PORSCHE Cayenne GTS × Macan Turbo Performance × Macan × Cayenne S × E-Hybrid Platinum Edition
ポルシェ カイエンGTS × マカンターボ パフォーマンス × マカン × カイエンS Eハイブリッド プラチナエディション
ポルシェのSUV一気乗り! カイエンとマカン、それぞれの立ち位置を検証する 【Playback GENROQ 2017】
ポルシェSUVの切り拓いた道
カイエンとマカン。今やポルシェの収益で重要な柱となるSUVである。その中で注目となるモデルを一堂に集めてポルシェのSUVを再検証した。特に次期型が登場したカイエンは今乗るとどう感じるのか?
「今だに古さを感じさせない走り。カイエンの魅力は色あせない──」
初めてその姿を目の当たりにした時には、悪戯心に溢れたCG画像であると疑わなかった。そこにいたのはポルシェ911風の顔を無理やり被せたクロスオーバーSUV。20世紀が終わろうとしている当時の常識においてそれは、滑稽というより他なかったのである。
だがカイエンは現実のものとなった。フォルクスワーゲン・トゥアレグと同時に開発しているという時点で、ポルシェがクロスオーバーSUVを登場させるという事実を認識せざるを得なかった。いつか911を手に入れたいと憧れるクルマ好きにとっては、崇高なポルシェ・ブランドが下野するような感覚があり、残念な気がしていた。
あのもやもやとした気持ちがいつどのように消え去ったのかまるで自覚がないのだが、私は今何の矛盾も感じることなくカイエンGTSのヘッドレストに頭を預け、圧倒的な加速に身を任せている。
「初代カイエンは実にお粗末なシロモノだったが・・・」
初代カイエンの誕生から15年ほどの時が経ち、世の中はすっかり様変わりしてしまった。ミレニアムイヤーの興奮が少し落ち着いた頃には、ここまで携帯電話が進歩して、自分の時間が支配されるとは誰も考えていなかったし、北朝鮮はまだちょっとした変わり者に過ぎなかった。
大いなる猜疑心を持って初めてステアリングを握ったカイエンは、実にお粗末なシロモノだった。間の抜けた顔と色気のないインテリア。誰もが「これは新型のポルシェだ!」と興奮しながら乗り込んで、いつもより多めにスロットルを踏み込むおかげでスポーティだと感じているに違いないと思ったものである。
「今やアルミの塊から削り出したような簡潔なイメージがポルシェそのもの」
だが今現在は「セダン復権」などというキャッチコピーが虚しく感じられるほどSUVが主役を張る世の中になり、ポルシェに至っては全販売台数の実に7割をカイエンとマカンが生み出している状況である。
かつては「背の高いクルマはフラつくからイヤだ」などと敬遠していたものだが、冷静になって考えると真実が見えてくる。アイポイントが高い方が視野を広く取れるのは当然だし、対トラックなどの衝突安全にも有利だろう。容量の大きなエアサスや凝ったサスペンションシステム、そしてハイブリッド用のバッテリーを置くスペースにも困らない。
もちろん昨今は、個人的なポルシェの捉え方も変化している。かつては993カレラの、まさに鉄の塊から削り出したような質感の高さが私の中のポルシェ像だった。けれど初代パナメーラのステアリングを握った頃からは一連の4ドアポルシェの、アルミの塊から削り出したような簡潔なイメージがポルシェそのものとして記憶されている。
「4台の異なる立ち位置を切り取る」
初代カイエンはポルシェ製のV8を積んだモデルでも、正直なところトゥアレグとの区別が難しかった。ところが今は、末っ子のマカンをドライブしていても紛うことなきポルシェだと感じるし、その背景にプラットフォームを受け継いだアウディQ5の陰を思い浮かべることはない。ポルシェのクロスオーバーSUVに対する受け手の感覚が大きく変化したのと同じかそれ以上に、同社のSUV造りにも経験が加味され、磨きが掛かっているのである。
今回のショートトリップは、今まさに円熟期を迎えつつあるポルシェ・クロスオーバーSUVの総チェックといった意味合いがある。マカン、マカンターボ パフォーマンス、カイエンGTS、カイエンS Eハイブリッドの4台で中央高地を目指す。はっきりと個性が異なる4台のそれぞれの立ち位置を切り取ることが今回の使命なのだが、個人的にはいよいよ世代交代が迫ったカイエンに着目している。発表されたばかりで、まだ誰も新型カイエンをドライブしてはいない。にもかかわらず人の感覚は怖いもので、新型が生まれたと同時に現行モデルは旧型の烙印を押されてしまう。
「機械的な効率と乗り手が感じる気持ち良さはいつの時代も別物だ」
