「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、スズキ スイフト(3代目)だ。
スズキ スイフト(2010年:3代目)
新型スイフトの評判がいい。先代をブラッシュアップしたスタイリングに装備は充実された。では、気になる走りはどうか? さっそく乗り出してみよう。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
走りだして、まず最初に感じたのは静粛性の良さだ。ドアを閉じたときからヨーロッパ車にも似た密閉感があり、ボディもしっかりした感じだったが、そのフォルムがあまりに先代と変わらないので、先代に乗っているように感じたからかもしれない。だが実はドアまわりを二重シールにするなど、静粛性にはかなり気配りをしている。その成果は明らかで、速度を上げてもこのクラスの平均レベルを大きく上回っている。
さらに、サスペンション フィールの変化に驚いた。とにかくサスペンションが柔らかくなり、スムーズに動く。だから乗り心地も良く、凸凹を乗り越えてもすぐにボディがフラットに戻る。つまり、収束が速い。また、身体を突き上げるような刺激が先代と比べると激減している。このクラスの平均値と比べても、明らかにNVH(ノイズ/バイブレーション/ハーシュ)が優れている。
じつは今回の試乗の前にクローズドサーキットで乗る機会もあったのだが、今回と同じく、そのスムーズなサスペンションの動きに感動したことと、ステアリングレスポンスがスポーティなこと、そして狙ったコーナーに思いどおりに乗せられるライントレース性の高さにも感心していた。
形式は先代と同じだが進化したサスペンション
では、そのサスペンションは先代と何が変わったのだろうか。前後サスペンションレイアウトは先代と同じフロント:ストラット/リア:トーションビーム式を踏襲しているのだが、リアセクションのしっかり感が高くなっている。どんなハードなコーナリングをさせても軽薄さを感じさせない。
トーションビームとはリア左右のサスペンションどうしを直結させる棒のことだが、これを二重構造にすることでこれまで中心に通していたスタビライザーを廃し、2kg軽量化しながら剛性をアップした。そして、サスペンションアームのボディ側ブッシュ取り付け位置の角度を変更し、ボディ側取り付け部の剛性を50%も上げている。
この安定性を増したリアに対してフロント側は可変ギアレシオステアリングで対応。据え切り時の操作感が重くなることなく、小中舵角でのクイックなステアリング操舵感を出している。15インチホイール装着車なら最小回転半径も4.8mと小さくなって扱いやすい。
世界戦略車らしく世界中の過酷な条件でテストを繰り返してきたというだけに、サーキットはもちろん、より路面の悪い箱根のワインディングロードでも非常に安定した、しかも楽しいハンドリングを実現している。
エンジンは、若干のダウンサイジングで軽量な1.2Lのみの設定。これまで吸気側だけだったVVT(可変バルブタイミング機構)を排気側にも設定。徹底的に駆動ロスを低減することで3000~4000rpmのトルクの落ち込みをカバーしている。ただし、絶対的なパワー不足は否めず、これに対しては副変速機を備えたCVTによってカバーしている。
その力感は、発進から高速域までスムーズでレスポンスも良いが、正直なところ過給器によるプラスアルファが欲しいと感じられることも確か。サスペンションが良いだけに、今後登場するであろう「スイフト スポーツ」に期待したいところだ。
■スズキ スイフト XS 主要諸元
●全長×全幅×全高:3850×1695×1510mm
●ホイールベース:2430mm
●車両重量:990kg
●エンジン種類:直4 DOHC
●排気量:1242cc
●最高出力:67kW<91ps>/6000rpm
●最大トルク:118Nm<12.0kgm>/4800rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:横置きFF
●10・15モード燃費:23.0km/L
●タイヤ:185/55R16
●当時の価格<税込み>:147万5300円
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みんなのコメント
エンジンの静粛性も高くミッションも普通のATで乗り易かった。
また、排気量もあげてATに戻してくれれば購入したいです。