フェラーリのV8ミドシップのオープンモデル「F8スパイダー」に渡辺敏史が試乗した。
メタルトップルーフのメリット
自動車メーカーになった男──想像力が全ての夢を叶えてくれる。番外編
日本市場では鉄板的な人気を誇るV8ミドシップ・フェラーリ。そのスパイダーとなれば、“華の中の華”ということになるだろう。以前は剛性低下を理由に敬遠されるきらいもあったが、458辺りからは人気が完全に逆転。中古車の流通価格をみるとクーペとの価格差はざっくり500万円級と、新車時のそれを著しく上まわっている。
458スパイダー以降のV8ミドシップ・オープンは、電動格納式のメタルトップルーフシステムが与えられている。幌屋根に対して耐候性はもちろん、高速域では遮音面での優位もある。
また、クローズド時はクーペとほぼ変わらぬシルエットに収まるところもカスタマーに支持されるポイントだろう。幌屋根の情緒は確かに捨てがたい。でもトップ・スピード300km/hオーバーのフェラーリがメタルトップに拘る思惑もわからなくはない。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui458から続くF142系のアーキテクチャーをベースとする最新のF8スパイダーも、屋根はメタルトップのルーフシステムを継承している。2分割で畳まれた天板は、シート背後の大きなカウルの内側に収まり、その開閉時間は約14秒。
そして45km/h以内の速度であれば走行中でも開閉操作が可能だ。クーペであるF8トリブートに対すれば、前~側方視界及び居住性、積載性には影響は無に等しくも、後方視界については間違いなく劣る。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiが、振り向けば、切り取られたその景色は、「365GT4BB」~「F355」の世代にミドシップのフェラーリが長年採用し続けてきたトンネルバックスタイルにも相通じるところがあり、思わず“アガる”という人がいても不思議ではない。
一方、クーペのF8は、F40を彷彿とさせる軽量な樹脂製のリアウインドウをスタイリングのキーとしている。個性は後ろ姿にこそ色濃く反映されているというわけだ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui動力性能のみならずフィーリングも改善
フェラーリのスタイリングといえばピニンファリーナを思い浮かべる人も多いだろうが、V8ミドシップに関していえばF8の前身である488GTB以降は、デザインはフェラーリのチェントロスティーレ=スタイルセンター、つまり内製ということになっている。
代替わりの主因は、現代のスーパースポーツにおいて空力特性が多分にパフォーマンスの雌雄を分かつ重要な要素になっているからだ。ボディに意図的に設けられた凹凸面やそこら中に配された孔は、すべてに性能的な理由があり、高度なシミュレーションによって算出されてもいる。それをデザインと折り合いをつけるには、設計初期からのエンジニアリングとの連携がマストとなるわけだ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui逆にいえば、そこまでシビアに形状を決定しなければならないほど動力性能は大変なことになっているわけで、たとえばF8の場合、搭載する3.9リッターV型8気筒直噴ガソリンツインターボは、720ps/770Nmを発揮。0~100km/h加速は2.9秒、最高速は340km/hをマークする。
このスピードレンジでの安定性を、格納可変型などの大仰なエアロデバイスなしで成立させている辺りはフェラーリの意地ともいえるところだろう。ちなみにこのエンジンは前身の488GTBのそれからムービングパーツの慣性質量を17%削減、吸気系統の刷新やタービンの回転数までも織り込んだエンジンマネジメントの採用など、細かな改良を重ね、動力性能のみならずフィーリングも改善している。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui史上もっともフレンドリーなV8ミドシップ・フェラーリ
F8スパイダーの見逃せない美点は、シートの背後にあるスペースだ。他のミドシップスポーツではカバンなどの手荷物を置くにも困るものも少なくないところにきて、開閉機構をコンパクトに収めることでクーペと大差ない容量を持ち、実用性をしっかり確保している。
スーパースポーツに荷物置きなど必要なものか? という話もあるだろう。でも最近のこういったクルマたちは、唖然とするほどの速さの一方で、GTと比肩する居心地や乗り心地の良さを備えてもいる。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiF8スパイダーも然りで、その快適性はフェラーリであることを忘れてしまいそうになるほどだ。可動部や分割部が多いこともあって、走行時の軋み音などが気になるところであるものの、そういった“低級感”が伝わることは皆無である。
オープン化による重量増はほぼ大人ひとりぶんで、サーキットでも走れば差はあらわれるだろうが、街乗りやツーリングの用途であればその差は無視できるほどだ。剛性バランス的には大入力のしなやかな受け止めに、かえって屋根抜けの利が現れているのではとも思わせる。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiともあれ何も我慢するところがない。それどころか、屋根を開ければ内燃機の頂にいるV8の息吹が青空と共に容赦なく飛び込んでくる。クローズド状態からオープン状態への変貌のコントラストの強さもF8スパイダーの魅力だろう。
世界最速級のパフォーマンスをガッツリ味わうときはクローズドで、時折りエンジンを唱わせながら気持ちよく流す時にはオープンを、と、なんとあらば立ち止まることさえなくシームレスに使い分けられる。ドライバーの自制心さえ伴えば、これほど万能自在なスーパースポーツもそうはない。
間違いなく、史上もっともフレンドリーなV8ミドシップのフェラーリである。
文・渡辺敏史 写真・安井宏充(Weekend.)
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