確かに世代的には生まれ変わろうとしているのだけれど、生まれ変わった作品が必ずしも良くなっているとは限らないだろう。特に昨今の風潮であるダウンサイジングは、効率の良さという点では申し分ないものが多いし、カタログのスペックにおいても最高出力はちゃんと増強されているので留飲を下げることはできる。けれどクルマを効率だけで語るなら、大衆車メーカーが1~2社あるだけで良いことになってしまう。特にポルシェの美点であるスピードや質感など不要なものの最たる例となる。機械的な効率と乗り手が感じる気持ち良さはいつの時代も別物なのである。
最初にステアリングを握ったのはカイエンGTSだった。都内から中央道に乗ると雨交じりの天気になってしまったのだが、ある意味GTSには最も適した走行条件と言えるかもしれない。視界はすこぶるいいし、遮音も効いている。おおよそペースを乱されるようなストレスが少ないのである。頭の中では「フルモデルチェンジ」のイメージがちらついて、古そうな部分を探してみるのだけれど、走らせていて気づくのはナビモニターのサイズと使い勝手ぐらい。私がエンジニアでカイエンの新型を開発しろと言われたら、これはけっこう困るのではないだろうか。
「すべてを陳腐化させる万能感」
カイエン単体では気にならない部分が、マカンに乗ると見えてくる。カイエンGTSの次なる1台として、SAでマカンターボ・パフォーマンスに乗り換えると、今まで掛けていたメガネが実は曇っていたことに気づいたときのように驚かされる。史上最速のマカンはカイエンGTSだけでなく、今、中央自動車道を走っているすべてのクルマが陳腐化するくらいに万能な乗り物だった。ほぼほぼ直進していてもステアリングの精度が恐ろしく高く感じられるのは、アシのセッティングによる上屋の追従具合が見事だからだろう。特に上屋の重さ云々を言ってもしょうがないカイエンと比べるとキレッキレの部類に入る。パドルで操るシフトにも心地よいリズムがあり、ウエット路面でも440psを全開放できるだけのスタビリティがある。
よく使われる例えなのかもしれないが、カイエンとマカンの関係性は911とボクスター/ケイマンのそれに似ているような気がする。ブランドの格の高さを示すようなフラッグシップモデルと、器用に小回りを利かせたモデルの双方を用意する。
ポルシェ911が採用するリヤエンジンレイアウトは、今年ついにGTレース用のRSRがミッドシップ化されたことにより、ポルシェ自身もそれが究極のレイアウトではないことを認めたかたちになる。カイエンにしても、デビュー当初のポルシェが「これはクロスオーバーSUVではなくスポーツカーの新たなカテゴリーだ」と吹聴していたことを論うのであれば、上屋の重さはデメリットとして計上される。それでもなお物理的にも精神的な面においても、911にはリヤシートが欠かせないし、カイエンにはポルシェ最大の荷室が必要なのである。
「マカンターボがどれほど功績を挙げようとカイエンの牙城は揺るがない」
つまりマカンターボ パフォーマンスがニュルブルクリンクでどんな功績を挙げようとも、兄貴分であるカイエンの牙城は少しも揺るがないのである。最速マカンのベース価格は1160万円で、今回の個体のオプションは実に350万ほどにもなる。けれど全く、価格相応の走りとクオリティなのだから文句のつけようがない。予算はたっぷりあるが、駐車場は1台分しかない、となれば正解はひとつしかないだろう。
そう、最速マカンと違ってカイエンGTSは万能選手とは言い難い。週末に1000km走るのは問題ないが、平日に近所を走る際に気が重い。ボディサイズは運転技術で埋め合わせできるが、他人の目を気にした場合には威圧感が先行してしまい、インテリジェンスが不足しがちだ。
「マカンは軽量4発のおかげで圧倒的シャシーファスターとして成立している」
だからカイエンS Eハイブリッドの蛍光イエローの後光が差したエンブレムの威力は馬鹿にできない。これが付いているだけで、クルマもドライバーも実に頭が良さそうに見えるのだ。個人的にカイエンS Eハイブリッドが好きな理由も、他のポルシェにないインテリジェンスにある。実際にEVモードでヒタヒタと走っていると、その他大勢の下駄のようなハイブリッド車とはシャシーのクオリティが段違いであることを思い知らされる。この骨太感というかオーバークオリティな雰囲気を実感してしまうと、二代目カイエンのモデルライフはもうじき終了することになるが、しかしクルマとしての寿命は恐ろしいほど先が長いと確信できるのである。
ポルシェのエンブレムを掲げながら偉そうに見えないという表現は素のマカンにも当てはまる。特にPASM(ポルシェ・アダプティブサスペンション・マネージメント)のオプションが付いた今回の個体はいい。4気筒ターボの加速を「ポルシェらしからぬ」と感じる人もいるだろうが、軽量4発のおかげで圧倒的シャシーファスターとして成立している。
「史上最速のマカンとそのベース車。それぞれ走りの魅力に溢れるのは同じだ」
ポルシェというブランドの威厳にすがりたい人ならば、グレードや動力性能に関しても徹底的に拘る必要があると思う。けれどポルシェを質の高いドイツ車であると捉える人ならば、グレードとか新型旧型にあまり神経質になる必要はない。むしろカイエンに関しては「熟成した」という表現がぴったりとあてはまる。
