高低差の激しいタイトなコース
英国には評価が高く、設備の整ったサーキットが数多く存在するが、ノックヒルは独特の存在感を発揮している。
現代のクルーズコントロールは賢くない もどかしいADAS 英国記者の視点
スコットランドで唯一のFIA公認サーキットであり、狭く複雑で、勾配の激しいコーナーの連続で知られるノックヒルは、BTCC(英国ツーリングカー選手権)の舞台にもなっている。今年は8月16~17日にBTCC第7戦が開催された。
筆者(英国人)はノックヒルを、英国のラグナ・セカと呼んでいる。コーナーの1つ、ダフス・ディップ(Duffus Dip)は、ラグナ・セカのコークスクリューに似た急な下り勾配を特徴としている。
初めてこのサーキットを走る人は、不安とともにスタートし、勝利を左右する急勾配の縁石とタイトなコーナーを攻略しなければならない。
現在の姿に至るまでには長い時間がかかった。1970年代初頭、トム・キナードという羊飼いがレース用サーキットの壮大なビジョンを抱き、自前のショベルカーで建設にとりかかった。彼は、ニュルブルクリンクやスパ・フランコルシャンに匹敵するスコットランド独自のサーキットを、やや小規模ながら作り上げた。
古い農道と1950年代初頭に廃線となった鉱山鉄道の線路を再利用し、1974年までに、最大約60mの高低差を持つ、起伏に富んだアスファルトのコースが完成した。
最初のレースは1975年に開催され、エディンバラとグラスゴーを含む広大な集客エリアのおかげで、収益面でも成功を収めた。1992年にBTCCカレンダーに正式採用された頃には、ノックヒルは英国で最も有名なサーキットの1つになっていた。
筆者は父と共に、ノックヒルでBTCCのレースを観戦しながら育った。限界までクルマを操るドライバーの技術に感嘆し、そして、誰でも自分のクルマでサーキットを走れるのだと学んだ。新しいBMW M5でも、古びたルノー・クリオでも。
また、左足ブレーキやヒール・アンド・トゥなど、サーキット走行のテクニックを初めて体験したのもここだった。
それまで筆者が乗った最も速いクルマはディーゼルエンジンのBMW 1シリーズだったのに、ホンダ・シビック・タイプRやシングルシーターのレーシングカーを運転することができた。忘れられない思い出だ。
しかし、ノックヒルで特に印象的なのは、その全く飾らない、地に足の着いた実直さだ。油まみれのピットレーンはいつでも一般公開されており、コース点検・清掃用の車両はフォード・トランジットの荷台に布を付けただけのものだ。整備には古い三菱のピックアップトラックも使われている。とても素朴な飲食店が2軒あり、一年中冷たい風が吹き抜け、パブリックデーにはドライバー同士の仲間意識が素晴らしい雰囲気を作り出している。
昨年、筆者はBTCCのドライバー全員に、お気に入りのサーキットを尋ねた。有名なシルバーストーンやブランズハッチを除くと、半数以上が、この気骨ある湿ったスコットランドのサーキットを選んだ。これは非常に意味深いことだ。
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