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マツダ「ロータリーエンジン」復活、なぜ今?  規制や経営合理化に翻弄 マツダが守ったロータリーの火

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マツダ「ロータリーエンジン」復活、なぜ今?  規制や経営合理化に翻弄 マツダが守ったロータリーの火

ロータリーエンジン復活

マツダの欧州法人であるマツダ・ヨーロッパが、ベルギーのブリュッセルモーターショー(2023年1月14~22日)で「MX-30」レンジエクステンダーを世界初公開することを明らかにした。

【画像】マツダの代名詞「ロータリーエンジン」復活【RX-7やRX-8などロータリーエンジン搭載車を見る】 全118枚

レンジエクステンダーとは、航続距離を延ばすためにエンジンなどの原動機を発電機専用で搭載するタイプのEV(電気自動車)を指す。

マツダの場合、搭載するエンジンはロータリーエンジンだ。

マツダのロータリーエンジン搭載車は、2003年から2012年まで合計約19万台が販売された「RX-8」を最後に、これまで約11年間のブランクがある。

なぜ、マツダはこのタイミングでロータリーエンジンを復活させたのだろうか?

いま思えば、マツダのロータリーエンジンの歴史には紆余曲折があった……。

マツダのロータリーエンジンは、60年代にドイツのNSU社およびバンケル社との間で技術提携を結ぶことから始まるが、量産化に向けた技術的な課題を開発するハードルは高く、10A型エンジン搭載の「コスモスポーツ」が登場したのは、技術提携から6年後の1967年だった。

その後、70年代から90年代にかけてマツダはロータリーエンジンの独自開発を進めていく。

だが、自動車産業界全体が排気ガス規制の荒波にもまれる中、グローバルでロータリーエンジンを量産車向けに大量生産する企業はマツダのみとなる。

次期「RX-7」は叶わぬも……

そうした中、マツダがロータリー存続の危機に直面したのが90年代半ば過ぎであった。

「RX-7」の生産終了に伴い、次期RX-7をイメージして1995年の東京モーターショーに出展したコンセプトモデルが「RX-01」だった。

しかし、当時のマツダはフォード傘下にあり、経営の合理化によりプロジェクトは大幅な縮小を余儀なくされた。

それでもロータリーの火を消してはならないとするマツダ関係者は、マツダ上層部と粘り強く交渉。結果的に、量産車は「RX-7」のような2ドアスポーツカーではなく4ドア・4シーターに変更され開発のGOがかかる。

コンセプトモデルとして登場したのが、1999年の東京モーターショーに出展した「RX-EVOLV」だ。これが2001年の北米国際自動車ショー(通称デトロイトショー)出展の「RX-8」につながる。

筆者(桃田健史)は、アメリカ国内でおこなわれた「RX-8」の一般サーキットを使った開発現場に、たまたま別件があり居合わせた。

その際、マツダが北米市場を意識して使っていた比較車はBMW 3シリーズだった。

結局、「RX-8」量産車登場は、「RX-EVOLV」登場の4年後となる2003年のデトロイトショーまで待たなければならなかった。

その後、カリフォルニア州ラグナカで開催された「RX-8」国際試乗会に参加したが、その際にも「RX-8」量産に向けた苦労話をマツダ関係者から数多く聞いた。

水素とガソリンの二刀流に

「RX-8」では水素燃料を使ったリース車両も実現している。

2003年の東京モーターショーに登場した「RX-8ハイドロジェンRE」である。

当時、マツダの他にBMWなどが、水素を内燃機関で使う次世代車開発を進めていた。

ちょうど燃料電池車のプロトタイプが登場し始めた時期で、自動車向けの水素供給がグローバルで活発に議論された時期だった。

コストの高い燃料電池車に比べて、水素燃料車に対するメリットがあると考えられていた。

マツダ本社が技術詳細を公開する定期刊行物のマツダ技報の記載内容を要約すると、「レシプロエンジンは点火プラグや排気バルブが高温になりやすく、吸気行程中にバックファイアが起こりやすい。一方で、ロータリーエンジンは構造上、比較的低温の吸気室に水素を吸収することができるのでバックファイアを回避しやすい」と説明している。

実際、筆者は「RX-8ハイドロジェンRE」を公道で試乗している。

特長は、ガソリンと水素をレバー1つで走行中でも切り換えることができる点だった。

水素燃料になると一気にパワーが落ちる感じだったが、普通の運転ならばまったく問題ないと感じた。

当初計画では、北欧から大量受注があるはずだったが、先方の施策が変更となり輸出数は限定的となった。

ロータリーエンジンの活路

2013年には「デミオEV」レンジエクステンダーとした試作車にも試乗した。

ロータリーエンジンは車体後部の下側に搭載され、走行中の音はとても静かだった。

当時、マツダはすでに「CX-5」から第六世代となり、スカイアクティブが登場しマツダのブランドイメージは刷新された。

ロータリーであるスカイアクティブRについて、レンジエクステンダーのみならず、2015年の東京モーターショーで出展した「RX-VISION」に注目が集まった。このモデルは次期「RX-9」ともいわれた。

さらに時代は進み、2019年に発表された中期経営計画の中で、ついに「マルチ×EV化」という表現でレンジエクステンダーとしてロータリーエンジンの復活が明言された。

直近では、2022年11月に中期経営のアップデートが発表されている。

その中では時代が大きく電動化にシフトする中、2030年までの3つのフェイズに分け、2030年時点での電気自動車の想定比率をマツダとして25-40%と幅を持たせた目標を掲げた。

これは、ウクライナ情勢やコロナ禍に見られるように、世の中は先読みができない時代であり、電動化についてはマツダとして持てる技術を総動員してフレキシブルな対応をする必要があるという判断からである。 

そうした多様なパワートレイン戦略の中で、マツダのブランドイメージを担うロータリー復活のタイミングとなったといえるだろう。

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みんなのコメント

95件
  • 「ロータリー復活」、有史以来の謎、ベストカーがフィクションでないことが証明されてしまった。これは悲報である。それにしても発電機になり下がったワンケルを有り難がる人間が居ることに驚愕する。
  • 発電用?何か微妙
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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