ホンダという会社は、その黎明期からモータースポーツと密接な繋がりがある。モータースポーツによって培われてきたホンダのレーシングスピリットを体現するのが「タイプR」だ。ホンダスポーツモデルの代名詞ともいえる「タイプR」の歴史を振り返る。
※本稿は2023年6月のものです
文/片岡英明、車両解説/永田恵一、写真/HONDA、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2023年7月10日号
ニュル最速のシビックはどうやって生まれた? レーシング魂全開のホンダタイプR誕生のワケに迫る!!
■タイプRはなぜ生まれたのか?
6代目ホンダ シビックタイプR(FL5)2022年~
F1に代表されるレーシングスピリットとその時代の最先端テクノロジーを投入して誕生させた究極のロードゴーイングカーがホンダのエンジニアの情熱がほとばしる「タイプR」だ。
レーシングカーの技術を積極的に採用することにより、圧倒的なドライビングプレジャーの獲得を目指して開発された。記念すべき最初の作品は、1992年秋に鮮烈なデビューを飾ったNSXタイプRである。
ホンダの創設者である本田宗一郎氏はレーシングカーとスポーツカーが好きだった。これらのクルマは、人間の走る本能を吸い出し、運転していて楽しいからである。
初代NSXを開発する時、プロジェクトリーダーの上原繁氏はホンダからどういうスポーツカーを発信するか、開発メンバーを集めてコンセプトミーティングを開いた。
開発メンバーの意見は大きく2つに分かれている。ひとつは、ハイテク装備を満載した快適なホンダスポーツだ。これに対しF1の血を引くホンダのスポーツカーなのだから、高性能を徹底的に追求しようという声も上がった。
本田宗一郎氏は常日頃から、クルマは人に仕えるためにある、と説いていたから、ホンダの首脳陣と開発陣はソフィストケートされた快適なスポーツカーを目指している。
だが、発売したNSXを運転させてみると、一部のジャーナリストやオーナーから反論の声が上がった。思い切りサーキットを走らせられるNSXが欲しい、とリクエストがあったのである。
そこで究極のNSXを設計してみよう、と考えて、徹底的に軽量化を行った。走らせてみたら刺激的だったし、サーキットでも面白かったのだ。そこで市販化が決定し、細部を煮詰めるとともにタイプRと命名して発売に移したのである。
■いまや世界屈指のホットモデルに成長した激辛シビック
初代ホンダ シビックタイプR(EK9)1999~2001年
6代目のEK系シビックの3ドアモデルに設定されたSiR-IIはクラス最強スペックだ。
販売は好調だったが、タイプRがないことに不満を漏らすファンも少なくなかった。そこでタイプRを開発することを決断する。当時はホンダの販売の3分の1をシビックが占めていた。だからファンの声を無視できなかったのだ。
が、シビックのタイプRは身近な存在にしようと考え、ほかのタイプRとは味付けの方向を大幅に変えた。
若いクルマ好きが買えるように、販売価格は200万円以下とする。タイプRのエントリーカーなので、高性能なだけでなく、日常の足としても楽しめる扱いやすいクルマに仕立てた。が、エンジン型式が変わるほど手を入れ、最新技術も積極的に投入する。
このEK9型シビックタイプR以降、走りのフラッグシップとしてタイプRを設定した。
EP3を名乗る第2世代のタイプRは2001年12月に登場している。ベース車は7代目シビックだ。イギリスのスウィンドン工場で生産され、日本に送り出された。心臓は2LのK20A型直列4気筒DOHC・i-VTECで、6速MTだけの設定だ。2L最強ユニットに6速MTの組み合わせ、このこだわりは現在まで続いている。
2007年に登場した第3世代のFD2シビックは、セダンベースのタイプRだ。サスペンションはサーキット走行を意識してハードに締め上げた。その後、シビックは日本での販売を休止している。
だが、2015年にターボで武装し、究極のFFスポーツを掲げた第4世代のFK2タイプRが登場した。発売前にニュルブルクリンクの北コースでFFスポーツ最速タイムを叩き出す。最速狙いは5代目のFK8、そして最新の6代目タイプRまで続いている。
■一躍人気車に! NSXタイプRのエッセンスが取り入れられたタイプR第二弾
初代ホンダ インテグラタイプR(DC2)1995~2001年
1995年秋、NSXに続いてインテグラにタイプRを設定。NSXタイプRの設計思想を継承する硬派モデルで、身近なレーシングスポーツがほしい、というファンの声に応え、送り出されている。
パワーユニットは1.8LのB18C型直列4気筒DOHC・VTECだ。量産エンジンだが、鈴鹿工場の製造ラインの一部に特殊な製造工程を加え、徹底的にチューニングを行った。ポート研磨はベテラン職人による手作業だ。最高出力は200psである。
