ビル スペンサー氏の伝説の米国車の墓場を訪ねる。ユタ州に住む82歳のビルの庭には、50年以上前の事故車が200台以上ある。ロードクルーザー、ピックアップ。シボレー、フォード、GMC、そしてエドセルもある。中には、すでに自然の力で朽ちてしまったものもある。病的なクルマに目がない米国のカーガイを訪ねた。
ビルは、初めて買った車のことをよく覚えている。75年前のことだ。「私は7歳だった」とビル スペンサーは言う。「10歳の時に初めて駐車違反の切符を切られたんだ。」交通違反?車の運転で?「もちろん、当時は運転していたのだが.・・・」とビルは言い、日焼けした顔に笑みを浮かべた。ここユタ州は、1平方キロメートルあたり15人しか人口がいないため、1940年代後半はそうだった。
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それから約70年後、ビルはグレンデール村の自宅敷地内に立ち、ドイツからの訪問者に「もっと近くにおいでよ」と声をかける。一方、鎖でつながれた彼のジャーマンシェパードは、我々に向かって吠え続けている。「彼は股関節が悪いんだ」とビルはなだめるように言う。
よし、それでは彼の敷地内に入ろう。アメリカの南西部では、このようなことが時に致命的な結末を迎えることがある。ユタ州では2011年から銃器が公式ランドマークになっている。ブローニングのM1911だが、それはまた別の話。ビルは明らかに銃ではなく、古い鉄の方が好きなようだ。
庭には50年分の廃車が並ぶ
ブライスキャニオン国立公園へ向かう、全長2,015kmのアメリカ国道89号線を旅する人は、ほぼ自動的にビルの家の前を通り過ぎるだろう。そして、みんな同じように立ち止まる。自分の目を疑うからだ。
他の人が花を植えているところに、ビルは何百台もの車を置いて庭を作っているのだ・・・。よく・・・飾ってある。50年来のモデル。1950年代の丸いボンネットをかぶったピックアップ。見ているだけでV8の咆哮が聞こえてきそうな、60年代、70年代のロードクルーザー。そして、私たちドイツ人が「A Colt for All Seasons」や「The A-Team(特攻野郎Aチーム)」のようなアメリカのシリーズを観ていた頃の「モダン」な車もある。
彼らに共通するのは、とっくに旬を過ぎていること。そして、だからこそ、独特の美学を醸し出している。ビルは車を集めているのではなく、廃車を集めているのだ。ボディが錆びついた車もある。また、色褪せた緑や赤のまま真昼の太陽に照らされているものもある。
木こりを生業とし、自動車を天職とする
ビルは木こりを生業としており、30年以上その仕事に携わり、その手はそれを物語っている。しかし、彼の情熱はいつも車だった。「いつから集めていたのですか?」。「実は、ずっと前からあったんです」とビルは言う。何度も何度も、人々は彼に車を提供した。時には事故にあった車、時には誰も欲しがらない車。引き取ってくれる人間は、ビル以外に誰もいない。
彼は、古き良き時代の伝説的なアメリカ車、馬力の聖域のようなものを所有している。アメリカ人がヨーロッパを解放した「ウィリス ジープ」もある。そして、自動車史に残る大失敗作、エドセル。1957年、フランク シナトラやルイ アームストロングまで登場する特別番組が組まれるほど、このブランドは大々的に紹介された。その2年後、ブランドはすでに死んでいた。そして、フォードは現在の価値で、約20億ドル(約2,800億円)の損失を出していた。
ビルもオペル レコードを7台持っていた
ビルはエドセルを安く手に入れたが、それも一緒に砂の中に入れてしまった。他の事故車と同じようにね。自分で修理したのは2、3台しかない。「オペル・レコードを7台も持っていたこともあるんだ。兄がドイツで兵隊をしていて、何台か持ってきたんだ」。美しい小さな車だった。
ポンティアック・エイトの内装。シートに残っているのはスプリングだけ。
ビルは公式な博物館を運営しているわけではない。しかし、毎週、ドイツからも数人の観光客がやってくる。そして、希望する人に、ビルは自分の話をする。糖尿病で亡くなった最初の奥さんのこと。2番目の奥さんのこと、その奥さんも亡くなった。娘さんのことも。この話をするとき、ビルの目は涙でいっぱいになる。
ビルは75年間、車に乗り続けてきた
残っているのは、彼の車だ。墓地にあるものでも、なぜか生きている。そして、ビルは自分の運転免許証を掘り起こす。ジーンズの中の太いチェーンにつながれた財布からだ。「もちろん、今でも車に乗っています」よ、とビルは言う。もう75年も乗っている。
最後に、彼はポケットから自分で印刷した名刺を取り出す。「古い車、クラシックなシボレー、そして木の伐採」と、彼の名前の下に書かれている。「雑誌を送ってもらえませんか?」と我々に頼む。もちろん、彼はインターネットも、現代の車も、得意ではない。(笑)
Text & photo: Holger Karkheck
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