動力性能と実用性を高次元で両立
執筆:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
【画像】フォルクスワーゲン・ゴルフR 高性能な小型ステーションワゴンと比べる 全129枚
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
8代目フォルクスワーゲン・ゴルフの「R」へ英国編集部が試乗してから、1年近くが経つ。遂に最新のエステート(ヴァリアント)にも、Rが追加となった。先代以上に速く、角の取れた高速ワゴンとするべく、多くのアップデートを受けながら。
筆者は以前から、ホットなフォルクスワーゲンのステーションワゴンが好きだ。伝統的に動力性能と実用性を高次元で両立させ、走りにこだわりのあるドライバーを楽しませる実力を備えている。家族と荷物を載せられる、速いワゴンとは一線を画す。
最新のゴルフR ヴァリアントも、先代と同様、標準のゴルフ・エステート(ヴァリアント)がベース。分別のある範囲でスタイリングに手が加えられ、ゴルフのフラッグシップとしての差別化が図られている。デザインに過剰さはない。
フロントバンパーはエアインテークの面積が大きくなり、トリム類はグロスブラックで統一。顔立ちは凛々しい。標準装備となるLEDヘッドライトには、フロントグリルとつながるように伸びるデイタイムライトが光る。
ミラーカバーはマットブラック仕上げとなり、サイドスカートも大型化された。リアバンパーと、その下から覗く4本出しの太いクロームメッキ・マフラーカッターも専用品。マット仕上げのアルミが用いられたルーフレールが実用性を担保する。
7代目より全長は71mm伸び4633mm
ゴルフRの専用装備は、車内の雰囲気も引き締めている。マルチファンクション・ステアリングホイールには、ドライブモードを選択できるボタンが追加。フロントシートはサポート性に優れるスポーツタイプが据えられた。
ペダルにはアルミカバーが付き、サイドシルやダッシュボードは専用トリムで飾られる。インフォテインメント用モニターやメーター用モニターにも、Rをテーマにした個性的なグラフィックが採用されている。
8代目ゴルフのインテリアは、全体的に光沢感のあるプラスティックが多い印象。しかし、ソリッドな組み立て品質は変わらない。
ゴルフR ヴァリアントの全長は4633mmで、7代目より全長は71mmも伸びている。この大部分は、先代から66mm伸びて2686mmとなったホイールベースが占めている。
そのおかげで、ハッチバックの8代目ゴルフと比較しても、リアシート側の空間には余裕がある。リアのオーバーハングも伸ばされ、リアシートを起こした状態で611Lの荷室空間も得ている。リアシートを畳めば、1642Lまで拡大も可能だ。
ちなみにハッチバックのゴルフRの荷室は、リアシートを起こした状態で268Lとなっている。
先代までのゴルフR ヴァリアントに展開されていた哲学を受け継ぐように、パワートレインはおなじみの構成。最新版が搭載するエンジンも、定番といえる2.0Lの4気筒ガソリンターボだ。EA888型としては、第5世代に当たる。
最高出力320ps、最大トルク42.7kg-mの四輪駆動
エンジンには細かな改良が施されているが、燃焼プロセスに手が入り、エグゾースト系の設計が改められた点がポイント。その結果、最高出力は従来より20ps引き上げられ320psを獲得。最大トルクも4.1kg-m増しの42.7kg-mを2100rpmから発揮する。
トランスミッションは、ステアリングホイールにR仕様のシフトパドルが付く7速デュアルクラッチAT。駆動方式は四輪駆動だ。そして、この4モーションと呼ばれる四輪駆動システムにも、大幅なアップデートが加えられている。
リアアスクル上に、2基の電子制御クラッチを搭載。前後タイヤ間の駆動力割合だけでなく、後輪左右の駆動力調整も、トルクベクタリング機能の一部として可能としている。
さらにVDM(ビークル・ダイナミック・マネージャー)とXDS(電子制御ディファレンシャル・ロック)はネットワーク化され、ゴルフR エステートとして初めて、プログラムにドリフト機能が盛り込まれた点も特筆すべきだろう。
システムを開発したのは、カナダのマグナ社。最新の3代目アウディRS3が搭載するものと、同じだという。
試乗車には、オプションのパフォーマンス・パッケージが組まれていた。それに伴い、ドライブモードは6種類へ増やされている。コンフォートとスポーツ、レース、ニュルブルクリンク、ドリフト、インディビジュアルから選べる。
この続きは後編にて。
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