サスペンションなども軽量化し、サーキット寄りの味付けとした。ちなみにインテグラに続くシビックのタイプRは、ワインディングロードを気持ちよく走ることを重視して足を決めている。3ドアのクーペと4ドアHT、2種類のボディタイプを揃えたタイプRは、このモデルだけだ。
FF車として初のタイプR、「96スペックR」は刺激的だった。極端すぎたためか、1998年1月に送り出した「98スペックR」は少しマイルドな味付けとした。最終型は1999年登場の「00スペックR」だ。
2代目のDC5インテグラタイプRは全幅を広げ、ボディの剛性アップにも取り組んでいる。パワーユニットに選ばれたのは、最新の排ガス規制をパスしながら高性能化した2LのK20A型4気筒DOHC・i-VTECだ。6速MTやサスペンションを一新した力作だったが、2代だけで姿を消してしまった。
■タイプRの始祖! 徹底的に運動性能を追求したスパルタンモデル
ホンダ NSX(I型)1992~1996年
レーシングテクノロジーを結集して開発した「タイプR」、その最初の作品にNSXが選ばれたのは当然だろう。
ホンダのフラッグシップ・スポーツカーであり、新しい価値観も数多く盛り込んでいる。NSXは「解放するスポーツカー」だが極限まで軽量化したら運動性能はどれだけ高められるか、というエンジニアの探究心とこだわり、ドライビングプレジャーの追求がタイプRを生み出した。
1995年3月にタイプRはアップデートしたが、半年後には受注を終了している。NSXは改良を続けたが、さすがに優位性は薄れてきた。
そこで2001年秋の東京モーターショーに「NSX-Rコンセプト」を出品。2002年5月に第2世代の「NSX-R」がベールを脱いでいる。力を入れたのは、サーキットで圧倒的な速さを実現するためのエアロダイナミクスの改善だ。
■Rの名を冠した異端児たち
ホンダ アコード ユーロR(初代)2000~2002年
タイプRは、単独で開発することはできない。必要なのは素性のよいベース車。これに手を入れ、サーキットを気持ちよく走れるようにしたのがタイプRだ。いうまでもなく「R」はレーシングの頭文字で、レーシングカーに近い性格のクルマである。
タイプRの誇りは、真紅の地色にHの文字を配した赤いエンブレムだ。グレード名を決める時、営業部門などからは「タイプS」を推す人が多かったという。が、レーシングマシン直系の高性能車だからタイプRにこだわった。
ホンダのなかにはタイプRを名乗りたかったのに名乗れなかったスポーツモデルも多く存在する。その代表がアコードとトルネオに設定されたユーロRだ。
2000年6月、両車に追加された高性能スポーツセダンで、専用のローダウンサスペンションや16インチの軽量アルミホイール、レカロ製バケットシート、アルミ製シフトノブ、ホワイトメーターなど、多くの内外装パーツを替えている。
2.2LのDOHC-VTECエンジンはリッター当たり100psを絞り出し、エキサイティングだった。フットワークも冴えている。スポーツ性能が高いだけでなく快適性も重視したから「ユーロR」を名乗った。
だが、その実力が一級品だったことは海外で「タイプR」を名乗っていたことからわかるだろう。アコードは2代にわたってユーロRを設定する。
欧州仕様の8代目シビックをベースにした3ドアのFN2タイプRも、日本向けモデルは「タイプRユーロ」を名乗った。ゴルフGTIのような味わいのホットハッチである。K20Z型エンジンは意識してパワーを抑え、公道で痛快な走りを楽しめるアスリート系グランドツアラーだった。
また、初代NSXには気負わずに高性能を楽しめる「タイプS」が用意されていた。これとは逆に後期モデルにはスーパーGT参戦のためのホモロゲーションモデルとして5台限定の形で「NSX-R GT」が生産されている。価格は驚異の5000万円だ。
【番外コラム】サーキット以外でも躍動したタイプR
2018年にバースレーシングプロジェクトがOPクラスに投入したFK8シビックタイプR
スーパー耐久やWTCRで活躍しているシビックタイプR。2024年シーズンからはNSXに代わりGT500クラスマシンのベース車両となることも発表されている。
そんなサーキットでの印象が強いタイプRだが、実はラリーフィールドでも活躍をしていたのだ。さすがに参戦台数はWRXや86、ヴィッツに代表される定番車に比べれば少ないが、全日本ラリー選手権で実力の高さを見せていた。
特にシビックタイプRユーロ(FN2)は、FIA R3規定のマシンがデリバリーされていた関係で、多くのチームが採用していた。
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あれはどうにかならなかったのだろうか。