメリカ国内における、テスラと同じようなポジションにいることが見て取れます。
また、その圧倒的シェアを誇る日産を除いてみると、やはり日産サクラの兄弟車であるekクロスEVであったり、ミニキャブミーブをラインアップしている三菱が第2位にランクイン。そしてそのあとを追うのがテスラの存在です。
ちなみに三菱に関しては、商用軽配送EVであるミニキャブEVがいまだに月間で400台近く売れているという点は重要です。つまり、古いEVであったとしても、いまだに一定数が売れ続けているということは、この商用軽EVセグメントの需要が大きいことを示しているわけです。よって、このセグメントに新型EVを投入するホンダのN-VAN e:に関しては、かなりの需要があるのではないかと期待することができるでしょう。
テスラとBYDで大きな差がついた2024年3月のEV販売状況
次に、問題は3月で販売台数が順調かに見えるテスラの存在です。このグラフは、テスラの日本国内の月間販売台数の変遷を示したものです。
このとおり、テスラに関しては輸送の関係上、月間販売台数にばらつきがあるために、月間ベースでの販売台数をあれこれいっても、正確な比較とはなりません。
そこで、四半期別の販売台数の変遷を見てみるとこのとおり、2024年第一四半期に関しては1340台と、前年同四半期である2023年Q1と比較しても販売台数を落としてしまっていることが見て取れます。
他方で、テスラはグローバル全体においても販売台数を落としていることから許容範囲であると感じるかもしれません。そもそも日本国内ではこれまでテスラの販売が伸び悩んでいたわけであり、想定以上の落ち込みも見られなかったという点は、テスラジャパンとしては、意外に上手くやった四半期だったといえるのかもしれません。
ただし、このテスラジャパンが苦しいのは第二四半期です。すでに新型モデル3(ハイランド)の初期需要は売り切れているということを踏まえると、ここから新型モデルY(ジュニパー)の登場まで、なんとかして新規需要を開拓する必要があるわけです。
ちなみにスーパーチャージャーの設置動向に関しては、Q1終了時点で全国に113カ所のスーパーチャージャーが建設されており、そのうちの111カ所が稼働している状況です。その普及の変遷を見てみても、設置速度が加速している様子が見て取れるでしょう。
個人的には、2024年度中にも北海道にスーパーチャージャーが追加される見込みであることから、来シーズンの北海道遠征までに間に合わせてくれることに期待したいところです。
また、車種別の販売動向として、とくに気になっているのがトヨタの存在です。トヨタ&レクサスについては、現在bZ4X、UX300e、およびRZをラインアップしているものの、すでにデータが判明している2月については、それぞれ124台、18台、そして58台と、まったく販売台数が伸びていない状況です。
とくにbZ4Xに関して重要なのは、11月末にもモデルチェンジを行いながら、KINTOを通じたカーリースだけではなく、一般の売り切り販売を行い始めている点です。つまり、bZ4Xがこれまで売れていなかった理由というのは、その販売方法が理由ではなく、bZ4Xという商品自体に問題があるということを意味するわけです。
トヨタは2022年5月の発売当初、その2022年度における日本市場への割り当てを5000台としていたものの、販売再開後から現在に至るまで、いまだに1500台程度という販売台数であり、明らかにトヨタの想定以下の販売規模に留まっています。販売戦略の見直しは避けられないでしょう。
他方で、乗用車セグメントで唯一、販売台数の大きな増加を記録したのが中国BYDです。3月単体で353台と、歴史上最高の販売台数を更新しており、レクサスを含めたトヨタ全体の販売台数を大きく超えているレベルです。
なんとQ1通しでも、BYDはトヨタ越えを実現しているレベルであり、BYDが順調に販売台数を伸ばしている様子を確認可能です。
ただし、BYDに対する逆風というのが補助金の減額です。4月以降、BYDがどれほど販売ペースを維持することができるのかには注目です。
また、4月以降については、いくつかの輸入車EVの補助金が減額されてしまうことから、これまで日本市場のEV販売に貢献してきていた輸入EVの減速、つまり日本市場のEVシフト全体への影響の可能性もあることから、その最新の販売動向には注視していく必要があるでしょう。
いずれにしても、2024年3月の国内EV販売動向については、前年を下まわる販売規模に留まってしまっているという、明確なEVシフト停滞の様子が見て取れるだけではなく、好調だった輸入EVに対する補助金が減額されることで、さらにEVシフトが減速する可能性があるという点は、極めて厳しい動向であると言わざるを得ません。
その一方で、唯一期待できそうなのが、ホンダの商用軽EVであるN-VAN e:です。ミニキャブミーブの売れ行きを見れば、最新型であるN-VAN e:がスマッシュヒットを飛ばす可能性があるのではないかと感じます。
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みんなのコメント
遠出しようにも渋滞にハマるとあっという間にバッテリー無くなるし。
充電ステーションも心配だし、利便性が感じられない。