バイクを愛する女性たちの活動を後押ししてくれる団体「WIMA」をご存知だろうか。正式には「国際女性オートバイ協会(Internationai Womens Motorcycle Association)」。バイクを愛する女性たち同志をつなぎ、女性全般の幸福を促進することを目的に、日本を含め世界40の支部で活動をおこなっている。今回は、その活動の一環としてベルギーから日本を訪れた2人の女性ライダーに話を聞いた。
Trui Hanoulle(以下、トゥルイ)さんは、写真家でグラフィックデザイナー。WIMAベルギー支部の代表を20年つとめていた経験もある。もう一人のGaea Schoeters(以下、ガイア)さんはフリーランスのジャーナリスト・作家で、オペラの執筆もおこなっている。
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「バイクさえあればどこでも行ける」というふたりは、ベルギーを拠点に世界中をバイクで文字通り駆け回り、女性ライダーの輪を広げている。そんなふたりだが意外にも日本は初めてだそうで、今回はWIMAを通じてヤマハ発動機の協力のもと『トレーサー9 GT』でツーリングを楽しんだそうだ。
帰国が差し迫るタイミングで、静岡県磐田市にあるヤマハコミュニケーションプラザを訪れたふたりに話を聞くことができた。バイクやツーリングの醍醐味、そして女性とバイクの関係性とは。
◆7か月で3万kmをバイクで駆け抜けた
「とにかく日本の道路は信号が多いですね!」と話し出したのはトゥルイさん。「今回は大きなバイク(トレーサー9 GT)だったし、楽しく走るコツを掴むのに時間はかかったけど、日本の道はとてもメンテナンスされていて安全です。なるべく細い道を探しながら、3500kmくらい走りました」と教えてくれた。
ガイアさんは「日本の女性ライダーとも一緒に走りました。皆さんとても丁寧に乗るんですよ。峠になると急にピュンとなりますけど(笑)。日本は免許を取得するのが大変だと聞いています。それが乗り方にも現れているんでしょうね。(今回のツーリングで)バイクの大きな事故を目の当たりにすることもありませんでした。インドではこうはいかないでしょうね」と、日本ならではの特徴を話した。
ふたりが出会ったのは、トゥルイさんがベルギー支部代表を務めていた当時のWIMAだったそう。ガイアさんが加盟してからふたりで様々な国を訪れた。3回目の長距離ツーリングでは7か月で3万km、ベルギーからトルコ、イラン、ウズベキスタン、ドバイ、オマーン、イエメンと駆け抜け、その旅の記録を1冊の本にまとめた。
日本に居ると考えられないほどの超長距離ツーリングだが、そのお供として選ぶバイクは日本車が多いのだという。「その時は1976年式のヤマハ『XT500』でした。ベリーグッドバイク。ただキックスタートだけが難点でした。道がないような所を走るので、斜面とか砂利とか、40度の斜面とか、砂漠の真ん中とかで止まったときにキックスタートだと疲れちゃう。キックに救われる時もあるから、セルと両方あると良いですね」(ガイアさん)。
次に選んだのはスズキだったそうだが、バイク選びの基準は「軽いこと」。「バイクが軽ければ、オフロードでもアドベンチャーでも走れる」とのことだ。今回の旅のお供は大柄なトレーサー9 GTだったが「とにかく快適。雨もへっちゃらだった」と話すガイアさんだが、「だけどヤマハなら、ものすごく軽いテネレ(テネレ700)があったら理想ですね」とヤマハへの要望も。
またふたりでツーリングする際には必ず同じ2台を選ぶのだそう。「そうすれば、スペアパーツを共有できるから、荷物を少なくできるんです。一台にトラブルがあっても、もう一台を見ながら直すことができるでしょう」とガイアさんは笑う。もはやライダーと言うより、冒険家と言った方が正しいかもしれない。
◆「私たちは生まれつきの旅人なんです」
話を聞いていると、ふたりとも「生まれながらのライダー」だと思ってしまうが、意外にもバイクに乗り始めたのは社会人になってから。ただ、ふたりは声を揃えていう「私たちは生まれつきの旅人なんです」と。旅をする手段としてバイクを選んだら、それが生涯のパートナーになった。ガイアさんは語る。
「私は“ライディング”(乗ること)よりは“ライティング”(書くこと)の方がメインなんだけど、セットになることは多いんです。移動することで人やストーリーに出会える。走っているだけでも脳の後ろが空になって、そこからストーリーが生まれてくることもある。集中とリラックスのかけあわせです。だからバイクは私の一部です。走れなければ壊れちゃう(笑)」
トゥルイさんも「私はムーバー」だと語る。
「とにかく外に出かけたい。子供のころから好奇心だらけで、水平線の向こうに何があるのかをずっと考えていました。お金がないときにはヒッチハイクで旅をしていました。両親はなんでもやっていいといっていたけど、バイクだけはダメだった。けど、ずっと旅をしていたらバイクと掛け合わさったんです。バックパッカーとしてヒマラヤに行った時に、『ここに道があるじゃん。バイクなら行けちゃうじゃん』『インドまでだったらアスファルトで、たった5日で行けるよ』って。そんな旅の中で多くの女性たちと出会って、いろんなストーリーと出会いました。だからもう旅とバイクは中毒ですね」
◆ベルギーはバイク乗りにとって楽園?
