フルモデルチェンジした新型「レンジローバー」に設定されたロングホイールベースの4シーター仕様に小川フミオが試乗した。リムジンとしてもピッタリな、ゴージャスな1台をリポートする。
確固たる世界観を持つ1台
究極のリムジンを探しているひとには、新型レンジローバーSVのロングホイールベース仕様がいいだろう。余裕あるサイズの車体に、広い後席空間をもった4人乗り。贅をこらした作りで、391種類のインテリア(!)など、自分好みの仕様を注文できる。
日本ではふたつのモデルが用意されている。標準ホイールベースとロングホイールベース。前者は5065mmの全長と2995mmのホイールベース、後者は5265mmと3195mmの組合せ。今回乗ったのはロングホイールベースだ。
こんなに余裕あるサイズでありながら、3列シートでなく、そこに充てられる(べき)スペースに、2名用のシートのためだけに使っている。SUVのかたちをしたリムジンたるゆえんである。
そもそもレンジローバーの魅力であるクオリティの高い素材と、品がよくて、かつ気分が昂揚するカラーコンビネーションを持った室内……そこに大きく角度がついてリクライニングする電動シートがそなわる。
とりわけ運転席と点対称の位置(右ハンドル車だったら左側)の後席は、バックレストが倒れていくと、フロントシートのバックレストが前に倒れていき、さらに足のせが電動で展開するモードがある。これは運転席からも操作できる。完全なショーファーカー装備だ。
実を言うと私は、このレンジローバーSVの後席には何度か乗ったことがある。海外での移動時だ。ただし、自分が雇用しているわけでもない運転手の眼の前で、うんとリクライニングしてリラックス……というのは心情的に無理で、ちょこんと腰掛けるのみ。
それでもかなりいい気分になったことは確か。レンジローバーは雰囲気を作るのが本当にうまい! 確固たる世界観を持っているからだろう。エクステリアも同様だが、へんにトレンドに迎合していない。
「私たちのリダクショニズムなるデザインランゲージは、おなじことをやろうと思ってもマネになってしまうはずだし、そもそも同レベルに追いつくのは難しいことだと思いますよ」
デザインを統括している本社のジェリー・マッガバンは、いまのレンジローバー発表のタイミングでそう語ってくれたことがある。実際、その言葉にウソはないと思われるのだ。
かなりの迫力エンジンは、4.4リッターV型8気筒。低回転域から高回転域までカバーする領域を広げたツインスクロールターボチャージャー装着だ。
今回乗ったのは2023年モデルの「P530」で、最高出力は390kW(530ps)、最大トルクは750Nmと、数値だけみてもかなりのハイパワー。操縦すると2.7tという重量級のボディの重さはまったく意識させない。
発進からもたつく感じはいっさいない。大柄な車体でありながら、ロケット的な加速感が味わえる。かなりの迫力だろう。周囲のクルマのドライバーが時々驚いた表情を浮かべて、すばやい視線を投げかけてくるのを眼の端でとらえることができる。
エアサスペンションのシステムのおかげで、速度が上がっていっても、たとえややきつめのカーブだろうと、操縦性の高さは特筆すべき。車体のロールはしっかり抑えられ、軽快なとさえいえるフットワークを楽しめる。
ドライバー席のまわりは、後席とはまた違う意味で、ぜいたくに作られている。SVとは「スペシャルビークルオペレーション」という特装部門を意味していて、素材や色づかいが標準モデルと一線を画している。
書き出すとキリがないので、ここではやめるが、ドアを開けただけで気分が昂揚する車両に興味がある人は、「SVビスポークサービス」を販売店でチェックしてみるといいと思う。シフトレバーやダイヤルなども、すべて特別。触れるたびになんだか嬉しくなってしまうほどだ。
このあとSVにおいては、2024年モデルとして、エンジン出力が452kW(615ps)へとアップする「P615」(ロングホイールベースで3267万円)が控えている。ダッシュボードからは物理的コントローラーが減るなどデジタライズ化がさらに進むなど、今回のP530は一線を画すモデルなので、悩ましい選択になりそうだ。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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