毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
いまや国内に敵なし セダン界の絶対王者 現行型クラウンが中古で狙い目に!
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ オーパ(2000-2005)をご紹介します。
【画像ギャラリー】セダン? ワゴン? ミニバン? いいとこどりを目指したが短命に終わったオーパ。その画像をギャラリーでチェック!!!
文:伊達軍曹/写真:TOYOTA
■カローラ並みの全長にクラウンクラスの室内を実現し登場したオーパ
「ミニバンのキャビンスペースと高級サルーンの走りをかけ合わせた、次世代のミディアム車」としてデビュー。
しかし「結局のところ、なんだかよくわからない存在」としてしか受け止められず、1代限りで儚くも生産終了となったトヨタの意欲作。
それが、2000年5月から2005年8月まで販売されたトヨタの5ナンバーサイズ車、Opa(オーパ)です。
1999年の第33回 東京モーターショーに参考出品されたオーパは、ほぼそのままの姿で前述の2005年5月に正式発売されました。
車名には、ポルトガル語で驚きを表す感嘆詞「Opa」を採用
オーパはV50系のビスタ アルデオをベースに開発された車ではありますが、そのパッケージングは「ゼロから自由に発想した」と言える、非常に斬新なものでした。
4250mmというカローラ並みの全長でありながら、ホイールベースは2700mmとひたすらロングで、これにより室内サイズは長さ2025mm×幅1400mm×高さ1250mmというクラス最大数値を実現。
ちなみに室内長2000mmオーバーというのは、当時のトヨタ クラウンよりも長いことになります。
シートも無理に3列化するのではなく普通の2列5人乗りでしたので、荷室の広さも5ナンバーサイズ車としては十分以上。
さらには、大きな荷物を載せない際にはリアシートを120mmスライドさせることで、ほとんどリムジン並みの足元スペースを作り出すこともできたのです。
オーバーハング(タイヤからクルマの端までの距離)を極端に短く取り、タイヤをより「四隅」に配置することでゆとりのある室内空間を実現
パワーユニットは1.8L直4DOHCと2L直4直噴DOHCの2種類。
2Lにはトヨタ初のCVT「Super CVT」が組み合わされ、1.8Lには電子制御4速ATの「Super ECT」が搭載されました。
登場翌年の2001年8月には、シートやドアトリムなどの表皮を変更して質感を高めるともに、グレードも拡充。
さらに2002年6月にはマイナーチェンジを行って内外装のお化粧直しをすると同時に装備を充実させ、車両価格も、一部のグレードを除いて2~6%値下げしました。
しかし「ワゴンなのか2BOXなのかミニバンなのか、結局よくわからない!」とされていたオーパの販売が好転することはなく、2005年4月にはあえなく生産終了に。
そして同年8月には販売のほうも終了となり、2代目は登場しないまま、トヨタ オーパは比較的短い“生涯”を終えました。
■「驚き」よりも「困惑」? オーパが短命に終わった理由
「今までにない車」を目指したトヨタ オーパが1代限りで生産終了となった理由。それは、大きく分けて2つあるように思えます。
ひとつは、日本人の――と言ってしまうと主語が大きくなりすぎるのですが、とにかく日本人の多くが有している「前例がないモノはとりあえず敬遠する」という性質です。
トヨタがオーパで目指したのは「ミニバンでもステーションワゴンでもない新しい何か」だったわけですが、そういったミクスチャー系の車というのは、残念ながら日本ではあまり売れません。
もっとこうミニバンならミニバンらしい、ワゴンならワゴンらしい形と機能を持っている車じゃないと、基本的には売れないのです。
売れないというか、「受け入れられにくい」と言ったほうが正しいでしょうか。
前述の「ロングホイールベース&ショートオーバーハング」のボディを、ソリッド感のある面質で独創的にまとめたリアビュー
今でこそジャンルを超えたクロスオーバー(融合)は有効な手段になっていますが、2000年頃の日本では、まだまだ「で、この車はワゴンなの? ミニバンなの?」みたいな声が主流でした。
それゆえ「定義しづらい車」であるトヨタ オーパや、ホンダが1999年に「次世代高級サルーンの新たな形」として提案したアヴァンシアなどは、その意気や良しではあったのですが、セールス的には完敗し、市場から去っていったのです。
しかしトヨタ オーパが完敗した理由のすべてが「多くの日本人の性格のせい」だったかといえば、そんなこともありません。
オーパ自身にも、責任の一端はありました。
「上級」をうたったオーパでしたが、インテリアの装備内容や質感には、正直物足りない部分もありました。
また走りも、悪くはないのですが、「ただ悪くないだけ」というのが、当時の広報車から受けた正直な印象です。
さらにはエクステリアデザインも、意欲的で斬新であることは間違いないのですが、多くの人を「おっ?」と驚かせるだけのモノはありませんでした(もちろん、これについては異論反論もあるでしょうが)。
つまりトヨタ オーパは、意欲作ではあったのですが、「Opa!(ポルトガル語で驚きを表す感嘆詞)」と、多くのユーザーに叫ばせるほどの何かではなかった――ということです。
しかし、このような「売れるかどうかわからないミクスチャー車」を開発し、そして大々的に発売したというのは、トヨタという大メーカーだからこそできたことなのかもしれません。
オーパのような新しいチャレンジは不発に終わる場合が多いものですが、誰かがチャレンジをしてくれないことには、いつまでたっても「代わり映えのしない定番車」ばかりが日本の道を走ることになってしまいます。
そういった意味でトヨタ オーパのチャレンジには、そしてちょっと前述したホンダ アヴァンシアのチャレンジにも、「よく頑張った! 感動した!」と、筆者は言いたいのです。
■トヨタ オーパ主要諸元
・全長×全幅×全高:4250mm×1695mm×1525mm
・ホイールベース:2700mm
・車重:1270kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1998cc
・最高出力:152ps/6000rpm
・最大トルク:20.4kgm/4000rpm
・燃費:16.0km/L(10・15モード)
・価格:218万円(2000年式 i Sパッケージ)
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