ふたりの出身地である「EUの首都」ともいわれる首都ブリュッセルをもつベルギーは、人口1200万人に満たない小さな国だ。だが実はバイク乗りにとっては恵まれた国でもあるという。
その理由のひとつは、会社員であれば多くの企業がクルマを提供してくれるため、それを移動用に使い、趣味としてバイクを買う人が多いということ。ふたつめは、政府が交通量緩和のためにバイクを推奨していること。これは実際に渋滞の減少に効果があったそうだ。そして3つめは、バイクのすり抜けが許可されていること。ベルギーの高速道路は3車線あり、うち2車線はすり抜けが自由なのだとか。「クルマの運転手もそれを理解しているから、道を開けてくれるんですよ」とガイアさんは話す。
最後は、ガイアさんならではの恩恵ともいえるが、フリーランスはバイクの購入やヘルメットの装備などの購入がすべて非課税なのだという。さらに維持にかかる税金も半分が戻ってくるのだとか。「毎年の税金が4000ユーロ(約65万円!)だったら、2000ユーロ(約33万円)が返ってくる。だから3年もすれば次のバイクを買う資金になるんですよ」。そのおかげか、中古車市場も年式の新しい個体が多くサイクルも早いのだとか。ツーリングに最適なコースも多くあるというから、バイク乗りにとっては楽園といって良いかもしれない。
◆自分で決断したことだったら全部オッケー
仕事、プライベート、そしてWIMAでの活動と、様々な形や場所でバイクで旅をし、女性ライダーの輪を広げ続けているトゥルイさんとガイアさん。日本でもコロナ禍でのバイクブームや、Youtubeでの配信者の活躍などもあって女性ライダーは増えているようだが、そんな日本の女性ライダー“バイク女子”たちに先輩ライダーとしてのメッセージをもらった。
トゥルイさんは語る。
「日本でも世界でも、女性ライダーに言いたいのは自分で出かけることを恐れずに、やってみる、旅に出てみるということ。京都でも田舎でもいい。小さな冒険で良いんです。それで成長して、自信もついていく。好奇心を持って世界に出ていくことが大切で、そこに学びがある。今、こうしてインタビューを受けているのも冒険があったからこそだし、もちろん学びもあります。旅することは女性にとってリスクもあるのは事実です。だけど日本は、『ここまで安全な国はない』と思うほど安全です。日本はアドベンチャーをするにはとてもいい国です。旅は人間としても女性としてもより賢く、より豊かにしてくれるもの。だから、女性としてそれを活かしてほしいと思います」
ガイアさんは「ほとんど言われちゃったけど(笑)」と笑いながらこう続ける。
「まずは自分が乗って楽しい、フィーリングにあったバイクからスタートするのがいいと思います。そのバイクは自分の生活の一部になるし、世界への窓口になる。より距離を重ねていくことで世界は広がっていきます。あとは、よく『どうやって全てを置き去りにして7ヶ月も旅ができるんですか?』と聞かれるけど、『乗っていくだけ』なんです。選択して、決断するだけ。旅をしていれば変なシチュエーションにも出会うし、雨が降ればネガティブにもなるけど、自分で決断したことだったら全部オッケー。女性のライダーにとっては、ライディングでも旅でも自信を持つこと、最初の一歩を踏み出すことが大事。だから貯金は諦めました(笑)。でもオッケー」
バイクは旅であり、小さな冒険であり、そして人生そのもの。彼女たちの姿や言葉は、女性ライダーだけでなく、これから何か一歩を踏み出そうとする女性、はたまた老若男女問わず、多くの人にとって勇気を与えてくれるものとなるはずだ。
WIMA JAPAN(国際女性オートバイ協会 日本支部)公式サイト
https://wima.gr.jp/
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みんなのコメント
彼らは行き先が同じフリをして尾行しています。
死角に隠れていることもあるので周囲の警戒を怠らないで下さい。
たかがバイクに乗っているというだけのことで、勝手な仲間意識を持っているので、SAとかで話しかけてくる危険性があります。
話しかけてきそうな雰囲気があれば、すぐに110番!