もちろん新型カイエンの仕上がり具合は大いに気になるところだが「オレはクルマのことが良くわかっている」と内心思っているのであれば、まずはモデル末期のカイエンをじっくりとチェックしてみる必要があるだろう。
REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/菊池貴之(Takayuki KIKUCHI)
【SPECIFICATIONS】
ポルシェ マカン
ボディサイズ:全長4680 全幅1925 全高1625mm
ホイールベース:2805mm
車両重量:1830kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1984cc
ボア×ストローク:82.5×92.8mm
圧縮比:9.6
最高出力:185kW(252ps)/5000-6800rpm
最大トルク:370Nm(37.7kgm)/1600-4500rpm
電気モーター出力:-
電気モータートルク:-
システム出力:-
システムトルク:-
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール(リム幅):前235/60R18(8J) 後255/55R18(9J)
燃料消費率(JC08モード):10.3km/L
車両本体価格:699万円
ポルシェ マカンターボ パフォーマンス
ボディサイズ:全長4700 全幅1925 全高1610mm
ホイールベース:2805mm
車両重量:2000kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCターボ
総排気量:3604cc
ボア×ストローク:96.0×83.0mm
圧縮比:10.5
最高出力:324kW(440ps)/6000rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/1500-4500rpm
電気モーター出力:-
電気モータートルク:-
システム出力:-
システムトルク:-
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール(リム幅):前265/45R20(9J) 後295/45R20(10J)
燃料消費率(JC08モード):10.2km/L
車両本体価格:1194万円
ポルシェ カイエンGTS
ボディサイズ:全長4855 全幅1955 全高1690mm
ホイールベース:2895mm
車両重量:2170kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCターボ
総排気量:3604cc
ボア×ストローク:96.0×83.0mm
圧縮比:10.5
最高出力:324kW(440ps)/6000rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/1600-5000rpm
電気モーター出力:-
電気モータートルク:-
システム出力:-
システムトルク:-
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール(リム幅):前後275/45R20(9.5J)
燃料消費率(JC08モード):9.9km/L
車両本体価格:1424万円
ポルシェ カイエンS Eハイブリッド プラチナエディション
ボディサイズ:全長4855 全幅1940 全高1710mm
ホイールベース:2895mm
車両重量:2380kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHC+スーパーチャージャー
総排気量:2994cc
ボア×ストローク:84.5×89.0mm
圧縮比:10.5
最高出力:245kW(333ps)/5500-6500rpm
最大トルク:440Nm(44.9kgm)/3000-5250rpm
電気モーター出力:70kW(95ps)/2200-2600rpm
電気モータートルク:310Nm(31.6kgm)/0-1700rpm
システム出力:306kW(416ps)/5500rpm
システムトルク:590Nm(60.2kgm)/1250-4000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール(リム幅):前後255/55R18(8J)
燃料消費率(JC08モード):11.9km/L
車両本体価格:1257万円
※GENROQ 2017年 11月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。
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