1966年の登場以降、半世紀に渡って5ナンバーサイズを維持してきたカローラが、2018年のフルモデルチェンジで3ナンバー化された。また、先代まで5ナンバーだった(3ナンバーもあったが)ミドルサイズミニバンのトヨタ「ノア/ヴォクシー」、ホンダ「ステップワゴン」も、2022年に登場した新型では、それぞれ全モデルが3ナンバーとなった。
衝突安全性能や走行性能、車室内の居住性、エクステリアデザインの自由度など、3ナンバー枠の方が有利となる点は多いのは事実だが、クルマは「大は小を兼ねる」とはいかないこともある。改めて評価したい、5ナンバー車がもつ魅力について考えていこう。
今こそ必要「5ナンバー」!! クルマにとって「小ささ」は大きな武器になる!!
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、MAZDA、SUZUKI、DAIHATSU
かつては高嶺の花だった、3ナンバー車
ご存じのとおり、登録車の乗用車においては、ボディサイズとエンジン総排気量で3ナンバー車か、5ナンバー車かが区分される。全長4700mm以下、全幅1700mm以下、全高2000mm以下、エンジン総排気量2000cc以下のすべてを満たすのが、5ナンバー車だ。
1989年(平成元年)の自動車税改正が行われるまで、3ナンバーは自動車税がべらぼうに高かった。例えば、同じ排気量のエンジンだとしても、5ナンバー(小型車)だと年間2万9500円、3ナンバー(普通車)になると年間8万1500円と2倍以上。当時国産車はほとんどが5ナンバー車であり、大排気量かつ大きなボディで3ナンバー車となる輸入車と税額で差をつけることで、国産メーカーを守る意味合いがあったのだろう。
そのため、一般市民には3ナンバー車は程遠い存在であり、大企業の役員が乗る社用車としてとか、小金持ちが乗るような、贅沢なクルマだった。その時代を経験している世代のなかには、いまでも3ナンバー車を「高嶺の花」と考えている方もいるようだ。
しかし現在の自動車税(種別割)は、エンジン総排気量で区分されており、ボディサイズによる税制区別はない。3ナンバーであっても、総排気量が2000cc以下であれば、5ナンバー車と同じ税額だ。ちなみにバッテリーEVは、排気量1.0L未満相当の扱いになる(これはおかしな話だと思うが…)。
足グルマとしては、最適
5ナンバー車のメリットのひとつは、自動車税(種別割)の安さだろう。5ナンバーは2000cc以下のため、必然的に自動車税は39,500円以下となり、2001cc以上の3ナンバー車に対して税金はリーズナブルというメリットがある。もちろん、3ナンバーであっても2000cc以下のクルマもあるのだが、排気量に規制のあるために安い傾向にあることは、5ナンバー車のひとつのメリットといえる。
そして最大のメリットは、やはり「運転のしやすさ」だろう。道路整備が進み、ゆとりのある道路が増えつつある昨今だが、狭い場所がないわけではなく、やはり、全幅1700mm以下の5ナンバー車だと、狭い道や知らない道でのすれ違いなどでの安心感は段違い。余裕をもって運転ができるのは、非常にありがたい。
筆者は、コンパクトカー(ノートオーラ)とステーションワゴン(W205メルセデスCクラスワゴン)の2台を所有している。ノートオーラは5ナンバー車ではないのだが、ほぼほぼ同じサイズ感のクルマだ。筆者のお気に入りはメルセデスCクラスワゴンのほうであり、乗り心地やハンドリング、ロードノイズや加速性能、衝突安全性能、見栄えなど、あらゆる性能で勝っていると思っているのだが、近所への買い物やちょっとした用事には、どうしてもオーラのほうを選んでしまう。
オーラのほうが、燃費が良いということもあるのだが、サンダルを履くような感じのオーラと、多少構えなければならないメルセデスCクラスワゴンでは、気軽さが段違い。毎日の足クルマとして使うには、5ナンバーサイズの小型車のほうが圧倒的に「楽」であり、フットワークも軽くなる。全幅のほか、軽い車重も、この「気軽さ」に貢献するポイントだ。
気軽に乗れることで、フットワークも軽くなる。それでいて、走り心地や加速性能、静粛性なども申し分ない。まさに「足グルマ」としては最適だ
実家で所有しているため、軽自動車もしばしば乗ることがあるが、走り心地、加速性能、静粛性、安心感、燃費、すべてにおいて、やはりコンパクトカーのほうが上回る。高速道路などもよく走られる方は、コンパクトカーを持つほうがストレスは圧倒的に少なくなるはずだ。
ただし、自動車税が安い(軽自動車税は年額10,800円、13年経過した軽は20%重課されて12,900円)ことと、コンパクトカーよりも小さいサイズは、軽自動車のメリットだ。少しでも車両維持にかかる税金を削りたい方や、高速走行なんてする機会がない方には、軽自動車の方が向いているかもしれない。
日本の国土と日本人に合わせた規定を重視してほしい
冒頭で触れたように、クルマは大きく(幅広く、長く)となることで、衝突安全性能や走行性能、車室内の居住性などは有利となる。年々厳しくなる衝突安全性能に5ナンバーサイズを守りながら対応していくことは、クラッシャブルゾーン(衝突時に潰れることで衝撃吸収する部位)を確保できないという物理限界もあり、非常に困難なことだ。
欧州のBセグコンパクトがほぼ3ナンバー(ポロでさえ全幅1760mmもある)であるなか、これだけの性能をこのサイズに抑え、かつローコストで実現しているのは、国産メーカーの高い技術力あってこそ。現在5ナンバーサイズを実現しているクルマはすべて「5ナンバーサイズを死守しなければ」と必死に開発した、メーカーエンジニアの努力の賜物だ。ノートやフィット、アクアなどは、走りや静粛性など、上級車に匹敵するほど、高い水準だと思う。
ただ、日本の道路幅や、家屋や店舗の駐車場が、クルマに合わせて広くなったわけではないし、運転する人間の意識もそれほど変わっていない。
5ナンバーはあくまで国内の規定ではあるが、(そして「現行モデルは輸出仕様のことも考えなければ…」というのも十分理解しているが)日本の道を日本人が使うのだから、日本の国土と日本人に合わせた規定についても、もうすこし重視してもいいのでは、と思う。
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