この記事をまとめると
■日本の基幹産業は自動車だと言われるようになって久しい
市場を切り開いた偉大なクルマが敗北! 「後出しじゃんけん」でバカ売れしたクルマ4選
■自動車産業は戦後の高度経済成長期に大きく発展した
■日本の自動車メーカーの強味は「人の力」
産業の発展により自動二輪車・自動三輪車・四輪車メーカーが合併
日本の基幹産業は自動車。そう言われるようになって久しい。
最新技術では、各メーカーがハイブリッド車やプラグインハイブリッド車の技術で世界をリードする一方で、マツダ・ロードスターのようなユーザーの魂に訴えるようなスポーツカーもある。日野やいすゞなど商用車分野でも良質な製品を世に送り続けている。
長年に渡り、欧米メーカーに追いつけ・追い越せと切磋琢磨してきた日本の自動車メーカー。また、2010年代以降になると、今後は中国企業に後を追われる立場になっても、日本の自動車産業が世界トップクラスの技術開発や販売実績を維持している。
なぜ、日本で自動車産業がここまで発展することができたのだろうか?
筆者は、国内外の自動車関連博物館に足を運ぶことが多い。自動車関連の取材などで悩みや迷いが生じた時、改めて日本の自動車産業が歩んできた道のりを見つめ直すことで、自らのこれから進むべき道筋が見えてくるように思うからだ。
日本の産業史を150年ほど前から振り返ってみると……。
明治維新によって日本は西洋からの技術を積極的に取り入れた結果、江戸時代に比べると、まさに産業革命のような状況になった。
外貨を稼ぐ主力産業としては、繊維、そして造船が日本を支えてきた。それが戦後の高度経済成長時代になると、国内市場向けとして、大衆への消費財の家電や自動車が大きく伸びた。
その過程で、政府が進める日本産業強靭化に関する施策も関係して、自動二輪車・自動三輪車・四輪車のメーカーの合併となり、自動車産業は日本の主軸産業となるべく基盤が整っていく。
ただし、自動車メーカーが外貨を稼ぐために海外進出が始まったのは1970年代に入ってからであり、主にアメリカ市場だった。70年代といえば、排気ガス規制やオイルショックによって排気量が大きなアメ車が大きな展開期を迎えた時期であり、小型で廉価な日本車の必要性が高まった。
日本の自動車メーカーの強味はなんといっても「人の力」
さらに、日本の自動車メーカーが欧米での現地生産は始めるのは1980年代になってからで、アメ車メーカーの従業員の間では自らの職が日本車によって奪われる危険性があるとして、日本車不買運動が起こる。
こうしたアメリカでの厳しい体験をもとに、欧州、中南米、中近東と日本の自動車メーカーは積極的に活動の範囲を広げていった……。
こうした博物館での疑似体験だけではなく、筆者がリアルタイムで日本の自動車産業の現状を体感するのは70年代後半からだ。
商品開発、実験、マーケティング、モータースポーツなど、さまざまな分野でこれまで日本の自動車産業と深く関わってきた。
その上で、日本の自動車メーカーの強味はなんといっても「人の力」だと思う。
嚙み砕いて言えば、従業員の当事者意識である。
欧米では自動車産業に限らず、経営側と従業員側に大きな壁があるように感じられるが、たとえばホンダ創業者の本田宗一郎氏が作業服を来て現場の従業員と同じ目線で語り合うなど、会社に関わる全員が一丸となることで、会社が将来向かう方向について社員が目途をつけやすく、「わが社」意識が高まったことが、クルマ作りや販売店のネットワーク作りを粘り強く続けることが出来たのだと思う。
ところが、近年では環境・社会・ガバナンスを重んじるESG投資が自動車産業を経営する上での大きな指標になるなど、経営型と従業員型との”会社のこれから”に対する意識のギャップが生まれているのが実状だ。
100年に一度と言われる、自動車産業変革期の真っ只中にいる今、日本の自動車産業がサスティナブルに(持続可能なかたちで)成長していくのは、今一度、自動車産業に関わる人たちが当事者意識を持つ必要があると強く思う。
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技術者は鉄道、自動車で食うしかなかった。